9月, 2015 Toggle

開館20周年記念展「プラチナ・プリント収蔵作品展:永遠の時、きらめく」開催中

開館20周年記念展の第3弾は、「プラチナ・プリント収蔵作品展:永遠の時、きらめく」。KMoPAは、開館時より、すべての写真技法の中で最も保存性が高く、優美な色調を持つ「プラチナ・プリント」に着目し、作品を収集して参りました。当館の「ヤング・ポートフォリオ」と「プラチナ・プリント」は、世界でもユニークなコレクションとして内外で注目されて参りました。これまでに収蔵した約600点のプラチナ・プリント作品の中から選び抜いた約130点をご覧いただきます。

会期中の11/7・8にはプラチナ・プリント・ワークショップも行います。暗室は初めてという方も大丈夫。印画紙作りから、現像までを実際にやってみると、写真を見る楽しさも必ずアップするはず。決して古くはならない古典技法を体験するチャンスです。また、会期中には、恒例の「星をみる会」も行います。

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プラチナ・プリント収蔵作品展「永遠の時、きらめく」

永遠の黒_006永遠の黒H4_0909ol入稿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

From the Platinum Print Collection: Glittering Through Eternity

会期:2015年10月10日(土)〜 11月30日(月)

休  館 日:毎週火曜日(ただし 11/3は開館)

■本展覧会について■

当館は、基本理念のひとつとして、古典技法のひとつである「プラチナ・プリント」に着目し、重点的に作品を収集してまいりました。本展はすべて、当館の収蔵作品で、プラチナ・プリントを発明したイギリスのウィリスの作品から、現代作品までの約130点を展示いたします。

現在、写真と言えば、デジタル画像をイメージする方がほとんどとなっているのではないでしょうか。 デジタルカメラが発明されたのは1975年。その進化と普及のおかげで、幅広い層が、手軽に写真を楽しめるようになりました。写真は、パソコンやスマートフォンのモニターで画像として見るもの、出力するためのデータであり、電子メディアと認識されているのが現状です。そのため、この20年の間にも、フィルムや印画紙の種類は大幅に減りました。しかし、全く生産がストップするということは無く、むしろ、フィルムの持つ味わいや、印画紙ならではの深みが、デジタル画像に慣れた世代の目に、今、新鮮な印象を与えているようです。

近年では、多くの著名な写真家が、過去に発表した代表作を、あらためてプラチナ・プリントに焼き直して発表するということが行われています。作家も、愛好家も、プラチナ・プリントの持つ階調の美しさや気品に惹かれ、この古典技法に熱気が集中しているのです。このことも、本年、当館がプラチナ・プリント収蔵作品展を開催する理由のひとつです。

本展のタイトル「永遠の時、きらめく」は、プラチナ・プリントの特徴である保存性の高さと、ルーペで表面を見たときに、実際に見える煌めきを表現しています。

プラチナ・プリントのもうひとつの特徴は、優美な色調と黒の美しさです。マットな紙の表面に、まるで墨の粉を盛りつけたような、また、吸い込まれる闇をイメージさせる漆黒があるからこそ、ハイライトの白が際立ってくるのです。

プリント表面のテクスチャーは、ベルベットのような、なめらかな質感を湛え、ルーペで表面を拡大して見ると、紙の繊維の中に定着した鉱物が光を反射して、キラキラと煌めいています。この光がプラチナ・プリントの証なのです。本展会期中、皆様にご覧いただけるよう、ルーペとプリントの見本を会場にご用意いたします。

■プラチナ・プリントの特徴■

鉄塩の感光性を利用し、プラチナやパラジウムを使用して焼き付ける写真の古典技法のひとつです。

黒の締まりに優れ、同時に白から黒までの階調の幅が豊かで、非常に微妙なグラデーション表現が可能です。

❸画像は引き伸ばし(拡大)することが不可能ですが、ネガと印画紙をピッタリ密着させて焼き付けるため、ディテールが失われず、細部の描写に優れています。 (ただし、近現代においては、拡大ネガやデジタルネガの制作も可能となっています)

すべての写真技法の中で保存性が最も優れており、画像は劣化・退色しません。

■世界最古のプラチナ・プリントを展示■

プラチナを印画に使用する試みは、ダゲレオタイプやカロタイプと呼ばれる写真術が誕生した1839年よりも早く、1831年からイギリスにおいて行われていました。そして、プラチナの印画紙が世に登場するのは、ウィリアム・ウィリス・ジュニア(英)が発明し、特許を取得した1873年です。

右の写真は、今から約140年前の1878年、ウィリアム・ウィリス・ジュニアが、英国王立写真協会にて技法を発表するために制作したプリントのうちの一枚です。《田舎の小屋》(Rustic Cottage)と題された画像の下には、「1878年12月、イギリス写真協会誌に発表する前に現像した」との記載があります。

