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清里フォトアートミュージアム収蔵作品より「原点を、永遠に。」

サンディエゴ写真美術館凱旋展
清里フォトアートミュージアム収蔵作品より「原点を、永遠に。」

Beginnings, Forever:From the Collection of the Kiyosato Museum of Photographic Arts

 

展覧会名: 清里フォトアートミュージアム収蔵作品より:原点を、永遠に。
会期: 2022年7月2日(土)~9月25日(日)
会場: 清里フォトアートミュージアム
主催: 清里フォトアートミュージアム委員会
特別協賛: 真如苑(社会貢献基金)
開館時間: 10:00~18:00 (入館は17:30まで)
休館日: 会期中7・8月は無休、火曜休館
入館料: 一般800円(600円) 学生600円(400円) 高校生以下無料
( )内は20名様以上の団体料金 家族割引1,200円(2名~6名様まで)
交通のご案内: 車にて:中央自動車道須玉I.C.または長坂I.C.より車で約20分
JR:中央本線小淵沢駅にて小海線乗り換え 清里駅下車、車で約10分

 
 

すべての写真家にスタート地点がある。

サンディエゴ写真美術館からの帰国凱旋展・世界の写真家が35歳までに撮影した名作/近作153点を一挙公開

清里フォトアートミュージアム(K・MoPA/ケイモパ、山梨県北杜市)は、7月2日(土)から9月25日(日)まで「原点を、永遠に。」展を開催します。本展は、2021年4月から9月にかけて、米国カリフォルニア州のサンディエゴ写真美術館において開催され好評を博した展覧会の凱旋帰国展となります。

1995年、“写真と写真家のために生きる美術館”をめざして開館したK・MoPAの基本理念のひとつに「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」があります。毎年、世界の35歳以下の若手写真家から作品を公募し(2021年度の応募は27ヵ国、278人、7,285点)、第一線の写真家による選考を経て選ばれた作品を購入、展覧会を開催するヤング・ポートフォリオは、現在、第一線で活躍する多くの写真家たちのキャスティングボードとして、大きな役割を果たしてきました。

本展「原点を、永遠に。」は、「すべての写真家にスタート地点がある。」、この理念を背景にK・MoPAの全収蔵作品から、古今東西の106人の写真家たちが35歳までに撮影した作品を厳選し、153点を展示します。写真草創期の19世紀から21世紀の現在まで、写真史に大きな足跡を残した写真家たちから今現在を生きる写真家たちまで、彼らの「原点」ともいえる時代に生み出された作品群は、個々の写真家の軌跡を見る上で興味深いだけにとどまらず、現在では重要な表現メディアとなった写真がたどってきた歴史を見る上でも非常に有意義な展覧会といえます。本展は、2021年、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴ写真美術館でコロナ禍を乗り越えて開催された展覧会の里帰り展として、日本で初めて公開されるものです。

 

本展の展示構成

第1部:写真草創期から20世紀まで

アルフレッド・スティーグリッツ、ルイス・ハイン、エドワード・ウェストン、アンドレ・ケルテス、ブラッサイ、アンセル・アダムスなど19世紀の写真草創期から20世紀までの写真史に重要な役割を果たした巨匠たちが、写真の表現や役割について試行錯誤を繰り返して生み出され、現在ではそれぞれの写真家の代表作にもなっている作品の数々を素晴らしいプリントによって展示します。(展示作家数:34人)

ルイス・ハイン
《10歳の新聞売り、1909年3月》
1909年
W. ユージン・スミス
《楽園への歩み》
1946年

 

第2部:戦後の日本写真

第二次大戦の終結は、日本の写真にとっても新たな時代を告げるものでした。雨後の筍のようにマスメディアが勃興し、自由な表現が可能になった戦後、若い写真家たちはそれぞれの世代で写真の多様な可能性を追求し、その後の世代に大きな影響力を持つ作品を生み出し続けました。植田正治、田沼武能、細江英公、奈良原一高、東松照明、森山大道、荒木経惟ら、現在、海外でも大きな注目を浴び、高い評価を得る日本の戦後写真の礎となった写真家たちの作品をはじめ、現在も精力的に活動を続ける写真家たちの作品を紹介します。(展示作家数:29人)

