●12/3YP作家トークと4回の額装ワークショップを終えて

2011年12月3日(土)13:00〜15:00、このシーズンの清里には珍しい雨の降る中、K・MoPAで初めての「ヤング・ポートフォリオ」(YP)作家によるトークを、中藤毅彦氏、劉敏史(ゆう みんさ)氏、下薗詠子氏を迎え開催しました。

第一部は、会期中の「Worldwide@Young Portfolio」展に出品したそれぞれの作品の前で山地裕子学芸員と作家が、撮影当時のことを語り合いました。


中藤毅彦氏(写真家) 
YPに応募した作品が7年連続購入となった実力派


下薗詠子氏(写真家) 
昨年、第36回木村伊兵衛写真賞を受賞


劉敏史氏(写真家) 
宇宙や人間の存在を問う作品に取り組む

第二部はガレリアに移動、それぞれの作家が近作をテーブルの上で披露し、作家同士、周りを囲んむ参加者、当館スタッフも交えたフリートークを行いました。
2010年度木村伊兵衛写真賞を受賞した写真集『きずな』ではポートレート作品の印象が強い下薗氏が見せてくれたのは、ラフ・プリントともいえる無数の“撮りたて画像”。体当たりで取り組んでいるモノクロのストリート・スナップは、下薗氏の作家としての進化を強く印象づけるものでした。
劉氏は、加速器(電子や陽子に高い電圧をかけて加速することでエネルギーを与える装置)を捉えた最新作と、そこに至る軌跡ともいえる作品を、そして中藤氏はサハリンを撮影したプリントを持参くださり、YP卒業後に(YPの応募は35歳が上限)一層厚みを増した数々の作品を紹介することができました。


ガレリアで近作を披露

プロフェッショナルとなった3人の作家たちにとって、ギャラリー・トークともポートフォリオ・レヴューとも一味ちがうこの試みは、ありそうでないものの一つだったようです。
「写真を撮る、誰かに見せる、作家自身の言葉で語る、別の誰かが反応する。実はこういう場の共有こそが、写真を愉しむ原点ではないか?」参加者と出演者より、そんな共通の感想をいただいた今回のトーク・イベント。
K・MoPAはこうした催しを、YP作家たちとの新たな交流の幕開けにしたいと考えています。

 このトークの様子は、2012年3月24日(土)よりスタートする「2011年度ヤング・ポートフォリオ」展の会期中に当館ガレリアにて上映いたします。
第一線で活躍する先輩の姿をぜひご覧いただき、35歳以下の方は、「2012年度ヤング・ポートフォリオ」に応募して力試しをしてください!


2011年度YP展会期中に上映します

そして2011年12月10(土)、11(日)、17(土)、18(日)の4日間、13:00〜15:30、当館の田村泰男学芸員による額装ワークショップを行ないました。


田村学芸員によるデモンストレーション

それぞれお気に入りの写真を持ち寄った参加者は、まずマット・ボード(写真などの展示・保存用の厚紙)や額の種類、用具の説明を受けた後に専用のカッターでマットを切り、写真を台紙に止めるまでの行程を行いました。


専用カッターでマットを切る参加者


専用のテープで写真をマットに止める

当館のHPを見てワークショップに参加されたという東京在住のご夫妻は
「カットするときの力の入れ具合によって、どこまでマットが切れているのかという感覚をつかむのが難しかったのですが、こんなに手間をかけて一枚一枚額装されているということがわかり、新鮮な驚きを覚えました。それに額装次第でこんなに作品が神々しく見えるなんて。
今後、展示を鑑賞するときには、いままでとは別の見方をすることになるでしょう。」と、感想を語ってくださいました。


あとはお気に入りの額に入れて完成ですね

数名の方よりいただいた「中級・上級編があればぜひ参加したい」とのご要望にお応えし、次回の開催も検討したいと思います。このインフォメーションにご注目ください。

写真:YP作家トーク 学芸員・田村泰男 / 額装ワークショップ 学芸員補・野嵜雄一
文責:広報主任・小川直美

●2012年度ヤング・ポートフォリオの選考委員、公募期間決定

当館が世界中の若い写真家を支援し、優れた作品を後世に残す活動「ヤング・ポートフォリオ」。
1995年の開館以来、第18回目となる公募「ヤング・ポートフォリオ」の作品募集期間と選考委員を決定しました。

●Web登録および応募作品受付期間:2012年4月15日〜5月15日
●選考委員:川田喜久治、鬼海弘雄、細江英公(館長)

応募資格は1977年1月1日以降生まれの方で、国籍、プロ、アマチュアを問わず、初めて取り組んだ作品も、既発表も問いません。
詳細は、2012年1月中旬以降に下記ヤング・ポートフォリオ専用サイトをご覧ください。
http://yp.kmopa.org/

細江英公館長(談) ―「ヤング・ポートフォリオ」コレクションの意義―

「K・MoPAがヤング・ポートフォリオ(YP)を通して若い写真家の作品を購入しパーマネント・コレクションをすることで、現代を生きる若い写真家たちを励まし、勇気づけたい。
近い将来、YPコレクションを海外に巡回する機会をつくり、作品を広く世界に紹介したいと思います。

欧米での日本人作家への注目は、年々上がって来ています。今後も、日本の写真は、アジアや欧米で新鮮な驚きをもって受け入れられるでしょうし、日本だけでなく、アジア諸国の作品は欧米に強いインパクトを与えることでしょう。
海外でヤング・ポートフォリオ展を実現することをきっかけに、国境を越えた交流が広がり、K・MoPAは、写真家同士の、あるいは写真を愛し、鑑賞する人々との親交を深めるためのセンターの役割を果たすことになると思います。

写真が誕生してからまだ170年。写真家というものは、次々と開発される新しいテクノロジーを駆使しつつ、しかも何ものにもとらわれない自由な発想でクリエイティビティを追求するものであると、そして美術館はそれを支えていく役割を担っていると私は考えています。
カメラという機械を使用して得る画像の再現方法、そして保存方法は時代とともに変化していくでしょう。しかし、一枚の写真(プリント)と向き合い、鑑賞するという行為は、未来においても残ると思います。
ですから、K・MoPAは、100年後、200年後の方々に鑑賞いただくために、若い写真家たちが写真表現と苦闘した彼らの初期作品、オリジナル・プリントをコレクションしているのです。

■12/3 YP作家によるギャラリー・トークに、下薗詠子氏も出演

「Worldwide@Young Portfolio」展会期中の2011年12月3日(土)に当館で初めて行なうヤング・ポートフォリオ(YP)作家自身によるギャラリー・トーク。 中藤毅彦氏、劉敏史氏に加えて、2010年度に木村伊兵衛写真賞を受賞した下薗詠子氏も出演くださることになりました。

