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2009年 第十五回
ヤング・ポートフォリオ

Young Portfolio Acquisitions 2009


2009年度ヤング・ポートフォリオ
Young Portfolio Acquisitions 2009

選考委員 江成常夫、須田一政、
細江英公(館長)
作品募集
期間
2009年4月1日~5月15日
応募者総数 407名(世界41カ国より)
応募総点数 8407枚
購入者数 38名(国内20名・海外18名)
購入点数 205枚
展覧会 2010年3月13日(土)~5月30日(日)

[開催趣旨]


ヤング・ポートフォリオは、上限の35歳まで何度でも応募することができ、選考委員は毎年替わりますが、一度作品購入となった写真家は、複数年にわたって購入されるケースが多いことが特徴です。結果として、当館のパーマネント・コレクションには、20代、30代の間に生まれた、ダイナミックな展開を見ることのできる作品群となって蓄積され、館外での展覧会に出品される機会も生まれようとしています。たとえば、バングラデシュの写真家G.M.B.アカシュ(1977-)は2002年からこれまで、7年間にわたり毎年収蔵しており、これまでの収蔵枚数は119枚。また、亀山亮は(日本、1976-)1999年から2001年を除く毎年でこれまでの合計が121枚、そしてラファル・ミラフ(ポーランド、1978-)は、2003年から毎年と、それぞれ継続して収蔵しています。初年度の購入枚数はわずか1、2枚でも、購入されたことをきっかけとして、自信をもって作品制作を続け、やがて購入枚数が増えて行く様には、写真表現に託す若者の熱い思いとのびやかな成長を見ることができます。
 私たちは、若い写真家の作品を収蔵し、保存することで、彼らが<いま>を生きることに写真を通して向き合い、時代に向けて発信した力強い眼差しを未来へ繋いで行きたいと考えています。


本展図録に掲載のアーティスト・ステートメントより抜粋

●相川美穂「ヴィクトリアの眼差し」
ウガンダ共和国を訪れる機会に恵まれ、初めて降り立ったアフリカの大地で私が出会った素敵な少女、ヴィクトリア。彼女の眼差しはいつもしっかりと前を見据えていた。
現代社会の直面する課題、問題は計り知れない。ウガンダ共和国も多くの難題を抱えている。エイズ、難民、貧困、自然破壊、食糧問題など、今取り組まなければならない事柄をあげるときりがなく、その深刻さに直面すると目を覆いたくなる。しかし、未来を担う子供たちの真っすぐな眼差を目にすると、立ち止まっている場合ではないことに気づかされる。

●今村拓馬「Kids -existence-」
私は、親でも教師でもない大人として彼らと接しています。そうした活動の中で感じるのは、輝きや凛とした姿、純然たるパワーです。子どもたちにはそれらが無数に存在し、泣き笑い、喜び悲しみなどの感情が未分化ながらも内在しています。
人間には多様な人と接し、感情や生活を共有することで得られる経験が必要です。それを子ども時代に体感することが、社会性を育み人としての創造性を培うことにつながるはずです。
しかし社会を見つめると、直接的な触れ合いではなく、携帯やメールといった、モノを通じた上での接点ばかりが増えています。
そうした社会を我々はどう考えるのか。また、次世代の担い手である彼らにどのような社会を受け渡すのか。これは私たちが考えなければならないことであり、問われていることです。

●谷井隆太「ものみゆさん」
「ものみゆさん」は行楽の景色を通して、人の存在の意味を問いたかった。そこに写る人々は自由で自律した存在としてあって欲しかった。作品の中には秋葉原の歩行者天国の写真が一枚ある。それは通り魔事件の起きる前に撮影したものだが、今となってはその歩行者天国も防犯上中止されてしまった。ここで注視すべき点は、ありふれた平和な景色というものは、いつ崩れるともしれない脆弱なものであるということだ。だからこそ、私は人々の平穏な営みの時間を記録し、思索、発表する事に意義を感じる。

●武藤弘司「BEGGAR」「SADHU」
僕は弱い人間である。だから、少しでも強くなりたい。
写真家とフリーターを行ったり来たりすると自信を失いそうになる。
2004年に建前上でもフリーランスの形態を取ってから、
ボクシングを6年間続けている。
アジアを旅する時は、旅と写真に集中し、日本にいる時はトレーニングをしている。
不安だから、写真家を長く続けたいから、
旅も写真もボクシングも続けるのである。夢や理想を追いかけるのである。
写真家はアスリートだ。写真を撮る行為とまとめる行為を繰り返し残して逝く。
まずは自分の肉体と精神を信じ、次に家族や社会を信じ、作品を作っていく。
写真家とボクサーの生き方は非常に似ている。
どちらもマイノリティーな存在であり、その道だけでは食べていけず、
自分や社会と闘いながら生きていく。
写真家は写真であり、ボクサーは己の肉体で表現し、
自分の中での勝利とプライドを求め、運も味方に付けながら、その道の頂点を目指していく。花が咲くこともあれば、なかなか咲かず散っていくこともある。



ロドリゴ・マアワド(メキシコ)
《THE EXECUTIONER WAITING》 2009年
Rodrigo MAAWAD



ラファル・ミラフ(ポーランド)
《Vasilisa Panikhida》 2008年
Rafal MILACH



G.M.B.アカシュ(バングラデシュ)
《DAYS IN OUR LIVES》  2008年
G.M.B.AKASH



フレデリック・レズミ(ドイツ)
《Mahmatlar, Turkey, 2008》 2008年
Frederic LEZMI


ハンネ・ファン・デル・ワウデ(オランダ)
《MC1R (Natural red hair) - Monica》 2007年
Hanne VAN DER WOUDE



谷井隆太(日本)
《ものみゆさん》 2008年
TANII Ryuta





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2009年度ヤング・ポートフォリオ購入作家名一覧

2009年度購入作家名一覧

相川美穂(日本、1982-) G.M.B.アカシュ(バングラデシュ、1977-) モニルル・アラム(バングラデシュ、1975-)
青木 弘(日本、1976-) K.M.アサド(バングラデシュ、1983-) エリック(イギリス、1976-)
ヤニス・ガラノプロス(ギリシア、1976-) カレド・ハサン(バングラデシュ、1981-) シェイン・ヒル(オーストラリア、1974-)
池田啓介(日本、1976-) 今村拓馬(日本、1980-) 井上麻衣(日本、1986-)
石本卓史(日本、1979-) 亀山 亮(日本、1976-) ヴァシリス・カンタス(ギリシア、1974-)
木村まい(日本、1984-) 古賀絵里子(日本、1980-) フレデリック・レズミ(ドイツ、1978-)
ロドリゴ・マアワド(メキシコ、1982-) 松本孝一(日本、1976-) ラファル・ミラフ(ポーランド、1978-)
南 しずか(日本、1979-) 元田喜伸(日本、1976-) パロマ・ムケルジー(インド、1982-)
武藤弘司(日本、1976-) チザム・ピアース(アメリカ、1980-) ザヒドゥル・サリム(バングラデシュ、1978-)
田福敏史(日本、1979-) 高木忠智(日本、1977-) 武山友子(日本、1978-)
スティーヴン・タミージー(アメリカ、1981-) 谷井隆太(日本、1979-) ウェイ・レン・テイ(シンガポール、1978-)
頭山ゆう紀(日本、1983-) 坪内一真(日本、1979-) ハンネ・ファン・デル・ワウデ(オランダ、1982-)
トゥカ・ヴィエイラ(ブラジル、1974-) 山内 浩(日本、1974-)

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