森山大道
《青森・三沢》
1971年
岩合光昭
《海からの手紙:ヒゲペンギン》
1977-79年

 

第3部:ヤング・ポートフォリオ

K・MoPA開館以来、毎年開催しているヤング・ポートフォリオは、2021年度までに76ヵ国から約10,000人、約14万点の応募があり、46ヵ国、約800人の6,000点を超える作品が当館に収蔵されています。デジタル時代の到来とともに、留まるところを知らず急速な技術発展を続ける写真の世界において、25年を超えるヤング・ポートフォリオの歴史のなかで選ばれた作家たちの作品を見直すことは、これからの写真を考える上で重要な機会になることは間違いありません。(展示作家数:43人)

伊原美代子
《みさおとふくまる》
2012年
アル・ラプコフスキー
《もっとレゴがほしい》
2016年

 
 
 
本展出品作家一覧(ABC順):106人
ベレニス・アボット、アンセル・アダムス、アン・ソンスク、G.M.B. アカシュ、荒木経惟、K.M. アサド、ワーナー・ビショフ、ジュリオ・ビッテンクール、ビル・ブラント、ブラッサイ、マヌエル・アルバレス・ブラボ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロバート・キャパ、張照堂、デイヴィッド・シーモア“シム”、アルヴィン・ラングドン・コバーン、ブルース・デイヴィッドソン、ロベール・ドアノー、ハロルド・E. エジャートン博士、エド・ヴァン・デル・エルスケン、ERIC、エリオット・アーウィット、イスマイル・フェルドゥス、ロバート・フランク、藤原新也、エメット・ゴーウィン、フィリップ・ジョーンズ・グリフィス、ハン・スンピル、英 伸三、ギジェルモ・シュロデック=ハート、林 典子、ロバート・ハイネケン、ルシア・エレロ、ルイス・ハイン、本城直季、細江英公、伊原美代子、今井壽恵、石元泰博、岩合光昭、イ・ジーヨン、トニー・レイ=ジョーンズ、チョン・ミンス、亀山 亮、ユーサフ・カーシュ、川田喜久治、アンドレ・ケルテス、鬼海弘雄、北島敬三、北野 謙、ウイリアム・クライン、ヴィクトル・コーエン、マリヤ・コジャノヴァ、桑原史成、アル・ラプコフスキー、セルゲイ・レベディンスキー、ロドリゴ・マアワド、三木 淳、ラファル・ミラフ、水谷吉法、百瀬俊哉、森山大道、本橋成一、イ・ミョンホ、長野重一、内藤正敏、中藤毅彦、奈良原一高、野町和嘉、大石芳野、小原一真、アダム・パンチュク、アーヴィング・ペン、ジル・ペレス、ダナ・ポパ、坂口真理子、坂田栄一郎、佐藤信太郎、ジョージ・H. シーリー、瀬戸正人、下薗詠子、篠山紀信、ヴォイチェフ・V.スラーマ、W. ユージン・スミス、ハリ・シーカオ、ギジェルモ・シュロデック=ハート、アルフレッド・スティーグリッツ、アン・ソンスク、ルー・ストゥーメン、ハン・スンピル、フランク・メドゥ・サットクリフ、髙木忠智、高島空太、谷井隆太、田沼武能、立木義浩、東松照明、東京るまん℃、富山治夫、都築響一、植田正治、上田義彦、ジェリー・N. ユルズマン、トゥカ・ヴィエイラ、エドワード・ウェストン、ウォン・ウェイ・チョン、ハンネ・ファン・デル・ワウデ、楊 哲一、ピョートル・ズビエルスキ

 

広報用画像
1. ルイス・ハイン《10歳の新聞売り、1909年3月》1909年

 

2. ロベール・ドアノー《兄弟》1934年 ⒸAtelier Robert Doisneau/Contact

 

3. W. ユージン・スミス《楽園への歩み》1946年 Ⓒ2022 The Heirs of W. Eugene Smith/PPS

 

4. 荒木経惟《さっちん》1962-63年 ⒸNobuyoshi Araki Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

 

5. 森山大道《青森・三沢》1971年 ⒸDaido Moriyama Photo Foundation

 