●日時:12月3日(土)午後1時〜3時
●出演:中藤毅彦、劉敏史(ゆう みんさ)、下薗詠子
●会場:K・MoPA展示室
●入場料:入館料のみ / 友の会・会員は無料

これまでのYPに何度もチャレンジしてくださっている方、来年YPへの応募を目指す方はもちろん、“様々な国の写真に興味があるけれど、どんな風に写真を見ることを楽しめばいいの?”という方にも必見のイベントです。
「写真」という表現手段を選んだ作家自身の語りに耳を傾けていただくことによって、写真の見方が変わるかもしれません。そして、若い写真家たちを応援したくなるかもしれませんね。
清里フォトアートミュージアムは、若い作家の成長を見守るために、これからもYP作家の作品発表やトークの拠点としても「ヤング・ポートフォリオ」活動を展開してまいります。
ぜひお誘いあわせの上ご来場ください。

【作家プロフィール】

■中藤毅彦
1970年東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。
2000年より5年間東京ビジュアルアーツ非常勤講師を務める。コントラストの強いモノクロームの都市スナップショットを発表し続け、初めてYPに応募した1999年度以来、35歳でYPを卒業する2005年度まで、7年連続して作品を購入された実力派。
近年では国内のほか東欧、ロシア、キューバなど旧社会主義諸国を中心に世界各地を取材・撮影する一方、仲間たちと四谷三丁目にて「ギャラリー・ニエプス」を運営。
写真ワークショップの講師や、老舗カメラ雑誌『日本カメラ』の月例フォトコンテストでモノクロ・プリント部門の選・評を務めるなど、さらに活躍の場を広げている。
http://niepce-tokyo.com/

■劉敏史(ゆう みんさ)
1974年京都府生まれ。
十代半ばより国内外を旅する。沖縄県石垣島にて鮪漁漁船員、骨董業など幾つかの職業を経て独学で写真を始める。1999年より開始した長い旅の後、旅の終わりを題材にした「The END」、エチオピアのオモ渓谷に住むエスニックグループ・Hamarのポートレイト「ユビクヰタスキアスム 」を発表。
自己という内世界と他者という外世界のフィールドを越境し、宇宙や人間の存在を問う。
2005年に Visual Arts Photo Awardにて大賞を受賞。同年、写真集『果実』(リコシェ出版)を出版。
http://www.youminsa.com/

■下薗詠子
1979年鹿児島県生まれ。
九州ビジュアルアーツ専門学校に在籍中の19歳より東京で雑誌の仕事を始める。
雑誌、CDジャケット等で数多くのアーティストやオリンピック選手を撮影するかたわら、作品制作にも取り組んでいる。また、写真を撮られることの楽しさや喜びを体験して頂きたいとの思いから、一般の方々を撮影する「ナチュラル・フォト」を始める。作品集『きずな』(青幻社)にて第36回木村伊兵衛写真賞、Visual Arts Photo Awardにて大賞を受賞。
http://eiko-shimozono.com/

■10/30 「Worldwide@Young Portfolio」展
細江英公館長によるギャラリー・トークを終えて


2011年10月30日(日)午後2時より、細江英公館長が、開催中の「Worldwide@Young Portfolio」展の作品に寄せるトークを行いました。

 細江英公館長

過去16年間の公募「ヤング・ポートフォリオ」によるパーマネント・コレクションから選抜し、国別に展示を行なった作品群。
その中から、ダゲレオタイプ、プラチナ・プリント、サイアノタイプといった多彩な技法を駆使した作品や、写真を張り合わせて製作したオブジェ、制服を着た人物の顔だけををあえて刳り貫いた作品といった個性的なものを含め、日本、韓国を皮切りに、アジア、ヨーロッパ、東欧、アメリカ、中米、南米の作家まで10数名の作品をピックアップし、同じ写真家としての目線で、それぞれの作品の面白さを語りました。


また、当日飛び入りで参加くださった2011年度ヤング・ポートフォリオ選考委員の鬼海弘雄氏も「非常にバラエティに富んだコレクション、まだまだ写真には可能性があるということをを強く感じましたね」と述べてくださいました。

 細江英公館長(左) 鬼海弘雄氏(右)

このトークの収録映像は、当館のガレリアにて会期中に放映いたします。

文責:広報主任・小川直美 / 撮影:学芸員補・藤原佳子

■12/3 YP卒業作家・中藤毅彦、劉敏史によるギャラリー・トーク

当館の公募「ヤング・ポートフォリオ」(YP)で作品が収蔵され、35歳を越えた写真家たちを、私たちは"YP卒業生"と呼んでいます。
当館の「Worldwide@Young Portfolio」展に出品中のYP卒業生など3人の写真家が、それぞれの"ヤング・ポートフォリオ"の時代を振り返り、当時と変わらないこと、変わりつつあること、また現役世代の今考えていることなどを語ります。
YP卒業作家の中藤毅彦氏(1970年-)は、コントラストの強いモノクロームの都市スナップショットを発表し続け、初めてYPに応募した1999年度YP以来、35歳でYPを卒業する2005年度まで、7年連続して作品を購入された実力派です。
近年では国内のほか東欧、ロシア、キューバなど旧社会主義諸国を中心に世界各地を取材・撮影する一方、仲間たちと四谷三丁目にて「ギャラリー・ニエプス」を運営。写真ワークショップの講師や、老舗カメラ雑誌『日本カメラ』の月例フォトコンテストでモノクロ・プリント部門の選・評を務めるなど、さらに活躍の場を広げています。同じくYP卒業作家の劉敏史(ゆう みんさ/1974年-)氏もトークに出演くださることになりました。ぜひお誘いあわせの上、ご来場ください。

●日時:12月3日(土)午後1時〜3時 
●出演:中藤毅彦、劉敏史(ゆう みんさ)他
●会場:K・MoPA展示室
●入場料:入館料のみ / 友の会・会員は無料


■12月に4回開催!田村学芸員による額装ワークショップ

自宅にお気に入りの写真を飾りたいけれど、どうするのが良いかわからなかったこと、ありませんか?
K・MoPAの展示における作品の額装は、国内外の美術館やギャラリー関係者などから高い評価をいただいており、どこで額装しているの?というお問い合わせをいただくことがあります。
そうした声にお応えするために、当館の開館以来、展覧会の作品を額装している田村学芸員が、マットの切り方や額装のテクニックをみなさまにお教えすることにいたしました。
初心者の方には、ゆっくりと丁寧に。プロフェッショナルには、さらなるステップアップの極意を!
当日はあなたが額に入れたいお気に入りの写真やポストカード、版画など1枚をお持ちいただくだけ。サイズは最大A4までです。美しく額装された自慢の一枚は、素敵なクリスマス・プレゼントに変身するかもしれませんね。

