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TAIPEI ART PHOTO SHOW(台湾芸術撮影博覧会 TAPS)2014 に参加して ②

その2  YP作家 楊哲一氏と彼の活動


 

事務長:小川直美

今回の大きな収穫は、会場でYP作家、楊哲一氏(2013年度YP購入)、何沐恬氏(2014年度)、マレーシア国籍の張國耀氏(2014年度)と遭えたことです。そのうちの一人、楊哲一氏をご紹介しましょう。

2013年YPのなかでも選考委員の川田喜久治氏が「個人的に購入したい」と、絶賛されていた楊氏の作品は、すでに上海のギャラリーと契約するなど高い評価を得つつあります。YPで購入した「山水」は、採掘のためばっさりと水平に切り取られた山が被写体のスケールの大きな作品。どのような視点から撮影したのか?を訊ねると、楊氏は修士課程で土木を学んだ経歴をもち、現在も台北に建設中の巨大ドームの記録撮影を任されているとのこと。しかし自分が学んだことがもたらす成果が、結果的に環境を破壊することに矛盾を感じつつ撮影をしたとのことでした。

今回、楊哲一氏がTAPSに出品していた「辺境童話」は、作品ではなく自身のライフワークであるプロジェクトの紹介でした。辺境の貧しい村のこどもたちのために中古カメラの寄付を呼びかけ、子どもたちに写真を教えて作品を発表する、というものです。なぜ子どもたちと接点をもつようになったのでしょうか。5歳からバドミントンの英才教育を受けていた楊氏でしたが、複雑な家庭の事情や住み慣れた土地からの移住を強いられるなど、子ども時代に得た心の傷があり、次第に子どもの教育に関心を寄せるようになったそうです。現在は、作品の販売と撮影による写真関係の収入のほか、バドミントンの指導と用具の販売で得た収益を子どもたちの写真教育に振り向けています。ダイナミックな作品と心ある活動の両面に注目し、K・MoPAも日本から楊氏の活動にエールを送りたいと思います。活動のサイトは www.childrencameras.com

写真はTAPSの会場、楊哲一氏のブース前 撮影:山崎信氏 左から 楊哲一氏、何沐恬氏、張蒼松氏、小川、台北エプソンのご担当者

写真はTAPSの会場、楊哲一氏のブース前 撮影:山崎信氏
左から 楊哲一氏、何沐恬氏、張蒼松氏、小川、台北エプソンのご担当者

子どもたちのために募ったカメラと楊哲一氏と  記念撮影:張蒼松氏

子どもたちのために募ったカメラと楊哲一氏と  記念撮影:張蒼松氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楊氏の作品は、K・MoPAのHP www.kmopa.com➡ヤング・ポートフォリオ➡データベース➡国籍で探す➡アジア➡台湾 にてご覧いただけます。2013年度まで同様に閲覧可能!

TAIPEI ART PHOTO SHOW(台湾芸術撮影博覧会 TAPS)2014 に参加して ①

その1  YP活動をレクチャー&台湾の作家4名を紹介


事務長:小川直美

117日~10日、台北で開催されたTAPS (Taiwan Art ConnectionCo.ディレクター全會華氏主催)の最終日に、YP活動についてレクチャーを行ってきました。4日間の開催で1万人の来場者が訪れたというTAPS。その様子を、2回にわけてお届けします。 

TAPS会場の外観 

TAPS会場の外観

TAPS会場の外観 

TAPS会場の外観

 

 

 

 

 

 

 

 

TAPS最終日の11101200よりYPレクチャー。北京語のタイトルは清里撮影芸術美術館 培育新世代撮影家 及其「青年作品合集」。今回は207枚の画像により、YPに過去20年間74カ国から10万枚を超える応募があったこと、2013年度YPにて森山大道氏、瀬戸正人氏、細江英公が選考を行う様子、YP購入作品の紹介(台湾、日本ほか各国の作品)、選考委員が直接講評を行うレセプション8月に開催した「原点を、永遠に。」展、そして近い将来アジアでもYP展を開催したいというK・MoPAの希望を発表しました。

こうしたチャンスをくださったのは細江英公の教え子でもある主催者の全會華氏、K・MoPAの活動を台北側に熱心に紹介、北京語に通訳くださったのは写真家の張蒼松氏など、若いころに日本で写真を勉強された方々の後押しによるものです。素晴らしい文化交流の機会をいただき誠にありがとうございました。台湾の文化部(日本の文化省にあたる)の調査で張氏がK・MoPAに視察にみえた折から様々な形で台湾とのご縁をつなぎサポートくださっている山崎信氏にも心から感謝申し上げます。