*1878年は明治11年。  ウィリアム・ウィリス・ジュニア《田舎の小屋》1878年

プラチナ・プリントの歴史と復活、そして現在

19世紀から20世紀初頭までは、ウィリスの発明・特許を有した既成の印画紙が市販されていました。しかし、第一次大戦時にプラチナが軍需産業の重要な金属として使われ、また、物資が不足している時に、美術的興味だけで貴重なプラチナを使うのは国賊であるとまで言われ、急速にプラチナ・プリントは消えて行きました。

二つの大戦後は、銀塩の感度の高い印画紙(ゼラチン・シルバー・プリント=モノクロ印画紙)が作られ、比較的簡単に現像できる、引き伸ばしができる、安い大量生産が可能という点から、人々の関心は銀塩へ移ってしまいました。

1970年代に入り、アメリカの写真家アーヴィング・ペンが、プラチナ・プリントの美しさに魅了され、試行錯誤の結果、自身の作品をこの技法で制作しました。現代的な息吹を与えられ、プラチナ・プリントは見事に復活したのです。20世紀初頭のような市販の印画紙はありませんが、プラチナ・プリントの手法を蘇らせ、薬剤を調合・塗布して、印画紙を作ったのです。現在も、プラチナ・プリントは、手塗りの印画紙に露光・現像する方法で、写真家本人や、専門のプリンターによって制作されています。

カメラの変化とイメージの違い

現在使われているような小型カメラが生まれたのは1920年代。小型カメラとロール状の35ミリフィルムによって撮影は劇的にスピードアップし、「スナップ」を可能にしました。さらに、デジタルカメラは暗さにも強く、撮影後の処理やアウトプットのスピードアップを可能としました。

一方、本展でご覧いただくプラチナ・プリントの多くは、大型カメラで撮影したものです。大型カメラは、撮影までにどうしても時間がかかります。光の具合を見、被写体と対話するなど、じっくり向き合って初めてシャッターを押すことになります。スピードを優先する写真と時間をかけて作られる写真。プロセスの違いが、イメージに何をもたらすのかという部分にも注目して、ご覧いただければ幸いです。

デジタル画像が、写真を身近なものにした一方で、一瞬で消滅してしまう危うさや、ハードやソフトウェアの激しい進化の中において、二度と再生できなくなるリスクを持っています。しかし、プラチナ・プリントなどの古典技法は、薬剤さえ手に入れば「自分で作る」ことのできる写真であるということも、作り手にとっては魅力的な要素です。中でも、プラチナ・プリントの画像は、長い時間を経ても劣化・退色せず、永遠に残ります。それは、多くの写真技法の中でもプラチナ・プリントだけが持つ特質です。

100年前に写された時間が、そのままの姿で目の前にある ――  それは奇跡的なことと言っても過言ではありません。そのために、わたしたちは、プラチナ・プリントに焼き付けられた写真が纏う凛とした空気と、凝縮された時間の気配に、深く魅了されるのでしょう。

暖かみのある風合い、ベルベットのようになめらかな質感、優美な色調のプラチナ・プリント。この類い希な技法による豊かな写真表現の歴史と名作をどうぞじっくりお楽しみください。

主な出品作家(ABC順)

マヌエル・アルバレス・ブラボ / アルヴィン・ラングドン・コバーン / ロイス・コナー / エドワード・S.カーティス / ピーター・ヘンリー・エマーソン / フレデリック・H. エヴァンズ / ルイス・ゴンサレス・パルマ / 原 直久 / 細江英公 / 井津建郎 / ガートルード・S. ケーゼビア / ティナ・モドッティ / アーヴィング・ペン / エドワード・スタイケン / アルフレッド・スティーグリッツ / ジェリー・N.  ユルズマン / エドワード・ウエストン / クラレンス・H. ホワイト  

■プラチナ・プリント・ワークショップ■

当館では、プラチナ・プリント作品の収集だけでなく、技法の継承を目指し、毎年プラチナ・プリント・ワークショップを開催しています。手作りの印画紙に写真を焼き付け、現像する。フィルムに触れたことのない方も、写真の原点を体験することで、写真の新しい見方、あるいは表現世界の広がりを得ることができるでしょう。当ワークショップを通して、プラチナ・プリント技法を会得し、世界を舞台に活躍する作家も 出ています。

あなたもプラチナ・プリントに写真を焼き付けてみませんか? “永遠に残る 写真”をお持ち帰りいただきます。

本ワークショップでは、①当館収蔵のプラチナ・プリントを鑑賞、②館内の スタジオで、講師があなたのポートレイトを撮影、③水彩画用紙に感光乳剤を塗って印画紙を作り、④ネガを紫外線で露光し、⑤現像します。