●日時:12月10日(土)11日(日)17日(土)18日(日) 各日午後1時〜3時30分
●講師:田村泰男(学芸員)
●会場:K・MoPA内スタジオ
●受講料:各日1500円 / 友の会・会員は無料
●定員:各日6名 要予約 
*1名からご参加いただけます。
●お申込み:各前日までに住所、氏名、参加人数をお知らせください。
●当日持参いただく写真などのサイズは、最大20×25センチまで。


■10/30 Worldwide@Young Portfolio展にて 細江英公ギャラリー・トーク
若き表現者たちが写真に託した渾身の思いに寄せて


2011年10月22日(土)より、当館ではWorldwide@Young Portfolio展を開催いたします。

清里フォトアートミュージアムが35歳以下の若い写真家を支援する活動「ヤング・ポートフォリオ」(YP)では、1995年から毎年、公募・選考した作品を収蔵・展示しています。
今回はYPのパーマネント・コレクション約4600点の中から、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、世界27カ国で活躍中の写真家の作品約150点を展示します。
本展の一番の見どころは「世界各国の写真表現のバラエティが凄い!」(山地裕子学芸員)この一言に尽きるでしょう。


Worldwide@Young Portfolio展は、世界の若い才能が、公募「ヤング・ポートフォリオ」に向けて挑んできた戦いの、16年の軌跡でもあります。細江英公は、当館の館長の立場から、また現役の写真家として16年間選考委員を務め、公募作品のすべてに目を通してまいりました。
会期中に行う下記ギャラリー・トークでは、展示作品の解説はもちろん、若き写真家たちに伝えたいことを熱く語ります。写真家を目指している方はもちろん、写真を見ることをもっと愉しみたい方にもお聴きいただければ幸いです。

●細江英公館長によるギャラリー・トーク「Worldwide@Young Portfolio」
●日時:10月30日(日)14:00〜15:30
●参加費:入館料のみ
    (一般800円、学生600円、中高生400円、小学生無料)
     友の会・会員は無料
●ご予約不要。開始15分前にチケット・カウンターにご集合ください。

文責/広報主任:小川直美


■9/24「グレイト・スピリット」展ギャラリー・トークを終えて

台風一過、素晴らしい秋晴れとなった2011年9月24日(土)午後2:00〜3:30、「グレイト・スピリット」展の会場にてギャラリー・トークを開催、60名を超える方々にご来場いただきました。
当初予定していたハミド・サルダール=アフカミ氏がやむを得ない事情により急遽来日出来なくなったことから、サルダール=アフカミ氏と長年交流があり、コーディネートを務めた代理人のクリストフ・ラン氏が来日し、氏の文化人類学者としての側面や、モンゴルの遊牧民と生活を共にし徐々に撮影を始めていった様子などをつぶさに語ってくれました。


クリストフ・ラン氏



展覧会作家・八木清氏は、極北の地と人々の魅力、アラスカの厳しい自然に育まれた雄大な風景、そこに生きる家族、静物を撮り続けることに込めた思い、大型カメラでの撮影と手塗りのプラチナ・プリントに魅力について、参加者からの質問に応じつつ語りました。

八木清氏



このギャラリー・トークの様子は、「グレイト・スピリット」展最終日にあたる2011年10月10日(祝・月)まで、当館ガレリアにて期間限定で放映いたします。

文責:広報主任・小川直美 / 写真:学芸員補・藤原佳子

■9/3 K・MoPAチャリティ・ライブ2011を終えて

台風12号が山梨県内にも大雨をもたらした9月3日(土)午後2:00〜4:00、100名を超える参加者が集い、K・MoPAチャリティ・ライブ2011を開催しました。2000年以来、12年目となる本年のイベントには、新刊の『マアジナル』が発刊されたばかりで、大学生を中心とした若い世代の絶大な支持を得ている作家・田口ランディ氏と、即興演奏家としてのライブ活動や、NHK特集「心の時代」のテーマ音楽、映画音楽でも知られる作曲家のウォン・ウィンツァン氏をお迎えしました。



開催中の展覧会のタイトルで、テーマでもある「グレイト・スピリット」(大いなる不思議)をイメージした今回のライブ。
ウォン氏のソロ演奏、そして田口ランディ氏が出会ったインディアンたちやアイヌ民族のシャーマンとの不思議な体験を辿った語りで、ゆっくりと幕を開けました。
続いて自身の詩集より「虫の息」を朗読、ウォン氏の即興演奏が美しい雫のように言葉に寄り添う静寂な時間が流れました。


ピアノ:ウォン・ウィンツァン氏、 朗読:田口ランディ氏


後半は、当館にて開催中の「グレイト・スピリット」展に見る写真の魅力についてのトークが展開されました。
エドワード・カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の作品のなかでもウォン氏が特に惹かれたというカーティスの作品。白人でありながらインディアンの居留地に住居を移し、彼らと生活を共にしながら記録を続けたカーティスと、消え行く部族として被写体になったインディアンたちの作品から立ち上る写真家との間の信頼と親愛、気高い表情の中に込められた深い悲哀を受け止めたことを語りました。
田口ランディ氏は、まるで100年前のようにも見える現代のモンゴルの遊牧民を捉えたサルダール=アフカミの作品から得られる率直な驚きと共に、日本人によく似た容貌のモンゴルの人々が日本に寄せている知られざる親近感、しかし日本人自身は、そこに気づかないばかりか、彼らの生活領域を脅かしかねないような経済戦略に着手しつつあることを、社会的な背景も含めた問題として私たちに教えてくれました。



出演者からの突然のオファーにより飛び入りでこのトークに参加してくださったのは、2008年に本チャリティのゲストとして出演いただいたほか、エドワード・カーティスの特集を組んだ実績のある、雑誌『風の旅人』の編集長佐伯剛氏。カーティスが撮影を行なった約100年前のインディアンが置かれていた過酷な情況、当時のアメリカの政策など、歴史の面からの解釈を語っていただきました。


佐伯剛氏(左)、ウォン・ウィンツァン氏(中)、田口ランディ氏(右)

3名のトークからは、写真を見るという行為は、受け止める一人ひとりの探究心の趣くままに、そこから様々な世界が開けていくという、写真鑑賞の醍醐味が伝わったことでしょう。

再びランディ氏による「いちごあめ」、そして「光の大河」の朗読とピアノ演奏のコラボレーションをもって、2011年のチャリティ・ライブは静かな感動とともに終演しました。



本年12年目を迎えたチャリティ・ライブ、このチケットによる収益は、カンボジアの「アンコール小児病院」の運営資金を集めるNPO「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN」への寄付と、東日本大震災・被災地への支援活動に充当させていただきます。

去る3月11日の東日本大震災で津波の被害に遭った宮城県気仙沼市の小学校の子どもたちがアートを通して想像力や思考力を豊かに、そして未来を切り拓いていく力を養ってほしいという願いから、当館は近隣の美術館スタッフと協力し、現地への出前授業を行なっています。
これは、八ヶ岳に点在する32の美術館が連携する「八ヶ岳ミュージアム協議会」の仲間たちと結成した復興プロジェクトで、本年6月に絵画と工作のワークショップなど2回、そして来る9月〜11月に4回宮城県入りし、写真のワークショップと記録撮影などを行ない、今後も現地の要望に沿って活動を継続していきます。

カンボジアの子どもたち、そして宮城県の子どもたちへのチャリティという今回の趣旨にご賛同くださいました出演者の方々、そして悪天候にも関わらずご来場いただいた皆さまに心より御礼申し上げます。


文責/広報主任:小川直美  写真/学芸員補:藤原佳子

■7/30 久野氏によるトーク「ハチクマの不思議」に「feel」のメンバーも参加!