YP作品を紹介中、日本人作家によるドキュメンタリーのうち、林典子氏によるキルギスの誘拐結婚、髙木忠智氏による東日本大震災の記録に涙ぐむ若い観客の 姿も。写真を見る真剣な姿勢と熱気が、直に伝わってきました。そして、台湾国籍の4名のYP作家、江 月娥 CHIANG Yueh-er (1969)、陳 伯義 CHEN Po-I (1972)、楊哲一 YANG Che-Yi (1981)、何沐恬 Mu-Tien Tammy HO (1987) の作品を紹介。とくに会場に展示中だった何沐恬氏の作品は、レクチャーの後に実際に鑑賞された方々もあったことでしょう。本レクチャーには、台湾写真界の長老、台湾撮影博物館文化学会理事長の荘 霊 Chuang Ling氏をはじめ、約70名にご出席いただき、レクチャー後の茶会に招待いただきました。台北滞在中、通訳を担当くださった写真家の張蒼松氏もYPに深 く共感され、すでに若手写真家たちに、大いにYPを広報くださっています。こうした交流の機会が、台湾の若者からの積極的な応募、日本をはじめ、各国のYP作家の紹介につながれば、これほど嬉しいことはありません。

※ その2に続く

写真はレクチャー中の様子  撮影:山崎信氏

写真はレクチャー中の様子  撮影:山崎信氏

写真はTAPS会場  撮影:山崎信氏

写真はTAPS会場  撮影:山崎信氏

 

 

清里フォトアートミュージアム開館20周年記念展「原点を、永遠に。」を終えて④

清里フォトアートミュージアム 主任学芸員 山地 裕子


トーク・イベント③北野謙×元田敬三×秦雅則×飯沢耕太郎(進行)

8月22日(金)午後6時から、「原点を、永遠に。」展記念トーク・イベントの第3回目として、YP作家の北野謙氏、元田敬三氏、秦雅則氏をパネリストに、写真評論家・飯沢耕太郎氏の進行のもと、東京都写真美術館1階アトリエにて、トークを行った。

北野謙氏スライド《our face》より

北野謙氏スライド《our face》より

まずは3人のスライドからスタート。北野氏は19歳から27歳までの作品。人ごみに三脚を立ててレンズを向けた《溶融する都市》シリーズ、自分の前に立った他者を重ねて焼き付けた《our face》シリーズと、北京での《our face》ラージサイズ作品の制作、そしてもうひとつのシリーズ《one day》からは2013年のアメリカ滞在中に撮影した最新作のランドスケープシリーズをご紹介いただいた。いずれのシリーズも、人や世界の有り様をそれぞれのレイヤー(層)を通して見、考えるシリーズである。

元田敬三《TOKYO SLASH》1997 ⒸKeizo Motoda

元田敬三《TOKYO SLASH》1997 ⒸKeizo Motoda

一方、元田氏は、ストリートにこだわり、夜間の撮影でも、強烈にフラッシュを焚き、背景に映り込むものまですべてがシャープに捉えられるよう、絞り値22で撮影する。偶然出逢った人に声をかけ、相対し、モノクロームでのインパクト勝負にかける意気込みは、今も学生の頃と全く変わらない。変わらないどころか、カメラを持って歩くことで、ますますワクワクするという。

元田敬三氏

元田敬三氏

秦雅則氏スライドより

秦雅則氏スライドより

そして3人目、未だヤング・ポートフォリオ(以下YP)世代の秦氏の作品を見る。カメラ好きの祖父の影響と、自身が絵を描いていたことと、90年代の写真ブームの影響から写真での制作が始まったという。プリクラ世代の秦氏は、デジタルイメージングの発展とともに、何が出てくるのかわからない面白さに惹き込まれてきたという。ウェブ上の画像から架空の人物、部屋を作り、個体を変容させる、膨大な人造人間の数々。従来の写真家の発想を超える新しい世代の写真家として今後の展開が楽しみな若手である。

ここで、飯沢氏からは、この20年間の写真の動きについて語っていただいた。KMoPAが開館した1995年という年は、オウム事件や神戸の大震災が発生したことで、大きく社会状況が変化した年であり、日本の歴史においても重要な年だったと言える。同年、東京都写真美術館も本格開館し、写真表現においても、アート化、デジタル化という二つの大きな流れが顕在化し、写真家の発表の場が印刷媒体への掲載と写真集を作ることから、美術館の中に写真が入り、コレクションの対象となるという、日本の写真表現の歴史においても大きな意味を持つ年となったといえよう。

飯沢耕太郎氏

飯沢耕太郎氏

1980年代に写真も収集の対象とする公立美術館が出現し、写真専門のギャラリーが生まれ、90年代半ばから、現代美術のギャラリーでも写真の取り扱いが増えた。デジタル化とともに表現の多様性が加速したのが20年前の1995年で、実際に「原点を、永遠に。」展でも、そのめくるめく多様性を見ることができる。「20年前には、ある程度ジャンル分けが可能だった作品が、今では難しくなっている」とコメントした。

