KMoPA

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プラチナ・プリント ― 光の名残り
Platinum Prints from the Collection: Vestiges of the Light


プラチナ・プリント ― 光の名残り

会 期 :2010年9月11日(土)〜2011年1月23日(日)まで
休館日 : 毎週火曜日(祝日の場合は開館)、 年末年始(12月27日〜1月7日)
9月1日(水)〜9月10日(金)は展示入れ替えのため休館


主催: 清里フォトアートミュージアム
     Kiyosato Museum of Photographic Arts(K'MoPA)

[開催趣旨]


 現存する最古の写真は、フランスのニセフォール・ニエプスが、1827年の夏に8時間をかけて露光し、画像の定着に成功したものです。その後、さまざまな写真技法が生まれましたが、基本的には、レンズが光を集め、フィルムを感光させ、印画紙を露光・現像するという行程が長く行われてきました。現代においては、フィルムや印画紙の現像を行う機会は少なくなり、メディア環境の発展とともに、写真表現は今後も多様化して行くでしょう。しかし、写真の源が、光であり、写真家の持つ眼差しであるということは変わりません。むしろ、写真は、現代の"高速社会"において、人間にとって本質的に重要な<時間>の持つ意味についても考える機会をも、もたらしてくれるのではないでしょうか。


アルヴィン・ラングドン・コバーン
《シーリー姉妹》1910年頃
Alvin Langdon Coburn
The Seeley Sisters, c. 1910
[禁無断掲載]

 当館では、三つの基本理念の一つとして、プラチナ・プリント作品の収集・展示を行ってまいりました。1911年、プラチナ・プリントについて、アメリカの写真雑誌では「すべての写真のなかで、プラチナ・プリントほど美しく、永遠に保存性が高く、洗練された目を満足させるものはない」と記されたほど、突出した存在感を持つ技法だったのです。本展では、プラチナ・プリント誕生期の1878年イギリスの写真から、近・現代の作品約120点を展示いたします。


エドワード・S. カーティス
《ポベ・トンモ(朝の花)、サン・イルドフォンソ族》1904年頃
Edward S. Curtis
Pobe Tommo, San Ildofonso Pueblo, c. 1904
[禁無断掲載]

 遡れば、光とは、誕生時の異なる光がさまざまに反射して宇宙から漂ってくるもの。写真は、地球に辿り着いた光の"名残り"と、写真家が選び取った時の交差を画像に定着させる表現芸術であるとすれば、写真を撮る・見ることの自由さはまさに無限大です。そして、写真に記録された<あの時>と、写真が表現する
<これから>をどのように感じ取るのかは、写真を見る愉しさでもあります。
 K・MoPAは、今年で開館15年を迎えました。国内外の約8000点のコレクションから出品いたします。
プラチナ・プリント作品の魅力をどうぞお楽しみください。



ピーター・ヘンリー・エマーソン
《『ノーフォーク湖沼の生活と風景』より 睡蓮を集める》1886年
Peter Henry Emerson
Gathering Water-lilies from "Life and Landscape on the Norfolk Broads", 1886
[禁無断掲載]


【プラチナ・プリントとは】
写真が正式に誕生したのは1839年ですが、プラチナ(白金)を印画紙に使用する試みは銀を用いたシルバー・プリントより早く、1831年から行われていました。しかし、プラチナ印画紙として登場するのは、1873年、イギリスのウィリアム・ウィリス(William Willis, 1841-1923)の発明によるものです。本展では、ウィリスが、1878年、イギリスの写真協会誌(後の王立写真協会)『ザ・フォトグラフィック・ジャーナル』(The Photographic Journal、1878年12月13日号)において、プリントの技法を正式に発表するために制作した作品「田舎の小屋」(Rustic Cottage)を展示いたします。



エミール・コンスタン・ピュヨー
(無題)1900年頃
Emile Constant Puyo
(Untitled), c. 1900
[禁無断掲載]


プラチナ・プリント画像は、黒のしまりがよく、階調の幅が広く、グレーの調子がほとんど無限に表現できます。黒やハイライト部分の中の微妙に異なるトーンが、ベルベットのような質感と、優美な色調と言われる理由です。そして、白金の科学的安定度がきわめて高いため、現在写真を焼き付ける技法の中でこれ以上耐久性に優れた技法はないとされています。



エドワード・ウエストン
《ニール》1925年
Edward Weston
Neil, 1925
[禁無断掲載]



プラチナ・プリントは鉄塩の感光性を利用します。塩化白金と鉄塩の感光液を水彩画用紙に塗布した印画紙を乾燥させ、ネガを直接印画紙の上におき、密着させて、紫外線に感光させます。そしてクエン酸アンモニウム液にて現像、洗浄し、乾燥を行います。紫外線にしか感光しないことと、感度が非常に低いため、たとえば、小さなネガから大きな画像に引き伸ばすということができず、密着焼きのみのプリントとなります。そのため、ネガの大きさそのままのプリントとなり、ネガにあるディテールの再現性が非常に高いことも特徴です。



ジェリー・N・ユルズマン
《無題》1991年
Jerry N. Uelsmann
Untitled, 1991
© Jerry N. Uelsmann
[禁無断掲載]



【主な出品作家】
ウィリアム・ウィリスJr. ガートルード・S. ケーゼビア
クラレンス・H. ホワイト エドワード・ウエストン エドワード・スタイケン
アルフレッド・スティーグリッツ アルヴィン・ラングドン・コバーン
エドワード・S. カーティス アーヴィング・ペン ジェリー・N. ユルズマン
細江英公 井津建郎 他


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