2011年7月30日(土)午後1:30〜3:00、自然写真家・久野公啓氏による「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」を開催しました。


25名の参加者を迎えて /K・MoPA会議室

蜂の子を食べること、そしてクマタカに似ていることから“ハチクマ”と呼ばれているタカをを追いかけ、その調査と研究のために一年の半分をフィールドですごしている久野氏。信州大学の林学科を卒業し、「葉」を素材に取り組んだ写真を1995年度の第一回ヤング・ポートフォリオに応募、作品は当館のパーマネント・コレクションとして3回購入されています(1995年度、1999年度、2000年度)。

そんな久野氏がタカの渡り、なかでもハチクマの調査と撮影に取り組みはじめ、しかも日本で初めてその映像撮影に成功したというのですから、ぜひK・MoPAでも撮影者の生の声を聞かせていただきたいと思い、今年の4月にトークを企画しました。
しかし3月に起こった東日本大震災による計画停電の影響を受け、7月30日に延期して開催することとなりました。


雄のハチクマについて解説をする久野氏

捕獲方法がわからなかったために、野鳥ファンはもちろん研究者でさえなかなか捕食シーンを確認できなかったハチクマ。
久野氏は様々な試行錯誤の末、2001年に長野県安曇野の森でついに捕獲に成功します。
ハチクマに電波発信機をつけて調査を続行、その後、赤外線に反応するビデオカメラをスズメ蜂の巣に仕掛けてから4年、ついにこれまで誰も目撃できなかった映像を撮影しました。
それは土の中から蜂の巣を掘り出し、約1時間、一心不乱に巣をつつき、おなかがいっぱいになるまで蜂の幼虫を食べるハチクマを捉えた、決定的な瞬間でした。この映像はNHKの人気番組「ダーウィンが来た!」で紹介され、大きな話題を呼びました。



今回はそのハチクマの様々な研究データと共に最新の映像を披露!
土を掘るハチクマのユーモラスな映像に会場は息を呑み、やがて感心のため息と笑いに包まれました。
一般的には蜂に刺されにくいといわれているハチクマですが、実際には眼の周辺などをかなり刺され、研究者に針を抜いてもらっている姿を見ることもできました。
それにしても、他の動物に比べて刺されたときのダメージがこんなにも小さいのはなぜ?
また、主に繁殖期の6月や7月に見られる独特な飛行「デイスプレイ・フライト」は何のためにするのか?
春と秋の渡りに、なぜ往復の軌道を変えるのか?
まだまだ謎の多いハチクマを追って、久野氏はこれからも調査・研究を継続していくとのことでした。


「参加してくれてありがとう!」著書にサイン

トークの最後には、生前に久野氏と交流のあった動物画家、故・薮内正幸氏が描いた貴重なハチクマの原画2点を公開させていただきました。


薮内正幸氏によるハチクマの原画

これはご子息で薮内正幸美術館(北杜市白州町 http://yabuuchi-art.main.jp/)の館長・薮内竜太氏のご厚意により、特別にお借りしたものです。
薮内氏が肉眼で見ることのなかったハチクマが巣を啄ばむシーンを、1975年には正確に描いていたことの驚き。
動物への深い愛情と想像力、探究心が生み出した薮内氏の優れた表現は、久野氏はもちろん、来場くださった25名の方々への素敵なプレゼントになったことでしょう。薮内正幸美術館のご高配に心より感謝申し上げます。

今回のハチクマのトークには、K・MoPAの設計者、建築家の栗生明氏と、K・MoPAで開催中の彫刻展に出品している「feel」のメンバーも聴講くださいました。


feel 萩原真輝氏による作品「死線」の前で /K・MoPAエントランスにて

「feel」は、K・MoPAの建築空間に触発された鉄の造形作家・上野玄起氏を中心に、おもに地元北杜市を拠点とする彫刻家たちが毎年K・MoPA内外のスペースに合った作品を制作し、夏から秋にかけて展示を行なうプロジェクトの名称です。


上野玄起氏による「カゲボウシ」の前で /K・MoPA音楽堂前広場 西側にて

トーク終了後、今年も「feel」の作品を見る目的でに清里入りされた栗生氏のために、「feel」のメンバー自らが、今年の出品作のコンセプトを解説しました。


栗生明氏(右)に「Pray for you」を解説する村岡由季子氏(左) /ガレリアにて


「なんでもない形(内包された魅力的な意匠)」を解説する荒木いち夫氏(右)と栗生氏(左) /ガレリア南側にて

本年6回目を数える彫刻展「feel」は、10月10日(祝)まで。6名の作家による11作品をK・MoPAの屋内外に作品を展示中です。

8月のK・MoPAは無休で開館いたします。テラスの木陰で一休みされてはいかがでしょう。

文責/広報主任:小川直美  写真/「ハチクマの不思議」学芸員補:野嵜雄一 「feel」学芸員:田村泰男


■7/8 田口ランディ×八木清 「グレイト・スピリットを語る」 @早稲田大学をYouTubeにアップ

2011年7月8日(金)、作家の田口ランディ氏と写真家の八木清氏を迎えて開催したトーク・イベント「グレイト・スピリットを語る」(@早稲田大学 小野記念講堂)をYou Tubeにアップしました。こちらからご覧いただけます。

KMoPA Membership

トークの内容は、当館の主任学芸員・山地裕子による展覧会の「コンセプト解説」、田口ランディ氏が選んだ「八木清氏の作品5点」、八木氏が選んだ「エドワード・カーティスの作品5点」、田口氏と八木氏が注目した「サルダール=アフカミの作品」、そして「グレイト・スピリットとは何か?」貴重なトークをぜひお聞きください。

文責 /広報主任:小川直美


■2011年ヤング・ポートフォリオ(YP)選考会を終えて

去る7月15、16日、東京都内にて2011年度ヤング・ポートフォリオの選考会を行ないました。
ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、完成の途上で闘う若い写真家を支援する活動です。毎年、35歳以下の青年の写真作品を世界中から公募し、優れた作品を後世に残すために、当館のパーマネント・コレクションとして購入するものです。
作品の選考に当たるのは、現役の写真家であること、35歳までは何度でも繰り返し応募できることも特徴のひとつです。

