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ウィン・バロック
─魅せられた光の謎─

Wynn Bullock
- Enchanted by the Mystery of Light -


 

ヤング・ポートフォリオ
Young Portfolios

 

1998年度(第四回)
Young Portfolios 1998

 

1997年度(第三回)
Young Portfolios 1997

 

1996年度(第二回)
Young Portfolios 1996

 

1995年度(第一回)
Young Portfolios 1995

ウィン・バロック──魅せられた光の謎

展覧会  1999年6月26日(土)〜10月3日(日)
図録、ポストカードはオンラインショップにて販売中

 ”カリフォルニア派”写真家 の代表的な一人として知られ、森や海などの自然 を捉えたリリカルな作品で知られるウイン・バロック。自然を多く撮ったと同時 に自然のなかに幼い少女や女性のヌードを配したイメージも多く残しています。
なかでも人々に強く印象づけた作品が「森の中の子供」(Child in Forest,1951 年)でした。深い森の柔らかな光を浴びて、地中から静かに涌き出す清らかな水 のように横たわる少女。「森に人物を配置することは、互いに異なる事象、人間 の事象と自然の事象をおくことになるが、人間の事象もまた結局は自然である」 と、自然の底知れぬ神秘をめざしたバロックの考えを極めてシンプルな表現で実 現しています。

ウィン・バロック
「森の中の子供」1951年

Wynn Bullock
Child in Forest, 1951


C 1999 Bullock-Wilson and Harrington-Bullock
[禁無断転載]

 1955年、 ニューヨーク近代美術館が開催した「人間家族」(ザ・ファミリー・ オブ・マン)展は、写真の見方を大きく展開させるエポック・メイキングな写真 展でした。第二次世界大戦と原爆の使用への反対、朝鮮戦争の直後のアメリカ で、人間の根元的な善の部分を再び信じようと企画したエドワード・スタイケン は、503点の写真を展示し、その1枚目がバロックの「森の中の子供」でした。
この作品で展覧会が目指したものを象徴させたと言っても過言ではなかったので す。同展にバロックの作品は2点出品されましたが、もう一点の「そこに光あ れ」(Let There Be Light, 1954年)は、コーコラン・ギャラリー(ワシントン DC)の6万5千人のアンケートにより、最も好きな写真に選ばれています。

ウィン・バロック
「子供と未知なる世界」1955年

Wynn Bullock
Child and the Unknown, 1955


C 1999 Bullock-Wilson and Harrington-Bullock
[禁無断転載]
ウィン・バロック
「森の道を歩く子供」1958年

Wynn Bullock
Child on Forest Road, 1958


C 1999 Bullock-Wilson and Harrington-Bullock
[禁無断転載]

 ウィン・バロックは 1902年、シカゴに生まれました。コロンビア大学、ウエス ト・ヴァージニア大学にて音楽を学び、プロのテノール歌手としてブロードウェ イで4年間活躍した後、パリ、ミラノ、ベルリンに留学、3年を過ごしました。 パリでは、印象派、後期印象派絵画の光と色の美しさに刺激を受けます。また、 カメラを購入し、自分で写真を撮って焼くようになります。パリの舞台デビュー は好評を得ながらも、声に限界を感じ始めたバロックは、1930年ヨーロッパから 帰国しました。

 折しもアメリカは 大恐慌。ウエスト・ヴァージニアで家の不動産 管理の仕事につきますが、写真は趣味で続けていました。この頃、言語の記号的 性質を追求する意味論哲学者、アルフレッド・コージーブスキーの影響も受けて います。やがて、不動産の仕事で立て直し、カリフォルニアに向かいます。判事 であった母親の影響もあって法律を学ぶが続かず、マン・レイやハンガリー出身 の造形作家モホリ=ナギらの写真にふれて視覚芸術に興味を持ち、写真家になる 決意をし、1938年ロサンゼルスのアート・センター・スクールに入学します。

 絵画の影響を 強く受けていたこともあり、ストレートな写真よりも技術的な実験を 多く行い、なかでもソラリゼーションには特に興味を持ち、のちに特許も取得し ています。

 1941年に 卒業、すぐに商業写真で生活を始めます。1948年、エドワー ド・ウエストンに出会い、決定的な影響を受け、それまでの実験的な作品をや め、ストレートな写真を撮るようになります。8×10インチの大型カメラでの撮 影を始めますが、そのプリントは比類ない美しさで、イメージの深い象徴性を支 えています。バロックは1975年、73歳で亡くなるまで、撮影と同時に作品を支え る自身のものの見方、捉え方について書き続けました。

ウィン・バロック
「女の手」1956年

Wynn Bullock
Woman's Hands, 1956


C 1999 Bullock-Wilson and Harrington-Bullock
[禁無断転載]

 バロックの作品は 明快な自然の美しい写真のように見えるのですが、それぞれ のイメージの拡がる方向へ踏み込んで行こうとすればするほど、糸口の見えない ミステリーのように、深い霧に吸い込まれていくような気持ちにさせられるので す。

ウィン・バロック
「たくましい木」1956年

Wynn Bullock
Stark Tree, 1956


C 1999 Bullock-Wilson and Harrington-Bullock
[禁無断転載]

 バロックは 次のように語っています。「たとえば、あなたが何かの写真を撮 るとき、外面的なものによって感覚を喚起されるだけでなく、内面に何かがある と感じるものを撮ろうとする。目には直接見えないが、頭の中では内面に何かが あるとわかる写真だ。これは、私に言わせれば、内省的なものではない。これが リアルなのだ。」「私の作品は、人間の持つ力に対する前向きの考え方を表現し たものだと考えている。神秘的で捉えどころのない観念に陥らない前向きの信念 だ。」
 バロックの作品制作は、自身をとりまく世界に対する心の動きを象徴するもの であり、自然の力、自然に在るものを深く理解しようとするひたむきな探求その ものだったといえるでしょう。

 本展覧会は日本で初の回顧展であり、美しいモノクロ・プリントと同時に珍し いカラー作品を含む約100点でウィン・バロックの世界をご覧いただきます。

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