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森ヲ思フ:ウィン・バロック、志鎌猛、宮崎学の写真

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ウィン・バロック
《森の道を歩く子ども》1958
Ⓒ1958/2013 Bullock Family Photography LLC.(禁無断転載)

Thoughts on the Forest: Photographs by Wynn Bullock, Takeshi Shikama and Manabu Miyazaki

主催: 清里フォトアートミュージアム
Organized by the Kiyosato Museum of Photographic Arts(K’MoPA)

会期:2013年2013年7月6日(土)~12月23日(月・祝)
休館日:毎週火曜日(ただし7月30日は開館、火曜祝日の場合は開館)、8月は無休
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)

【本展覧会について】

清里フォトアートミュージアムは、日本有数の名峰である八ヶ岳の南麓に位置しています。 山梨県と長野県の県境に近く、深い森に囲まれた清里高原。山梨県は全国でも3位の森林率を有し、豊かな森、そして水に恵まれています。そして何より、清里フォトアートミュージアム自身も、八ヶ岳の森に囲まれています。

2013年、第28回国民文化祭が山梨県の主催にて行われます。「山梨の誇るべき自然と伝統・文化行事」をテーマに掲げる国民文化祭に際して、清里フォトアートミュージアムは、「森ヲ思フ」と題した展覧会を開催し、内外の3人の写真家の作品を展示します。

日本では古来、木を神として崇め、また心の拠りどころとして暮らしてきました。この地球を人類にとってのガイア(地母神)として捉えれば、人間、植物、動物、すべての生命が織りなす関係性を考え、森羅万象の成立を尋ねることは今私たちが直面している課題のひとつでしょう。今、私たちにできることとは何か、そのひとつが森の営みについて知り、意識を及ばせることかもしれません。本展では、視点や表現の異なる3人の写真から読み取れる自然への深い思いをご覧いただくと同時に、1977年、屋久島に居を構え、森について多くの著作を残した詩人・山尾三省氏の詩と示唆に富んだ言葉を展示します。これらの写真と言葉が、あらためて“森ヲ思フ”機会となれば幸いです。

【展示構成】

第1部:ウイン・バロック<光ヲ思フ> 30点(収蔵作品)
第2部:志鎌 猛<水ヲ思フ> 34点
第3部:宮崎 学<命ヲ思フ> 32点

本展の第一部<光ヲ思フ>では、当館の収蔵作品の中からウイン・バロック(米、1902-75)作品を展示いたします。1951年の作品《森の中の子供》で写真史にその名を刻んだバロック。森の中に裸で横たわる幼女は写真家の娘ですが、すべての生き物の尊い命を象徴する作品と言えるでしょう。森の苔も、草花も、そして人間も、すべての命は<光>に
よって育まれ、そして繋がれている。命の源となる光について「この宇宙で最も深遠な真実」と記したバロックのモノクロ作品は、森の神秘と静謐なエネルギーを讃えています。モノクロームの印画紙が次々と生産中止となりつつある現在、銀の含有量が豊富なヴィンテージ・モノクロ・プリントの深い漆黒と煌めきが描き出す繊細な写真表現をご覧ください。

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ウィン・バロック《孤高の木》1956
1956/2013 Bullock Family Photography LLC
[禁無断掲載]

 

 

 

 

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ウィン・バロック《女性の手》1956
1956/2013 Bullock Family Photography LLC
[禁無断掲載]

 

 

 

ウィン・バロック Wynn Bullock
1902年、イリノイ州シカゴに生まれる。幼少期から歌の才能を発揮し、ニューヨークで舞台に立つ。1928年パリに留学。声楽、音楽、言語を学ぶ。フランスでも歌手として評価される。パリでは、絵画や視覚芸術に目覚め、写真を撮り始める。1929年大恐慌のためアメリカへ帰国。写真に集中し始め、1940年、ロサンゼルス・カウンティ美術館にて初個展。プロとして商業写真、肖像写真で生計を立てるようになる。写真のソラリゼーション技法で特許を獲得。1955年ニューヨーク近代美術館で開催された「人間家族」(Family of Man)展にてバロックの作品「そこに光あれ」(Let There be Light, 1954年)が来館者により最も好きな写真に選ばれる。1975年、82歳にて死去。

