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井津建郎「アジアの聖地:
       石造遺跡─光と影」
Kenro Izu "Light over Sacred Places of Asia"

井津建郎「アジアの聖地:石造遺跡─光と影」

会 期:2001年7月20日(金)〜2002年1月13日(日)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は開館)
7月20日〜9月3日までは無休
【開催主旨】

「石」の持つ魅力、 また信仰の対象となった石造遺跡に惹かれ、ピラミッドやストー ン・ヘンジ、アンコール遺跡など世界の石造遺跡を、大型カメラを用いて、20年にわ たり撮影している井津建郎。

ヴィジャナガル遺跡#15、
ハンピ、インド 1996年
Vijayanagar #15,
Hampi,India 1996
[禁無断転載]

優美な色調と静謐 な美しさを持つ古典技法のひとつ、プ ラチナ・プリントの制作は世界でも第一人者と言われています。

アンコール#26、
タ・プローム、
カンボジア 1993年
Angkor #26,
Ta Prohm,
Cambodia 1993
[禁無断転載]

澄み切った水面 に自分自身を映すような、可能な限り透明なイメージを求めて、ひたすら遺跡と対峙する ─ 。 「写真を撮るか撮らないかは別問題で、精神的に自分が欲するものがありそうな場所へ行き、自分の心の中に何か響くものを感じた時に、シャッ ターを押す。とんでもなく不便な地に大昔から信仰の対象となった遺跡がある。 人の祈りや願いがこめられて、それが吸収されて、ただの石だった"a stone" が "the stone" になっていく。」(井津建郎)

パク・ウー石窟院#2、
ルアンプラバーン、
ラオス 1997年
Pak Ou Cave #2,
Luang Prabang,
Laos 1997
[禁無断転載]

井津の石造遺跡作品 には、人間が“生きていること”自身を問いかけていくような厳 しさ、あるいはやすらぎを得た精神の穏やかさに満ち、その眼差しは、過酷な自然と 時の流れに抱かれる石造遺跡とその風景に、凝縮された「光」を求め続けているかの ようです。井津にとっての撮影行為は、果てしない旅の始まりにすぎないのかもしれません。


スコータイ遺跡#28、
タイ 1998年
Skohthai #28, 
Thailand 1998
[禁無断転載]

14×20インチサイズ (約36×51cm)の大判のネガにこだわり、プラチナ印画紙を一枚 一枚手塗りで制作する理由は、井津の作品と向き合った時にあきらかに見えてくるでしょう。

ムスタン#31、
チョルテン群、ネパール 1998年
Mustang #31,
Nepal 1998
[禁無断転載]

本展では、 1996年に当館にて開催の「アンコール遺跡 光と影」展よりカンボジアの 作品3点を再出品する他、1993年から2000年の間、インド、ミャンマー、タイ、カン ボジア、ラオス、インドネシア、チベット、ネパール、中国など、感性に導かれるま まに巡り歩き、撮影した未公開作品を含む全75点を展示いたします。

ムスタン#9、
ツァランからタンギへ、
ネパール 1998年
Clarence John LAUGHLIN,A Vision of Dead
Mustang #9,
Nepal 1998
[禁無断転載]

図録、ポストカードはオンラインショップにて販売中

井津建郎(いず けんろう)

1949年大阪生まれ。1971年渡米。石造遺跡だけでなくヌードや花のスティル・ライフ 作品でも知られる。作品は、メトロポリタン美術館、サンフランシスコ近代美術館を はじめ海外の多くの美術館にコレクションされる。2000年、日本写真協会文化振興賞を受賞。ニューヨーク在住。

井津建郎について

プラチナ・プリントとは

 プラチナ・プリントとは、 写真を焼き付ける技法のひとつです。通常のモノクロ・プリントは銀が光に感光する性質を利用したもので、ゼラチン・シルバー・プリントと呼ばれますが、プラチナ・プリントは文字どおり白金を用いた焼き付けの技法です。画像は黒のしまりが良く、階調の幅が広く、グレーの調子がほとんど無限に表現できます。また白金の科学的安定度が極めて高いため、現在写真印画の中でこれ以上耐久性に優れた技法はないとされています。
 写真が 正式に誕生したのは1839年ですが、プラチナを印画紙に使用する試みはシルバー・プリントより早く、1831年から行われていました。清里フォトアートミュージアムでは、プラチナ・プリント作品の収集と技法の継承を基本理念のひとつとして、多くの作品を収蔵しています。本展では、収蔵作品より、プラチナ・プリント発明者であるイギリスのウィリアム・ウィリスが、1878年、イギリスの写真協会誌上で技法を正式に発表するために制作した作品から、現代の写真家によるプラチナ・プリント作品まで約100点を展示いたします。
 プラチナ・プリントは 1920年代まで盛んに作られ、その優美な色調が多くの絵画主義(ピクトリアリズム)作品や肖像写真を生み出してきました。ところが第一次世界大戦の影響で、プラチナの価格が急騰したため下火となり、それ以降70年代に復活されるまでの間、作品は残されていません。しかし、70年代になってアメリカを中心に再び人気を回復し、写真材料としては高価で複雑なプロセスでありながらも、現在は多くの写真家がプラチナ・プリント作品を制作しています。

*プラチナ・プリントは、鉄塩の感光性を利用し、塩化白金と鉄塩の感光液を水彩画用紙に塗布した印画紙を乾燥させ、ネガを直接印画紙の上に置き、密着させて、紫外線に感光させます。その後クエン酸アンモニウム液にて現像、洗浄し、乾燥を行います。

**K・MoPAでは、プラチナ・プリント・ワークショップも定期的に開催しています。実作品を見ながらの技法の解説、ネガ作り、プリント現像などの実技を2日間にわたって行います。次回の開催については、「新着ニュース」をご覧下さい。

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