6. 大石芳野《ニューギニア:タロイモ畑の母子》1973年

 

7. 岩合光昭《海からの手紙:ヒゲペンギン》1977-79年 ⒸMitsuaki Iwago

 

8. 佐藤信太郎〈夜光〉より《東京都大田区西蒲田 1997》1997年 ⒸShintaro Sato

 

9. イ・ジーヨン《失恋》2011年 ⒸJeeyoung Lee

 

10. 伊原美代子《みさおとふくまる》2012年 ⒸMiyoko Ihara

 

11. 水谷吉法《Tokyo Parrots 007》2013年 ⒸYoshinori Mizutani

 

12. アル・ラプコフスキー《もっとレゴがほしい》2016年 ⒸAl Lapkovsky

 
 

■お問い合わせ

本展の詳細につきましては学芸員・山地裕子 yamaji@kmopa.com
掲載用画像データにつきましては、学芸員・ 綱 info@kmopa.comが承ります。

ホームページ https://www.kmopa.com
ツイッター https://www.twitter.com/kmopa
フェイスブック https://www.facebook.com/kmopa
インスタグラム https://www.instagram.com/kmopa2022/

清里フォトアートミュージアム Kiyosato Museum of Photographic Arts
〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545-1222
Tel: 0551-48-5599(代表) Fax: 0551-48-5445 Email: info@kmopa.com
 

2021年度ヤング・ポートフォリオ展

Young Portfolio Acquisitions 2021

会  期: 2022年3月19日(土)~5月30日(月)

会  場: 清里フォトアートミュージアム

主  催: 清里フォトアートミュージアム委員会

特別協賛:真如苑(社会貢献基金)

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

休 館 日: 毎週火曜日、但し5月3日は開館、 3月18日(金)までは冬季休館

 

■2021年度ヤング・ポートフォリオ(第27回)データ

選考委員:アントワン・ダガタ、金村 修、瀬戸正人(副館長)、細江英公(館長)

作品募集期間:2021年2月15日~3月15日

応募者数:278人(世界27カ国より) 応募点数:7,285点

購入者数:21人(国内9人・海外12人 /8カ国)

     日本/アメリカ/中国/タイ/台湾/チェコ/ポーランド/ロシア

購入点数:106点(全作品を展示いたします)

 

東欧、米、アジアから日本まで、2021年度収蔵作品106点を一堂に展示
コロナ禍を越えて青年の情熱が結集

  清里フォトアートミュージアム(K・MoPA/ケイモパ、山梨県北杜市)は、3月19日(土)から5月30日(月)まで「2021年度ヤング・ポートフォリオ」展を開催いたします。

ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、K・MoPAが開館以来27年間毎年開催している、世界の35歳までの青年の作品を公募・購入・展示する文化活動です。本年も世界27カ国、278人、7,285点の応募作品のなかから厳選された、21人による106点を展示します。

2021年度YPの作品募集も、コロナ禍の困難な状況下に実施しました。フランスから選考委員として招聘したアントワン・ダガタは、来日ができませんでしたが、データによるジャッジに切り替え、無事に選考を終了しました。世界的な困難を超えてK・KMoPAに結集した若手写真家の情熱を、本展で感じていただければ幸いです。

 
 

2021年度ヤング・ポートフォリオ(以下YP2021)の見どころ

購入者の21名は1986年から1997年に生まれた世代です。その作品の多くが、世界が初めて体験したコロナ禍の最中、2019年から2020年に制作されています。金村修選考委員は「閉塞感や生き辛さを感じる作品が多かった」と全体の印象を語りました。一方で、進化を続けるデジタル技術とは対極の、フィルムでしか表現できない色彩や独特の濁りを作品に取り入れたり、フィルム自体を直接糸で縫い合わせたり、敢えて“手”を加える作品が見られたことも特徴的でした。その変化から新たなコンセプトが生まれ、発展する可能性を感じることができます。本展より5人の作品をご紹介します。

ジェシー・エグナー(アメリカ、1993)

「ぼくの心の裡にはいつもゲイと肉体の葛藤がある」と語るエグナー。不条理、ユーモア、不気味さなどを写真に捉えることが、自身の複雑なアイデンティティの揺らぎから上手く切り抜けるツールとなり、同時に作品の個性となっています。