第二部<水ヲ思フ>では、山梨県北杜市在住の写真家・志鎌猛(1948)の作品を展示いたします。八ヶ岳麓の森を拓き、15年をかけて自宅を建てながら森に惹かれてゆき、国内各地の森を求道者のように大型カメラで撮影した志鎌猛。志鎌の写真に見る森は、ヴェールのような柔らかな霧に包まれ、 また春の訪れを待つ根雪が眠そうに横たわる、 私たち
にとって馴染みの深い日本の森林独特の湿気を多く含んだ森です。 生き物の気配をかすかに漂わせ、時には光の届かない闇を境界として人間を拒み、そしてみずみずしい浄化力を湛えた森の姿からは、気の遠くなるほど長い時間をかけて生み出される<水>をイメージすることができます。志鎌は、木と水のみで作られる手漉きの雁皮紙(がんぴし)に感光材を手塗りして印画紙を作り、ネガと密着焼き付けする古典技法のプラチナ・プリントで制作しており、ベルベットのように豊かな階調はプラチナ印画特有のものです。志鎌氏は、プラチナ・プリント技法を清里フォトアートミュージアムのワークショップにて学び、作品制作に取り入れ始めたのが2008年。その後、雁皮紙でのプラチナ・プリントでの制作を始め、2009年より欧米で数多く個展が開催され、すでに高い評価を得ています。日本国内にてまとまった形の展示は本展が初の機会となります。

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志鎌猛《森の襞 Silent Repspiration of Forests:石鎚山 #14》 2010(愛媛県)
Takeshi Shikama
[禁無断掲載]

 

 

 

 

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志鎌猛《森の襞 Silent Repspiration of Forests:春だけ沼 #17》 2006(岩手県)
Takeshi Shikama
[禁無断掲載]

 

 

志鎌猛(しかま たけし)
1948年、東京都に生まれる。1970年、青山学院大学中退。グラフィック・デザイナーとして仕事のかたわら、現代美術の公募展に作品を出品する。1975年、フリーランスとなり、独学で写真を学び、仕事をはじめる。1992年から山梨県北杜市明野の森に自宅を建て始め、15年をかけてほぼすべてを夫婦で完成させる。2002年から日本各地の森へ分け入り、眼に見えている風景の、その奥にある世界を写真に焼き付けたいと「森の襞 Silent Respiration of Forests」シリーズの制作に取り組む。2006年、清里フォトアートミュージアムにて「収蔵作品展:プラチナ・プリント 光の誘惑」を見たことをきっかけに、清里フォトアートミュージアムのプラチナ・プリント・ワークショップを受講。2008年から本格的にプラチナ・プリント制作を始める。2009年、ヒューストン・フォトフェスト主催のFotoFest International Discoveries IIにて世界9人の作家の一人として招聘されたほか、現在欧米各地で個展、写真フェスティバル、アーティスト・イン・レジデンスなど多岐にわたり活動中。

第三部<命ヲ思フ>では、「フクロウ」「けもの道」などの作品で知られ、日本を代表する動物写真家・宮崎学(1949)の作品を展示いたします。自らを森の報道写真家と呼
ぶ宮崎は「森には、動物の数だけ死が存在する」と語ります。死は何を生み出すのか、動物の目線に立って森や人間社会を見ることとは、動物の死に始まる命の循環とはどういうものなのか。
野生動物の行動を捉えるため、独自に開発した無人のロボットカメラを駆使して撮影を行います。誰も見たことのない生態を捉えることに成功し、つぎつぎと生態の謎に答えを発見している“宮崎ワールド”。未発表の新作を交え、私たちの暮らしとそれほど遠くない場所での出来事、現代の森に生きる<命>をライブ感豊かに見つめていきます。宮崎氏の山梨県内での作品展示は本展が初めてとなります。

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宮崎学《カメラにいたずらするツキノワグマ》2006年11月7日
Manabu Miyazaki
[禁無断掲載]

 

 

 

 

 

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宮崎学《キツネ》2012年11月4日

Manabu Miyazaki
[禁無断掲載]

 

 

宮崎学(みやざき まなぶ)
1949年、長野県に生まれる。精密機械会社勤務を経て、1974年、独学で写真家として独立。『けもの道』(1979年)『鷲と鷹』(1981年)で動物写真に新風を巻き起こす。
1995年「自然と人間」をテーマに社会的視点に立った『アニマル黙示録』を発表。 近年は、動物の目で環境を見る『アニマルアイズ』シリーズを発表。「コンクリート壁のスズメ団地」や「野生動物の首をしめるゴミ」などイマドキの野生動物の生態を詳しく取材・分析する。自身のウェブサイト「森の365日」(http://www owlet net)では「現代のツキノワグマ調査日記 ツキノワグマ事件簿」や「森の動物日記」を掲載するほか、「森のライブカメラ」による24時間配信などを行い、「自然界の報道写真家」として日本全国で精力的に活躍している。