東日本大震災の影響により、応募期間を2週間延長した2011年度YP公募には、32カ国・310名の青年たちから約7500枚を超える作品が寄せられました。
2011年度選考委員の鬼海弘雄氏、都築響一氏、館長の細江英公による厳正な選考の結果、約200枚の作品購入を決定しました。


右から都築響一氏、鬼海弘雄氏、細江英公(館長)

全体的なレベルが向上している反面、来年以降の応募の参考としていただきたいような鋭い意見も交わされました。

都築氏:「選考委員の僕たちが“到底ついていけない”と思うほどの斬新なチャレンジを、もっと見たかった。意外と保守的な作品が多かったな、という印象」
鬼海氏:「応募の上限が50枚だからといって、カラーとモノクロを両方、あるいは、いろいろなタイトルの作品をめいっぱい応募してきた作家が多い。自分自身が『これだ!』と思う作品に絞り込んで応募すべきで“誰かに選んでもらうこと”に頼り過ぎている部分はないだろうか?自分の作品を自分の目で選定できる判断力が、写真家には必要」

また、非常に僅差で選考からもれた多くの作家たちにも、貴重なコメントをいただきました。


2011年度選考委員・鬼海弘雄氏

鬼海氏:「あと一歩踏み込んでいけば、もっと被写体にせまれたはず。若いのだから、現状に満足せずにもう少し頑張ってほしいと思った作品については、今後の成長を期待してあえて選外にしたものもあります。同じ作家でも作品次第で毎年購入のチャンスが巡ってくるところが、YPの非常に画期的なところ。今年の結果がすべてではない、来年も挑戦を続ければいい」


2011年度選考委員・都築響一氏

都築氏:「選考委員の目が君たちより優れているとは、僕は思っていない。人の評価を気にせずに、写真家としての信念をもって自分の作風を貫くという時期も必要かもしれない。ゴッホのように、たとえ生前に誰からも評価されなかったとしても、自分の信じる作品を長く長く創りつづけてほしい」


細江英公館長

細江:「K・MoPAは美術館として、常にクリエイティブな作品を求めている。それは、誰もやっていない、どこにもない作品である、ということ。人の作品をたくさん見ることによって、このやり方ではだめなんだ、もう誰かがやっていることなんだと、改めて気づくこともあるはず。もっともっと多くの作品を見て勉強してほしい」

選考の結果は、後日応募者に直接郵送いたします。
また、2011年度・選考会の講評は『2011年度ヤング・ポートフォリオ』図録(2012年3月発売予定)に掲載するほか、当館のHP上にも抜粋を掲載予定です。

写真:学芸員補・野嵜雄一 / 文責:広報主任・小川直美


■グレイト・スピリット展
7/5内覧会と7/8早稲田大学にてトーク


2011年7月6日(水)より開催中の「グレイト・スピリット:カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の写真」。
K・MoPAでは、前日の7月5日(火)に、地元の方々や関係者を招いて内覧会を行いました。


作品解説をする八木清氏


展覧会作家の八木清氏も駆けつけてくださり、来館者の様々な質問に応えてくださいました。

■「グレイト・スピリット:カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の写真」
■会期:2011年7月6日(水)〜10月10日(月・祝)
■休館日:火曜、7/6〜8/31は無休


7月8日(金)19:00〜20:30、普段はなかなか清里にまで足を運べない、とお嘆きの方のために、早稲田大学・小野記念講堂にてトークイベント「グレイト・スピリットを語る」を開催しました。
作家の田口ランディ氏、八木清氏を迎えて開催した90分間のトークには約100名が参集。


トークイベント会場

このトークの模様は、後日You Tubeにアップいたしますのでどうぞお楽しみに。田口ランディ氏は、来る9月3日(土)14:00〜、K・MoPA音楽堂で行なう恒例のチャリティ・ライブにも、朗読とトークで出演されます。
ウォン・ウィンツァン氏によるピアノ演奏とのコラボレーションにご期待ください!

写真:内覧会/ 学芸員補・野嵜雄一  早稲田トーク/田口みきこ
文責:広報主任・小川直美

参加募集!
■自然写真家・久野公啓「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」

7月30日(土)午後1:30〜3:00 


<ハチクマ掘る>
まさに、土の中から蜂の巣を掘り出した決定的瞬間。
(C)KUNO Kimihiro


<ハチクマオス>
 一般的な鷹のイメージとはかけ離れた、優しく聡明な雰囲気をもつハチクマの雄。
(C)KUNO Kimihiro

35歳までの「ヤング・ポートフォリオ」を終えた人を、私たちは「YP卒業生」と呼んでいます。YP卒業生のひとりで、NHK「ダーウィンが来た!」でも活躍中の自然写真家・久野公啓(くのきみひろ)氏。長野県の伊那に居を構えつつ、渡り鳥の調査のために、年の半分以上をフィールドで過ごしています。近年、久野氏が精力的に取り組んでいるのは、鷹の一種ハチクマに関するさまざまな研究活動。今回は最新映像も交え、ハチクマの不思議の数々を紹介していただきます。

●自然写真家・久野公啓「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」
●7月30日(土)午後1:30〜3:00 
●講師:久野公啓(くの きみひろ/ 自然写真家)
●参加費:入館料のみ
   (一般800円、学生600円、中高生400円、小学生無料)
    友の会・会員は無料
●要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。
    info@kmopa.com


●K・MoPAチャリティ・ライブ2011
9月3日(土)午後2:00〜4:00

田口ランディの朗読とウォン・ウィンツァンのピアノ演奏が交錯する、音と詩の世界。
「グレイト・スピリット」展に見る写真の魅力も語ります。収益は、東日本大震災の被災地と、写真家・井津建郎氏が地雷の被害にあった子どもたちのために開院した「アンコール小児病院」に寄付します。


田口ランディ/作家
1959年東京生まれ。2000年『コンセント』で小説家としてデビュー。「秘境や聖地を巡る旅」や「生きるということ」に関するノンフィクションも著書多数。北米のネイティヴ・アメリカンを撮影したエドワード・カーティスの写真に魅せられたひとりでもある。
2011年『マアジナル』(角川書店)、『アルカナシカ』(角川学芸出版)刊行。


ウォン・ウィンツァン/ピアニスト、作曲家、即興演奏家 
瞑想の体験をとおして、超越意識で奏でる音楽スタイルを確立。サトワミュージックより22タイトルのアルバムをリリース。NHK番組「九寨溝」「こころの時代」「にっぽん紀行」の音楽でも知られる。その透明な音色で「瞑想のピアニスト」と呼ばれている。