暗室作業は初めてという方も、作品制作に取り入れたいという方も、 講師の細江賢治先生が丁寧に指導します。

水彩画用紙に薬品を塗り、プラチナ・プリント用の印画紙を作ります。

水彩画用紙に薬品を塗り、プラチナ・プリント用の印画紙を作ります。

現像液を流し入れると、画像が現れます。

現像液を流し入れると、画像が現れます。

◎日時:11月7日・8日(土・日)2日間

●講師:細江賢治(写真家)

参加費:30,000円(入館料を含む)

友の会・会員は27,000円

定員:8名 要予約

✻参加申し込みは、10月31日までに、ご住所・

お名前・参加人数をお知らせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

■会期中のイベント:K・MoPAで星をみる会■

K・MoPA恒例、星の美しい清里ならではの秋の観望会です。秋の星空について、また天文学における最新の話題などを専門家にお話いただく少人数の気軽な催しとして「いつか行ってみたい」というお声も頂戴しています。

今年の開催日、11月15日は、夕方なら三日月が、月が沈むとアンドロメダ銀河を見ることができます。雨天の場合もレクチャーが ございます。講師の梅本智文先生は東北大学卒の理学博士で、K・MoPAの講師としてお迎えするのはなんと9回目。毎回テーマを変えてお話くださいます。天文ファンも初心者も、そしてリピーターの方も大歓迎です。どうぞ ふるってご参加ください。

K・MoPA正面にて金星を見る

K・MoPA正面にて金星を見る

◎日時:11月15日(日)午後5時~7時 

●講師:梅本智文(国立天文台 野辺山宇宙電波観測所 助教)

参加費:1,000円(入館料を含む)/友の会・会員は無料

定員:15名 要予約

✻参加申し込みは、11月14日までに、ご住所・氏名・参加人数をお知らせください。

 

 

KMoPAエントランスの超大型カメラが稼働中!

正面入り口脇に鎮座している超大型カメラの全身ショットを初公開いたします。カメラは油圧式の台に乗っており、キャスターも付いているので、移動が可能。ですが、大変危険なので、通常は下半分を囲っています。

正面入り口脇に鎮座している超大型カメラの全身ショットを初公開いたします。カメラは油圧式の台に乗っており、キャスターも付いているので、移動が可能。ですが、大変危険なので、通常は下半分を囲っています。

 

正面入り口脇に超大型カメラが鎮座していることをご存知でしょうか?あまりに大きいので、これがカメラだということが一目でわからない場合もあるかと思います。

9月23日、YPOBの北野謙さんが、製作中のシリーズ《六ヶ月太陽》(仮題)のテスト撮影を行うため、初めてこのカメラが稼働!《六ヶ月太陽》とは、冬至から夏至までの地球の自転に伴う太陽光の光跡を地平線とともに長時間露光するというプロジェクトで、今後少なくとも国内10カ所以上にカメラを設置する予定です。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこのカメラとレンズはダグラス・ブッシュ氏(米)の手作りで世界に2台のみ。細江英公館長が撮影に使用し、美術館寄託となっているカメラです。(1987年製)レンズの焦点距離19インチ、最小絞りf256、フィルムサイズは20×24インチというもの。ピントを合わせるのも、ホルダーにフィルムを装填するのも二人がかりです。ガラスの映り込みを避けるため、全身を暗幕で覆った姿はなんと「カメラの妖怪」。今回のテスト撮影は3日間で、土曜日に館内の暗室で現像です。さてどうなりますか・・・

開催中の「未来への遺産」をご覧になった北野さん。「キャパもケルテスもシーモアも若いときから何度も見た気でいたけれど、歳とってみるとすごくいい。彼らが撮った年齢が今の自分と同じ。そのすごさを若いときの20倍感じます。」と、印象を語ってくださいました。本展はいよいよあと5日!「妖怪」もみなさまのお越しをお待ちしています。

DSCF5066★ のコピー

カメラを真東に向けるため、外へ目印をセットする北野さん。

カメラを真東に向けるため、外へ目印をセットする北野さん。

巨大なレンズにフィルターを挟みます。

巨大なレンズにフィルターを挟みます。

20×24インチのフィルムホルダーを持つ北野さん。

20×24インチのフィルムホルダーを持つ北野さん。

当館の暗室内でフィルムの装填をシュミレーションする北野さん。暗黒の中で手探りの状態のため、真剣に手順を確認。結局一人では無理だとわかり、二人での作業となりました。

当館の暗室内でフィルムの装填をシュミレーションする北野さん。暗黒の中で手探りの状態のため、真剣に手順を確認。結局一人では無理だとわかり、二人での作業となりました。

フィルムをカメラにセットし、引き札をそうっと抜いて、露光開始!

フィルムをカメラにセットし、引き札をそうっと抜いて、露光開始!

カメラの全身を黒い布でくるんだ姿はまるで「カメラ妖怪」。(写真右から北野さん、KMoPA山地、KMoPA田村)

カメラの全身を黒い布でくるんだ姿はまるで「カメラ妖怪」。(写真右から北野さん、KMoPA山地、KMoPA田村)

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