ジェシー・エグナー Jesse EGNER(アメリカ、1993)無題〈性同一化〉シリーズより 2019
Untitled, from “Disidentifications” series    

 

ピョートル・ズビエルスキ(ポーランド、1987)

YP2012からほぼ毎年収蔵しており、作品の総数は今回のYP2021で61点となります。ポーランド国内での撮影からインド・アジア・アフリカへと目を向け、壮大なオデッセイを展開していましたが、コロナ禍に入り、再びヨーロッパにて撮影。一貫して被写体への好奇心にあふれ、偶然性や普遍性、独特の暗さと謎めいたイメージが毎年選考委員の目を惹き付けています。

ピョートル・ズビエルスキ Piotr ZBIERSKI(ポーランド、1987)無題〈木霊・翳〉シリーズより 2017    Untitled from Echoes Shades series      

 

アレクサンダー・エゴロフ(ロシア、1987)

「消費主義、失敗と欠陥の美学、現代の視覚言語に特に興味を持っている」と語るエゴロフ。今回はYP2017に次ぐ、2度目の収蔵となりました。前回はファッションを強く意識した作品でしたが、今回は、日常に埋もれるモノの魅力を強烈なストロボの光であぶり出しています。

アレクサンドル・エゴ Alexander YEGOROV(ロシア、1987)   NN号室(ビーニー帽をかぶった牛のポスター) 2016
Apt. NN (Cow wearing beanie poster)     

 

野々山裕樹(日本、1991)

入院時に、病室の机の上で、過去に撮影したモノクロフィルムを切断し、さらに透明テープや糸で縫い合わせたものがこの作品の原板となっています。フィルムの物質性を生かしながら、破壊と接合という不可逆的な行為により、複雑な印象をもたらしています。

野々山裕樹 NONOYAMA Hiroki(日本、1991)
ICU 2018

 

Ryu Ika(中国、1994)

複数のイメージをコラージュした作品を展示し、さらにその展示風景を撮影して作品化しています。また、複数の画像をデジタル処理した作品もあり、どちらも、それぞれのイメージが内包する“層”を強烈に露出させています。2021年度で3回目の購入となります。2018年度YPにおいて川田喜久治選考委員が「グロテスクな目を持った写真家」と評したRyu Ika。今回も独自の世界を力強く展開しています。

Ryu Ika(中国, 1994) The Second Seeing_Back Stage2  2020

 
 
 

YP2021作品購入作家

=過去のヤング・ポートフォリオでも作品を収蔵した作家

1. ジェシー・エグナー Jesse EGNER(USA, 1993)

無題〈性同一化〉シリーズより   2019       

Untitled, from “Disidentifications” series

2. 淵上裕太 FUCHIKAMI Yuta(Japan, 1987)

東京・上野公園 2020
Ueno Park (Tokyo)

3. 韓雪 HAN Xue (China, 1997)

They call the year the future was to arrive(未来が到来する年と人は呼ぶ)2020

4. エリザベス・ハウスト Elizabeth HAUST(Russia, 1992)

one, two, three, four…(1、2、3、4…)  2019

5. 林 朋奈 HAYASHI Tomona(Japan, 1986)

フラグメントライト 2019  Fragment light

6. シェリー・ホアン Sherry HUANG(Taiwan, 1986)

The Dark I Cannot Name (Borges)  2018
名付けようのない闇(ボルヘス)

7. 狩野 萌 KANO Megumi(Japan, 1992)

MARIA Y MEGUMI SOUTH AMERICA 2016

8. ダーシャ・カレトニコワ Dasha KARETNIKOVA (Russia, 1996)

Quarantine_E53 2020
検疫_E53

9. クー・ジャーリー KOO Jia Lih (Taiwan, 1998)

Emerging from the wilderness  2019
荒れ地に出現する

10. 久野梨沙 KUNO Lisa (Japan, 1987)

木ートレート  2019
Portrait of the Tree

11. シャクリット・リーラチュポン

Chakrit LEELACHUPONG (Thailand, 1988)