●K・MoPAチャリティ・ライブ2011
●9月3日(土)午後2:00〜4:00
●会場:K・MoPA音楽堂
●参加費:一般3,000円 2名様以上はお一人2,500円 小・中・高校生は無料
 (友の会・会員は各1,000円引き)※当日券は各500円増
●定員: 150名 / 全席自由
●要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。


展覧会作家、ハミド・サルダール=アフカミと八木清が来館!
■アフカミ&八木清によるギャラリー・トーク

●9月24日(土)午後2:00〜3:30 (通訳あり)
●ご予約は不要です。午後1:45頃にチケットカウンターまでお集まりください。
●参加費:入館料のみ
   (一般800円、学生600円、中高生400円、小学生無料)
    友の会・会員は無料

日本国内では「グレイト・スピリット」展が初めての発表となる作家ハミド・サルダール=アフカミ、そして八木清がK・MoPAに来館、自身の作品の前でどんなことを語ってくれるでしょうか。素晴らしい機会に、ぜひお誘いあわせの上ご来場ください。


ハミド・サルダール=アフカミ(イラン・米、1966-)Hamid Sardar-Afkhami
1966年にイランに生まれ、パリで育つ。ハーバード大学で人類学、チベット、モンゴル語を学び、博士号を取得。卒業後は映画の撮影を手掛け高い評価を受ける。1980年代後半ネパールへ移住し、チベット、ヒマラヤに10年以上滞在した。2000年より1年の半年間をモンゴル、半年間をタイ、フランスにて過ごす。日本国内では、本展が初めての発表となる。


八木清(日本、1968-)YAGI Kiyoshi
1968年長野県生まれ。1993年アメリカ、アラスカ州立大学フェアバンクス校ジャーナリズム学部卒業後、写真家・水越武氏に師事。1994年から極北の先住民族エスキモーとアリュート、彼らを取り巻く自然を、8×10インチの大型カメラを使用して撮影、プラチナ・プリントにて制作している。2004年日本写真協会新人賞受賞。2005年準田淵行男賞受賞。

●初めての講評会も!
2010年度ポートフォリオ永久コレクション証書授与式


雨に濡れた緑がみずみずしい輝きを放つ2011年5月28日(土)午後2時より、2010年度ヤング・ポートフォリオの購入作家14名と選考委員の広河隆一氏、三好和義氏、館長の細江英公をはじめ約80名のご出席をいただき、永久コレクション証書の授与式を行ないました。

東日本大震災による原子力発電所の事故を取材中に駆けつけてくださった広河隆一氏

清里フォトアートミュージアムの館長とスタッフ一同は、毎年行なうこの授与式をさらに意義あるものに深めたいと願い、本年初めての試みとして、ヤング・ポートフォリオ展の会場で各作家が選考委員の講評と質疑を受ける、というスタイルに刷新しました。短い時間に若い写真家たちが自作の前で語り、選考委員が問いかけた約一時間。今回は、その一部を抄録してご紹介しましょう。


●古賀絵里子(以下、古賀)
 この作品はネパールに2度目に訪れたときに撮らせていただいたものです。初めに行ったときは生きる意味とか、本当の幸せってなんだろうとか、東京で分からなくなっていたときに、ネパールに行ったら何か分かるんじゃないかなと思って。そのときはスナップ的な感じで人々を撮ったので、2度目はしっかりカメラを構えて一人ずつ、だいたい100人くらい撮らせていただいたんですけど―。白い背景紙は日本から持って行きました。小学校に行ったら校庭に背景紙を立たせていただいて撮ったり。あとは良くしてくださる家族がいたので、そこの家族の一部屋を借りて簡易のスタジオのような感じで、道行く人や、この家族の親戚に協力して撮らせていただきました。

左端/古賀絵里子氏

●細江英公(以下「細江」)
 彼らには何と言って背景の前に立ってもらったのかな。
●古賀
 ひとつだけお願いをして、何も考えないでくださいと言いました。無心のような状態になったときに、表層というか、いろいろ頭で考えていたら出てこない表情というのがふとした瞬間にでて、それをパッシャと捉えることができた写真が残ってきて、ここで選ばれたんじゃないかと思っています。
●三好和義(以下「三好」)
 プリントもすごく奇麗で、印象に残りました。あと、どうやってこの表情を捉えたのかと思っていたのが、今の「何も考えないで」というところで、納得しました。
●広河隆一(以下、「広河」)
 肖像画というか、ポートレートを撮る深い意味を体得して、それで シャッターを押しているのかな。相手に対する敬意みたいなものが、一人一人現れているようで、本当にいいなと思います。
●古賀
 ありがとうございます。2006年と2009年度ヤング・ポートフォリオで購入していただいた、浅草に住む老夫婦をドキュメンタリーで追いかけた写真があるんですけど、そちらが今年の12月に写真集となって発売されることになりました。本屋さんで見ていただければと思います。


●細江
 あなたはいろいろな高等学校を訪れて生徒たちを撮ったということだけど、まったく知らない所へ行くの?

写真中/細江館長

●小野啓(以下、小野)
 はい、全部知らない人たちです。僕は高校生のポートレートをテーマに、日本全国、8年くらい撮り続けているんですけど。とくに「学校」ということに関心を持っていて、500名ほど撮影してきた中の一人ひとり、ということです。校長先生の許可をいただいて学校に入りましたが、今の時代、高校生を撮ることが非常に難しくて、その子の通う学校を撮るということはもっと難しい。それはいろいろな事件がある、という社会的な背景があって、外部の者が入るのが難しいということなんですけども。でも、なんでそうなっちゃったのか。そういうのが、すごく現代的だと思います。

写真中/小野啓氏

●細江
 どういう風にしてこの人たちを選んだの?たくさんいる中で「君、頼むよ」という感じ?
●小野
 募集をして撮っている分が多くてですね、フライヤーを作って、いろんなお店でまいたり、あとWeb上とか、雑誌の記事とかで募集をして、メールをくれた人の所に日本全国撮りに行く、というスタイルでやっています。この作品は、本人と学校の先生にも送っています。
●細江
 非常に興味がありますね、これは。今の高校生の気力の無さみたいなね、もちろん気力のある人もいるとは思うよ。だけど、君自身についても聞きたいことがたくさんあるね。


●LIO(以下、リオ)
 この写真は、バングラデシュのロヒンギャという難民を撮らせてもらった写真です。もともとチベットに出会って、その時に自分の国ではないところで生活する人たちに会ってすごく衝撃を受けて。いろいろお話を伺っているうちに、公になかなか声を出せない方がいっぱいいらっしゃるので、僕も何もできないんですけど、写真を通じて代わりに声を伝えられたらいいなと思って撮っています。
●細江
 声が出せない状態というのはどういう意味ですか?
●リオ
 声を出すと、その人や親族が捕まってしまったり−。たとえば自国の批判をしたときは命が危ない。もともとロヒンギャの方々は、サウジアラビアの方から商人として入って土着の方々とミックスしていった人たちですが、バングラデシュとミャンマーの間のあたりに住んでいて。そしてその両国とも「我々の国の国民じゃない」と押し出し合っているんです。何年か前には、彼らがマレーシアに船で密航して、それを捕まえたタイの政府が放置していたという事件もあるんですけど、ムスリムだということもあって他の国に比べてなかなか支援も受けられない状況ですね。ジャーナリズムの方々がイラク戦争のように大きく取り上げてくれないので、僕みたいな人間でも行くと、なんとかして欲しいという気持ちが強いです。彼らの8〜9割はそれを伝えたくて、一所懸命英語を勉強しているから話せるんです。