2012年度ヤング・ポートフォリオ(Young Portfolio Acquisitions 2012)

ヤング・ポートフォリオが一般のコンテストと異なる特徴は、35歳になるまで何度でも応募することができ、何年にもわたって収蔵することが可能だということです。35歳までという限定した時間の中においては、完成度の高さよりも、むしろ表現意欲の高さ、将来の力強い展開を予感させる創造性豊かな作品であることを重視します。私たちは、既存の枠にはまらないオリジナリティを求めて、完成への途上で闘っている青年の作品こそが、時代を切り拓く力を秘めていると考えます。美術館が購入することによって、若い作家に勇気を与えたい。今後も写真をめぐるさまざまな変化に柔軟に対応し、作品の収集、展覧会、データベース化、出版活動などを通して若い作家をバックアップし、広く社会に紹介したいと思います。1995年の第1回から2012年度(第18回)募集まで、世界73カ国から10万枚を超える応募があり、収蔵した作品の総枚数は686人の写真家による5031枚(41カ国)となりました。2012年度は、37名による199枚を収蔵。本展にてすべて展示いたします。さまざまな土地、視点、問題意識、表現方法 . 個々の写真家のみずみずしい感性が溢れています。加えて、選考委員3名の“ヤング・ポートフォリオ”時代の作品15点、そしてヤング・ポートフォリオを“卒業”し、世界を舞台に活躍する北野 謙氏が北京にて制作した《our face》の大型プリント(収蔵作品)を1点展示いたします。

ヤング・ポートフォリオは、世界の若いクリエーターからチャレンジを受ける場でありたい、そして若木が伸びゆくために強い根を育む場となりたいと願っています。


開催期間 2013年3月23日(土)~6月23日(日)
開催時間 10:00-18:00(入館は17:30まで)
休館日 毎週火曜日(祝日の場合は開館)、3月22日(金)までは展示入れ替えのため休館
2012年度の見どころ

●東日本大震災
日本人写真家の林典子、今村拓馬、幸田大地、髙木忠智の4人が、東日本大震災の被災地を撮影しています。(作品左上から)

  • 昨年に引き続き作品収蔵した林典子は、震災の直後から半年後まで津波の被災地や福島原発から20キロ圏内の1年間を見つめた作品など全11枚を展示します。
  • 今村拓馬は、長年子どもたちを取材し《Kids -existence-》と題したシリーズを発表して来ましたが、昨年は震災の被害にあった陸前高田の子どもたちを訪ね、撮影した作品を、子どもたちの言葉とともに展示します。
  • 幸田大地は《忘却》と題した作品2枚。その一枚は福島原発の20キロ圏内で撮影され、電気の消えた信号下の横断歩道に大きな牛が立ち、その土地へ入ろうとする人間を見つめているという作品です。
  • 昨年も被災地をパノラマで捉えた作品を展示した髙木忠智は、2011年撮影した地点を2012年に再度撮影するという視点で、今年も迫力あるパノラマサイズの作品を展示します。
林 典子《東日本大震災─混沌と静寂》より、2011
今村拓馬《陸前高田より・荒木優希(10)将来は野球選手か居酒屋をやりたい。》2012
幸田大地《忘却》2011.4.10
髙木忠智《尊厳の証明 ~福島~2011年4月22日警戒区域の設定前と2012年4月16日警戒区域解除後、ようやく家の手入れを始められるようになった。》2011

●G.M.Bアカシュ
2002年から2011年まで毎年収蔵を重ねてきたバングラデシュのG.M.B.アカシュ(1977)が今年で35歳となるため、ヤング・ポートフォリオを“卒業”となります。2012年度は8枚を展示します。過去11年間で収蔵した作品は154枚となりました。これはヤング・ポートフォリオ史上最高記録です。初めて購入となった2002年、アカシュは弱冠24歳。収蔵したのはモノクロ2枚でした。それが、3枚、18枚と増え、多い年には30枚を超す作品を収蔵したため、合計が154枚となったのです。海外での受賞も多数、バングラデシュの若手を牽引し、国を代表する写真家の一人に成長しました。
バングラデシュからは今年も多数の応募がありました。2012年度収蔵はK.M.アサド(29歳、4回目の収蔵)、S.M.カコン(34歳、3回目の収蔵)、イスマイル・フェルドゥス(23歳、2回目の収蔵)の3名です。

