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グレイト・スピリット/カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の写真
Great Spirit: Photographs of Curtis, Sardar-Afkhami and Yagi


グレイト・スピリット/カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の写真

会 期 :2011年7月6日(水)〜2011年10月10日(月)まで
休館日 : 毎週火曜日(祝日の場合は開館)、 ただし7,8月は無休
6月27日(月)〜7月5日(火)は展示入れ替えのため休館


主催: 清里フォトアートミュージアム
     Kiyosato Museum of Photographic Arts(K'MoPA)
協力: Christophe Lunn, Paris / 東京工芸大学 / 日本大学芸術学部

[開催趣旨]


かつて、ネイティヴ・アメリカンとともに暮らし
20年にもわたって記録し続けた写真家がいた。
そしていま、同じようにアラスカやモンゴルで
自然とともに生きる人々を記録し続ける写真家がいる。
寡黙でありながらも力強いポートレイトが
静かに問いかける。
あなたは、どう生きるのか-----


ハミド・サルダール=アフカミ
《ワシと馬を調教するカザフ人 デルーン地、バヤンウルギー県》
(モンゴル)2008年
Hamid Sardar-Afkhami
Training Kazak Eagle-Horse, Deloun, Bayin Olgii, 2008
© Hamid Sardar-Afkhami
[禁無断掲載]

「グレイト・スピリット」とは、アメリカ先住民の言葉ではワカン・タンカと呼ばれ、大いなる不思議を表します。祈りの対象としてのシンボルは存在せず、あらゆるものの中にワカン・タンカのスピリットがあると信じられているのです。アメリカ先住民は、先史時代にシベリアからアラスカを経由してアメリカ大陸に広まった民族で、日本人と近いモンゴル系民族であったことはよく知られています。


ハミド・サルダール=アフカミ
《ツヤンクァ、ツァッタン族のシャーマン ボルハイッガ地、フブスグル県》(モンゴル)2001年
Hamid Sardar-Afkhami
Tsuyanqua, Tsaatan shaman, Bor Haig, Hovsgol, 2001
© Hamid Sardar-Afkhami
[禁無断掲載]

本展では、3人の写真家、エドワード・S・カーティス(米、1868-1952)、八木清(日本、1968-)、そしてハミド・サルダール=アフカミ(イラン・米、1966-)が、それぞれアメリカ、アラスカの先住民、そしてモンゴルの人々を捉えた作品をご紹介いたします。


エドワード・S・カーティス
《バッド・ランズのオアシス》1905年
Edward S. Curtis
An Oasis in the Band Lands, 1905
[禁無断掲載]


19世紀の末、民族消滅の危機を感じたカーティスは、白人でありながら先住民と共に生活し、30年にわたって80以上の部族を調査し、膨大な記録を残しました。
カーティスの写真は、“カメラが生んだ幻想”という批判にもさらされましたが、今なお息づくアメリカ先住民の伝統と価値、生き物との調和や命の神秘を深く示唆する彼らの言葉とともに、その映像が煌めきを失うことはありません。
カーティスの作品は、一部を除き、約100年前に制作されたプラチナ・プリントやフォトグラビア、オロトーンによるものです。


エドワード・S・カーティス
《ズニ族の酋長》1905年頃
Edward S. Curtis
A Zuni Governor, c.1905
[禁無断掲載]


一方、二人の若い写真家は、アラスカ、カナダ、グリーンランド、そしてモンゴルに長期滞在し、撮影を重ねています。
八木は、極北の厳しい自然を生きるエスキモーの暮らしに密着し、そして、サルダール=アフカミは、モンゴルにおいて、今も変わらず野生動物とともに生きる遊牧民の姿を、それぞれに深い愛情と敬意を込めてプラチナ・プリントに焼き付けています。
サルダール=アフカミの作品は、日本国内では初めての発表となります。



八木清
《ユピック・エスキモーの老婆》1996年
Kiyoshi Yagi
Yupik elder in traditional parka, 1996
© YAGI Kiyoshi
[禁無断掲載]


雄大な自然の中で培われたワカン・タンカへの信仰は、すべてを人智を超えた不思議の源として捉えていました。
カーティスが撮影した100年前の先住民の肖像は何を語るのか。
何かに立ち向かうというよりも、必然を謙虚に受け入れる人々に、私たちは今、真の勇敢さを感じるのかもしれません。
現代においても「自然、動物、祖先の記憶とつながって生きる」人々の生活を見つめる3人の写真家の作品117点を展示いたします。


八木清
《ユピック・エスキモーの面》2002年
Kiyoshi Yagi
Yupik bird Mask, 2002
© Kiyoshi Yagi
[禁無断掲載]

[作家紹介]

エドワード・S・カーティス(アメリカ、1868-1952)Edward S. Curtis

ウイスコンシン州の田舎に生まれ、鉄道工事の保線員として働きながら写真を独学で学ぶ。
やがて将来消滅の危機を感じていたネイティヴ・アメリカンを主題としたポートレートと風景写真を本格的に撮り始める。撮影にあたっては、部族に関する調査を行い、部族と同じように生活し、彼らに心を開いてもらうよう努力を惜しまなかった。大富豪のJ・Pモルガン氏やセオドア・ルーズベルト大統領の援助を得て、80以上の部族を調査・撮影。1907年から1930年の間に、約1500点の写真(フォトグラビア)と解説による全20巻の『北米インディアン(The North American Indian)』を発行する。30年にわたる調査では映画フィルムも使用、音声を録音し、撮影したフィルムは4万枚を超える。

ハミド・サルダール=アフカミ(イラン・米、1966-)Hamid Sardar-Afkhami

1966年にイランに生まれ、パリで育つ。
ハーバード大学で人類学、チベット、モンゴル語を学び、博士号を取得。卒業後は映画の撮影を手掛け、高い評価を受けている。1980年代後半ネパールへ移住し、チベット、ヒマラヤに10年以上滞在した。2000年からは、1年の半年間をモンゴル、半年間をタイ、フランスにて過ごしている。撮影は中判カメラで行い、プラチナ・プリントはベルギーの専門スタジオSalto Labsにて制作された。日本国内では、本展が初めての発表となる。

八木清(日本、1968-)YAGI Kiyoshi

1968年長野県生まれ。
1993年アメリカ、アラスカ州立大学フェアバンクス校ジャーナリズム学部卒業後、写真家・水越武氏に師事。1994年から極北の先住民族エスキモーとアリュート、そして彼らを取り巻く自然を、8×10インチの大型カメラを使用して撮影を始めた。作品は、印画紙を一枚ごとに手塗りで作るプラチナ・プリントにて制作している。
2004年日本写真協会新人賞受賞。2005年準田淵行男賞受賞。個展「極北の家族〜エスキモーとアリュートの肖像〜」を2005年にアイデムフォトギャラリー[srius](東京)にて開催。2006年、2007年、フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)にて個展を開催し、2011年も7月1日から8月27日まで個展「sila」を開催。

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