The White Wall  2016

12. 前川光平 MAEKAWA Kohei (Japan, 1993)

Yard(2021) No.4 2020

13. 七海 愛 NANAMI Chica (Japan, 1986)

somewhere, anywhere, nowhere…   2020

14. 野々山裕樹 NONOYAMA Hiroki (Japan, 1991)

ICU  2018

15. Ryu Ika (China, 1994)

A part of u/me_did you see   2019

16. 富樫達也 TOGASHI Tatsuya (Japan, 1989)

像の旅   2018
Traveling Image

17. ヤン・ブラノブセキ Jan VRANOVSKÝ (Czech Republic, 1986)

Untitled (Parallel World series, Nobeoka, 2018)
無題(“パラレル・ワールド”シリーズより、延岡、2018)

18. 山本雅紀 YAMAMOTO Masaki (Japan, 1989)

我が家2 2020
GUTS2

19. アレクサンドル・エゴロフ(ロシア、1987)

Food (white tablecloth with pie and salad)  2018
食べ物(パイとサラダののった白いテーブルクロス)

20. ピョートル・ズビエルスキ Piotr ZBIERSKI (Poland, 1987)

Untitled from Echoes Shades series  2017            

無題〈木霊・翳〉シリーズより

21. アリョーナ・ランダーロワ Alena ZHANDAROVA (Russia, 1988)

“The girl on the cupboard” from the series “The City of Brides”   2011
《戸棚の上の少女》〈花嫁たちの都市〉シリーズより

 
 

4人の選考委員の初期作品を展示

アントワン・ダガタ、金村 修、瀬戸正人(副館長)、細江英公(館長)の初期作品、すなわち“選考委員のヤング・ポートフォリオ”作品(各5点、全20点)を、同時に展示いたします。

選考風景(左から)金村修氏、瀬戸正人氏

 

選考委員略歴

アントワン・ダガタ(Antoine d’Agata, フランス、1961-)

1961年、フランス・マルセイユに生まれる。1980年頃から10年間、ヨーロッパ、中米、アメリカなど世界各地を放浪。1990年、ニューヨークの国際写真センター(ICP)にて写真を学ぶ。2001年、ニエプス賞受賞。2004年、『Insomnia (不眠症)』で第20回東川賞・海外作家賞を受賞。2004年マグナムに参画、2008年より正会員。2020年1月、コロナ禍の現状を撮影した832ページにおよぶ写真集『VIRUS』を出版し、2021年11月には1986年から2021年の間メキシコを撮影した『PRAXIS』を出版した。

金村 修(日本、1964-)

東京綜合写真専門学校在学中、新聞配達のアルバイトをしながら都市の風景を撮り始める。在学中に招待されたロッテルダム写真ビエンナーレを皮切りに内外にて発表活動を行う。1996年、世界の注目される6人の写真家のひとりに選ばれ、ニューヨーク近代美術館の「New Photography 12」に出品。日本写真協会新人賞、土門拳賞など受賞多数。近年は、カラー作品やインスタレーション、映像作品など幅広い展開を見せている。

瀬戸正人(タイ/日本、1953-)

1953年、タイ国ウドーンタニ市に生まれ、1961年、父の故郷、福島県に移り住む。1975年、東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。在学中、森山大道氏に大きな影響を受ける。森山氏の紹介で岡田正洋事務所に勤務し、コマーシャル撮影を学ぶ。深瀬昌久氏の助手を務めたのち独立。1983年「Bangkok 1983」にて初個展。1987年、自らの発表の場としてギャラリー「PLACE M」を開設し、現在も運営中。『《バンコク、ハノイ》1982-1987』で日本写真協会新人賞、〈Silent Mode〉と〈Living Room Tokyo 1989-1994〉で第21回木村伊兵衛写真賞受賞。自伝エッセイ『トオイと正人』で第12回新潮学芸賞受賞。近作に『binran』、『Cesium/Cs-137』などがある。展覧会「記憶の地図」(東京都写真美術館、2020年)に対して、2021年第37回写真の町東川賞国内作家賞を受賞。2021年4月清里フォトアートミュージアム副館長に就任。

細江英公(日本、1933-)