G.M.B.アカシュ BORN TO WORK, 2011
イスマイル・フェルドゥス Environmental Change, 2012

●若い作家たち
2012年度初収蔵となった作家のうち、最も年齢の若いのは前田しおん(日本、1989年)23歳、大河原 光(日本、1988年)24歳、ピョートル・ズビエルスキ(ポーランド、1987年)25歳の3人です。
(写真左から)ファッションに子どもの頃から興味を抱いてきた前田しおんが、同世代の女性をモデルに、命を持った人形のようにとらえた《DRESS – up DOLL》、俯瞰すれば都会に墓地がいかに多く存在しているかが見えてくる大河原光の《Monuments》、そして眠っていた記憶が蘇った瞬間を封じ込めたようなスビエルスキのモノクロシリーズ《無題:白い象 パス・バイ・ミーのシリーズより》を展示します。

前田しおん《DRESS-up DOLL》2011
大河原光《Monuments》2008
ピョートル・ズビエルスキ “Untitled” from the series “White Elephants – Pass by me” 2010
2012年度ヤング・ポートフォリオ(第18回)データ
選考委員 川田喜久治、鬼海弘雄、細江英公(館長)
作品募集期間 2012年4月1日~5月15日
応募者総数 222名(世界22カ国より)
応募総点数 4806枚
購入者数 37名(国内23名・海外14名)
購入枚数 199枚
展覧会 2013年3月23日(土)~6月23日(日)
※1995年度から2010年度までに作品を収蔵した作家の総数:686名、総作品枚数:5031枚
2012年度ヤング・ポートフォリオ(第18回) 作品購入作家名一覧
2012年度購入作家名一覧
G.M.B.アカシュ(バングラデシュ、1977) K.M.アサド(バングラデシュ、1983) ジャコモ・ブルネッリ(イタリア、1977)
フィリペ・カザカ(ポルトガル、1983) 百々 武(日本、1977) 榎本一穗(日本、1977)
イスマイル・フェルドゥス(バングラデシュ、1989) 林 典子(日本、1983) エイミー・ハーマン(アメリカ、1986)
DAN HONDA(日本、1977) 今村拓馬(日本、1980) 石倉徳弘(日本、1984)
泉 大悟(日本、1978) S.M.カコン(バングラデシュ、1978) 川本健司(日本、1977)
アレックス・キジルヴィッチ(カナダ、1983) 古林洋平(日本、1979) 幸田大地(日本、1983)
ロドリゴ・マアワド(メキシコ、1982) 前田しおん(日本、1989) 松本真理(日本、1979)
村山謙二(日本、1982) アブヒジット・ナンディ(インド、1977) 大河原 光(日本、1988)
プラシャンタ・クマール・サハ(バングラデシュ、1983) アダム・パンチュク(ポーランド、1978) 髙木忠智(日本、1977)
高橋尚子(日本、1984) 高梨遼平(日本、1984) 武田充弘(日本、1977)
谷田梗歌(日本、1977) 千村明路(日本、1980) 冨田寿一郎(日本、1980)
内倉真一郎(日本、1981) ヤン・ヴァラ(チェコ、1983) 吉原かおり(日本、1980)
ピョートル・ズビエルスキ(ポーランド、1987)
※全37名のうち、18名は過去にも作品を収蔵しています。
会期中のイベント
「2012年度ヤング・ポートフォリオ」公開レセプション&ギャラリートーク
開催日 2013年5月18日(土) 午後2時~4時
出 演 川田喜久治、鬼海弘雄、細江英公(館長)
料金・定員 入館料のみ(友の会・会員は無料)、定員なし
会 場 清里フォトアートミュージアム
予 約 TEL:0551-48-5599 FAX:0551-48-5445 ご予約はこちらから

2012年度収蔵作家のギャラリートーク、3人の選考委員による講評を行います。どなたでもご参加いただけます。


2011年度ヤング・ポートフォリオ・公開レセプション、左より2011年度選考委員都築響一氏、鬼海弘雄氏
作品募集

2013年度ヤング・ポートフォリオ

選考委員 川田喜久治、瀬戸正人、細江英公(館長)
応募要項の概要
  • 応募資格は35歳までを上限とします
  • 35歳までは何度でも応募が可能です
  • 作品の表現、技法は問いません
  • 選考された作品は、1枚につき3万円から10万円で購入します
  • 応募は、当館のヤング・ポートフォリオ専用ページからのWeb登録が必要です
Web登録受付期間
応募作品受付期間
2013年4月15日~5月15日
応募要項 詳細はこちらから
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