秦雅則氏

秦雅則氏

YPについて、飯沢氏は、経済的に厳しい若手作家にとって大きな支援となること、自身の作品の位置づけについて疑心暗鬼にならざるを得ない若手にとって、考える手がかりとなる評価を得られること、年齢制限以内なら何度でも購入が可能なことが世界的にユニークであり、今や世界有数のコレクションとなったと述べた。実際に、北野氏は、「(20代の頃は)自分の写真の“置き場所”がないと感じていた。(中略)最初は次世代に残るということの重要性がわかっていなかった。買ってもらったという事実の方が重要だった。その後、他の美術館に収集される機会もあり、子どもが生まれた後には、何世代も後の人が自分の写真を見ることで、何か新しい言葉が生まれるかもしれないと思うと、アートを自分のことと結びつけて考えるようになり、重みが増してきた。」と語る。

また、元田氏と秦氏が自主ギャラリーの運営に携わっていたことから、飯沢氏は、日本の自主ギャラリーの存在についても触れた。1976年にPUT、プリズム、CAMP、3つの自主ギャラリーが都内3カ所にほぼ同時に発生したが、その後40年の長期にわたり、作品のクオリティと、発表する写真家とそれを見るファンの関係が保たれている。自主ギャラリーで培われた人間関係を作るノウハウは遺伝子として受け継がれており、日本の写真表現の歴史を考える際に欠かせない、何らかの特徴をもたらすものと考えられると指摘した。

北野謙氏

北野謙氏

そして、展示されているYPの海外作品群については、全方位的にいろいろな視点で、創作することと向き合っていることが刺激的だと、全員が評価していた。特に東欧の作品について、身体を介して自分の存在を考え、表現する、実存主義的な伝統が見えると飯沢氏。

最後に、若手写真家にとって最も重要なことは、それぞれに自分がやりたいことが出来、発表の場を持つこと。「誰もやっていないことなら、自分自身がひとつのジャンルになって行くと考えることもできる」と北野氏。また、参加者からの質問に応えて、飯沢氏は「強い写真とは、確信を持って作っている写真。残る写真とは、物の見方を変えてくれる力を持つ写真。」という言葉で最後を結んだ。

館長の細江英公からは、「KMoPAは、YPを通して清里から世界に向けてメッセージを発信して行きたいと考えている。今は、本当に良い作品ができたら、瞬く間に世界中を駆け巡る時代。まずは、心の中のありったけのものを出して作品を作っていただきたいと思う。」というエールで本トークは終了した。

●パネリスト略歴

北野 謙(きたの・けん)1968年東京都に生まれる。1991年日本大学生産工学部卒業。1993年よりフリーランス。同年、初個展にて「溶游する都市」を発表。1999年より、日本人の「顔」を撮影し、複数の肖像を均等に重ねて焼きつけ、一枚の平均化された像を作る作品《our face》プロジェクトを始め、現在も継続中。世界へ舞台に広げている。2004年写真の会賞、2007年日本写真協会新人
賞、2011年第27回写真の町東川賞新人作家賞、岡本太郎現代芸術賞特別賞受賞。2013年には文化庁新進芸術家在外研修ならびに米友好基金による日米芸術家交換計画としての日本側フェローとして1年間カリフォルニアに滞在。2014年7月新作のランドスケープ「いま、ここ、彼方」を発表した。http://www.ourface.com

元田敬三(もとだ・けいぞう)1971年大阪府に生まれる。1994年、桃山学院大学経済学部卒業。在学中に写真を始める。1996年、ガーディアン・ガーデン主宰・写真「人間の街」プロジェクトに参加し、個展「ON THE STREET, OSAKA」を開催。「ON THE STREET, OSAKA」で第33回準太陽賞受賞。写真集に『青い水』『RUSH』『SNAP OSAKA』『WE GOT THE GUN』『MOTODA BLACK』などがある。2001年から06年までphotographers’ galleryの運営に携わる。最近作は、2012年パノラマカメラを使って、原宿の路上で踊るローラーを撮影した「SUNDAY HARAJUKU」。1997年より東京ビジュアルアーツ講師をつとめ、教え子にはYP作家も多い。http://motodakeizo.com

秦 雅則(はた・まさのり)1984年、福岡県に生まれる。2009年、企画ギャラリー明るい部屋を設立(2011年解散)2012年、出版レーベルA PRESSを設立し運営している。2008年「写真新世紀」グランプリ受賞。2012年写真集『鏡と心中』、2013年『写真か?』(鷹野隆大氏との対談)を出版。http://hatamasanori.com/news.html

飯沢耕太郎(いいざわ・こうたろう)写真評論家。1954年、宮城県に生まれ。1977年、日本大学芸術学部写真学科卒業。1984年、筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。主な著書に『芸術写真とその時代』など多数。近年は、きのこ文学研究家としても活躍し、『きのこ文学ワンダーランド』などの本を執筆するほか、2014年、個人所蔵の写真集のうち約4500冊を公開し、自由に閲覧することができる写真集食堂「めぐたま」を恵比寿にオープン。http://megutama.com

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