左端/LIO氏

●広河
 バングラデシュの写真家というのは世界のトップクラス中のトップクラスで、もの凄く層が厚くて、その人たちがたくさんロヒンギャを撮ってます。だからその写真から訴えるものに早く近づいて欲しい。あなたでなきゃ撮れないバングラデシュというものまでは、あと一息という、そんな感じですから、来年もまた挑戦してもらったほうがいいかなと思います。


ヤング・ポートフォリオ作家たちの講評会の後には、会場に展示中の、選考委員自身の“ヤング・ポートフォリオ”作品や当時のことを語ってくださいました。

自作の前で語る三好和義氏

*この講評会の全文は、YPサイトに掲載されております。

文責:広報主任・小川直美 写真:藤原佳子

●7/8「グレイト・スピリット」展関連トーク
田口ランディ×八木清 in 早稲田大学小野記念講堂

来る7/6(水)より、K・MoPAにて「グレイト・スピリット:カーティス、サルダール=アフカミ、八木清の写真」を開催します。
本展の関連企画として、エドワード・カーティスの作品に魅了され、写真についても造詣の深い作家の田口ランディ氏と、展覧会作家の八木清氏を迎えて早稲田大学で無料のトークイベントを行ないます。

100年前、ネイティブ・アメリカンと共に暮らし、20年にわたり記録を撮り続けたエドワード・カーティス、現代のアラスカで、先住民たちの生活に密着し、彼らの肖像や愛用の道具を撮影する八木清、そしてモンゴルで祖先への想いを大切に野生動物と共に生きる人々を捉えたサルダール=アフカミ。
今回は展示作品の一部をスライド上映しながら、作品から読み取れる「写真の力」について、作家と写真家、それぞれの立場から自由なトークを繰り広げていただきます。寡黙でありながら力強い写真が私たちに語りかけるものは何か―。田口ランディ氏の豊かな発想と深い洞察力に満ちたトークは、清里の「グレイト・スピリット」展に足を運ぶ素晴らしいプロローグとなることでしょう。ぜひお誘いあわせの上ご来場ください。

日時:2011年7月8日(金)19:00〜20:30(開場18:30)
会場:早稲田大学 小野記念講堂
   http://www.wasedabunka.jp/about/access
定員:200名(全席自由)/入場無料/ご予約不要・先着順
主催:清里フォトアートミュージアム

▼田口ランディ /作家
1959年東京生まれ。2000年『コンセント』で小説家としてデビュー。「秘境や聖地を巡る旅」や「生きるということ」に関するノンフィクションも多数。エドワード・カーティスの写真に魅せられたひとりでもある。


▼八木清 /写真家
1968年長野県生まれ。1993年アラスカ州立大学フェアバンクス校ジャーナリズム学部卒業後、写真家水越武氏に師事。1994年から極北の先住民を8×10インチの大型カメラで撮影している。2004年日本写真協会新人賞受賞。


●5/4(みどりの日)に山地裕子学芸員のギャラリー・トーク
K・MoPAの立つ北杜市もすっかり春めいてくる5月。今年のゴールデンウィークは「2010年度ヤング・ポートフォリオ展」にぜひご来場ください。主任学芸員による作品解説とK・MoPAオリジナル・ポストカードのプレゼントをご用意いたします。
■学芸員によるギャラリー・トーク
5月4日(水・みどりの日)午後2時〜2時30分
講師:当館主任学芸員・山地裕子
参加費:入館料のみ *ご予約不要
     開始10分前にチケットカウンターにお集まりください。
■ご来館の方に、K・MoPAオリジナル・ポストカードをプレゼント!
2011年4月29日(祝)〜5月9日(月)

●延期のイベント、7月に開催決定
東日本大震災による計画停電に伴い延期しておりましたイベントを、7月に開催します。あらためて参加を募集しますので、ぜひ夏の清里にお出かけください。

■プラチナ・プリントワークショップ
7月23日(土)、24(日)
講師:細江賢治
要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。
      TEL:0551-48-5598

■自然写真家・久野公啓「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」
7月30日(土)午後1時30分〜3時
講師:久野公啓(くの きみひろ/ 自然写真家)
参加費:入館料のみ
     (一般800円、学生600円、中高生400円、小学生無料)
     友の会・会員は無料 要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。
     

●ヤング・ポートフォリオ展に2010年度選考委員・三好和義氏がご来館
2011年3月5日より開催中の2010年度ヤング・ポートフォリオ展。
昨年26カ国より応募された6153枚の作品の中から、パーマネント・コレクション作品を選考いただいた写真家の三好和義氏が4月10日に来館、あらためて作品を鑑賞されました。 壁面に展示された205枚の作品を見た三好氏は「(プリントだけを見ていた選考会に比べて)こうして額装されることによって、また品格が上がったような気がします。やはり、いい作品は、額装してもいいですね」


写真家・三好和義氏(2010年度YP選考委員)

「若い作家の作品だけを、これほどまとめて見ることができるのは、多分ここだけでしょう。2009年、2010年に撮影した最新作もあるし、本当に貴重。写真をやっている若い人にとって、すごく刺激になるし勉強にもなるから、いろいろな人にヤング・ポートフォリオ展を観ることを薦めていますよ」



作品一枚一枚のをキャプションを読みながら愉しみ、感想を述べられる三好氏に、写真に対する尊敬と情熱を垣間見る思いでした。
4月に入り、K・MoPAには2011年度ヤング・ポートフォリオ応募作品の数々が到着し始めています。新しい作品、作家たちとの出会いに、K・MoPAスタッフも胸を躍らせています。

写真:学芸員・田村泰男 / 文責:広報主任・小川直美

●4月1日からのK・MoPA開館時間について

 東北関東大震災で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
4月1日より下記のように開館させていただきます。引き続き、東京電力の【計画停電】並びに全館の節電につきまして、みなさまのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。


<計画停電実施中の開館時間>
■10:00-17:00(入館は16:30まで)
■停電の場合にかぎり一時休館 *北杜市は第3Eグループ
■計画停電中止の場合は開館いたします。

http://www.tepco.co.jp/index-j.html
*当館(山梨県北杜市)は第3Eグループです。
ご来館の際は、往復の交通機関への影響にもご配慮の上、安全にご移動ください。



3月17日よりK・MoPA再開


東北関東大震災の影響による変更事項について

 この度の東北関東大震災で被災された皆さまに衷心よりお見舞い申し上げます。
清里フォトアートミュージアムは、2011年3月11日に震度5強、15日に震度4の地震に見舞われましたが、おかげさまで来館者のみなさま、展示作品、収蔵作品、スタッフへの被害はございませんでした。

去る3月12日〜16日まで臨時休館を致しましたが、3月17日より「2010年度ヤング・ポートフォリオ」展を再開しております。
しばらくの間、東京電力の【計画停電】並びに全館の節電を実施しながら下記のように開館させていただきますので、みなさまのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

<計画停電実施中の開館時間>
■10:00-17:00(入館は16:30まで)
■ただし、【計画停電】時間内は一時休館 

http://www.tepco.co.jp/index-j.html
*当館(山梨県北杜市)は第3グループです。
ご来館の際は、【計画停電】の時間帯にご注意ください。また、往復の交通機関への影響にも充分ご配慮の上、安全にご移動ください。


<ヤング・ポートフォリオの公募期間を延長します>
■2011年度ヤング・ポートフォリオ作品募集!4月1日〜5月15日
http://yp.kmopa.org/
計画停電、輸送機関の遅延などを考慮し、web登録と作品の受付を2週間延長し、5月15日締め切りに変更致します。
ただし、できるかぎり4月30日までに登録と作品の発送や搬入を済ませていただければ幸いです。

3月と4月に予定していた下記のイベントを延期します>
■プラチナ・プリントワークショップ
3月26日(土)、27(日)
■自然写真家・久野公啓「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」
4月9日(土)13:30〜15:00 
■「K・MoPAで星をみる会」講師:縣秀彦
4月9日(土)17:00-19:00
*新しい日程が決まり次第、当ページに発表します。

●久野氏が語る、蜂を食べる謎の鷹“ハチクマ”!

35歳までの「ヤング・ポートフォリオ」を終えた人を、私たちは「YP卒業生」と呼んでいます。YP卒業生のひとりで、NHK「ダーウィンが来た!」でも活躍中の自然写真家・久野公啓(くのきみひろ)氏。長野県の伊那に居を構えつつ、渡り鳥の調査のために、年の半分以上をフィールドで過ごしています。近年、久野氏が精力的に取り組んでいるのは、鷹の一種ハチクマに関するさまざまな研究活動。今回は最新映像も交え、ハチクマの不思議の数々を紹介していただきます。


 自然写真家・久野公啓(くの きみひろ)氏


<ハチクマオス>
 一般的な鷹のイメージとはかけ離れた、優しく聡明な雰囲気をもつハチクマの雄。
KUNO Kimihiro


<ハチクマ掘る>
 まさに、土の中から蜂の巣を掘り出した決定的瞬間。
KUNO Kimihiro


■自然写真家・久野公啓「蜂を食べる謎の鷹 ハチクマの不思議」
4月9日(土)午後1時30分〜3時 
講師:久野公啓(くの きみひろ/ 自然写真家)
参加費:入館料のみ(一般800円、学生600円、中高生400円、小学生無料)
    友の会・会員は無料
要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。

●K・MoPAから清里の星空を眺めてみませんか?

国立天文台の縣秀彦(あがた ひでひこ)氏を講師に迎える恒例の「K・MoPAで星をみる会」。春の星座解説は、初心者からリピーターまで毎回大満足!口径40pのMEADE天体望遠鏡で星空観察を行います。*曇天の場合はレクチャーのみとなります。


 昨年の星をみる会でレクチャーを行なう縣秀彦氏




■「K・MoPAで星をみる会」
4月9日(土)午後5時〜7時
講師:縣秀彦(国立天文台 天文情報センター 准教授)*予定
参加費:一般は1000円(展覧会もご入館できます)友の会・会員は無料
要予約:住所、氏名、参加人数をお知らせください。

●参加募集!プラチナ・プリント・ワークショップ

プラチナ・プリントは、1911年に発行されたアメリカの写真雑誌において「すべての写真のなかで、プラチナ・プリントほど美しく、永遠に保存性が高く、洗練された目を満足させるものはない」と記されたほど、突出した存在感をもつ技法でした。

当館は、3つの基本理念の一つとして、プラチナ・プリント作品の収集、展示とともにワークショップを開催し、古典技法の継承を行なっています。ベルベットのような質感と優れた保存性、優美な色調のプラチナ・プリントは、技法的には比較的シンプルといわれています。作品の鑑賞、撮影から印画紙作り、プリントまでの全工程を二日間かけて行う本ワークショップ。新しい作品表現や長期保存に興味のある方は、ぜひ一度ご参加ください。


実技指導中の講師・細江賢治氏(中心)

■プラチナ・プリント・ワークショップ
日時:2011年3月26日(土)、27(日)の2日間
講師:細江賢治 / 写真家
参加費:30,000円
定員:8名(先着順)*定員に達しない場合は延期といたします。
要予約:2011年3月23日(水)までに下記まで
お問い合わせ:学芸員・田村泰男 
TEL:0551-48-5599 FAX:0551-48-5545

●「ヤング・ポートフォリオ」の募集要項ができました。

清里フォトアートミュージアムの「ヤング・ポートフォリオ」は、写真表現に情熱を燃やす青年たちの作品を後世に残すために、作品を募集します。35歳以下を対象に毎年一回公募を行い、優れた作品をパーマネント・コレクションとして収蔵するものです。

■「ヤング・ポートフォリオ」とは?はじめての方はこちら!
http://yp.kmopa.org/

■「ヤング・ポートフォリオ」をご存知で、応募に興味のある方はこちら!
http://yp.kmopa.org/modules/tinyd1/

2011年1月、細江英公館長によるギャラリートーク

この度K・MoPAでは、2011年1月23日(日)まで開催中の「プラチナ・プリント―光の名残り展にあわせ、2010年度文化功労者に選ばれた当館・館長の細江英公によるギャラリートークを開催致します。当館の基本理念でもある「永遠のプラチナ・プリント」。技法としての魅力はもちろん、三島由紀夫を被写体とした展示中の作品『薔薇刑』についてなど、あますことなく語ります。ぜひ一度、冬の清里にいらっしゃいませんか。

「細江英公:プラチナ・プリントの魅力を語る」
日時:2011年1月22日(土)午後1時〜2時
会場:清里フォトアートミュージアム 展示室
   開始10分前にチケットカウンターにご参集ください。
参加費:入館料のみ *友の会・会員は無料
定員:なし
要予約: TEL:0551-48-5599 FAX:5445


*積雪による交通機関や道路の事情により、ギャラリートークを延期する場合もございます。ご予約の際には、かならず代表者のお名前と連絡先をお知らせください。