舞踏家・土方巽を被写体とした「鎌鼬」や、三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」(1963)など、特異な被写体との関係性から紡ぎ出された物語性の高い作品により戦後写真の転換期における中心的な存在となる。東京工芸大学名誉教授。1995年より当館初代館長。2003年、「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章したほか、2010年、文化功労者。2017年、写真家として初めて生前に旭日重光章を受章した。

©Jean-Baptiste Huyn

 
 
 

関連印刷物&YPデータベース

YP2021小冊子(A5サイズ、32ページ)

各作家の作品数点、選考委員による対談や作品へのコメントを掲載。来館者には無料で配布いたします。

YPデータベースには、過去20年余にわたる世界の若手写真家による収蔵作品画像のほか、作家略歴、アーティスト・ ステートメントを掲載しています。作家名、収蔵年、国籍などで検索することができます。 様々な調査・研究の対象としてもご利用いただければ幸いです。▶︎▶︎▶︎www.kmopa-yp.com

 

2022年度ヤング・ポートフォリオ作品募集 YP’22

<一次選考・データによる応募> 2022年1月10日〜2月10日(必着)

 *2022年度募集は終了いたしました!内外より多数のご応募、ありがとうございました。

<二次選考(一次選考通過者のみ)・プリントによる応募>

・2022年4月30日まで(必着)

[2022年度選考委員]アントワン・ダガタ、野口里佳、瀬戸正人(副館長)

[特別選考委員]細江英公(館長)

・本募集より応募料が無料となりました。

清里フォトアートミュージアムならびに若手写真家を支援する「ヤング・ポートフォリオ」(YP)は、1995年の開館以来、真如苑の社会貢献助成金により活動を行っています。この度の「2022年度ヤング・ポートフォリオ」募集にあたり、より多くの若手写真家に門戸を開くため、応募料を無料とさせていただきます。

・応募対象者は「1987年1月1日以降生まれ」の方です。

・詳細および募集要項:www.kmopa.com/yp_entry

細江英公の写真:暗箱のなかの劇場

The Photographs of Eikoh Hosoe: The Theatre Within the Dark Box

 

会期:2021年7月17日(土)~12月5日(日)

休館日:毎週火曜日(7/17~8/31は無休)

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

 

細江英公の回顧展「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」を7月17日(土)~12月5日(日)まで開催
半世紀余にわたり、独自の美学を展開し、国際的に高い評価を得て来た細江英公の代表作およびデビュー作から近作、映像作品まで約160点を展示

清里フォトアートミュージアム(K・MoPA/ケイモパ、山梨県北杜市)は、7月17日(土)から12月5日(日)まで「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」展を開催します。
当館・館長である写真家の細江英公(88)は、戦後日本の写真を切り拓く中心的な存在として、長年にわたり活躍し、世界的にも高い評価を受けている写真家です。戦後、記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、写真家は被写体との関係性によって表現をつくり出していくもの、との認識に立ち、エロスと肉体のテーマに挑んだ『おとこと女』(1961年)、三島由紀夫を被写体とした『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽と幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。本展では、これらの代表作を発表時のヴィンテージ・プリントにてご覧いただきます。また、初のデジタル撮影による立体作品〈人間ロダン〉(2008年)、1960年制作の映像作品《へそと原爆》、知られざる写真絵本など約160点を展示します。
「暗箱(あんばこ)」とは大きな箱型のカメラのことをいいます。一人の表現者が暗箱を通して繰り広げてきた半世紀にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。

細江英公の歩み
■写真家を目指すきっかけ

《ポーディちゃん》1950年

細江英公は1933年、山形県米沢市に生まれ、すぐに東京へ移ります。写真家を目指すきっかけとなったのは、18歳の時、「富士フォトコンテスト」学生の部最高賞(1951)を受賞したことでした。その受賞作が《ポーディちゃん》。細江は当時、英語を学ぶことに興味を抱き、知人の紹介で米軍居住地を訪れていました。そこで遊ぶ子どもたちを、父親から譲られた英・ソルントン・ピッカード社の中型カメラで撮影したのです。手ブレしないように蛇腹付きの重いカメラを芝生の上に置き、自分も腹這いになり、少女と同じ目線で撮影した写真が、学生の部の一位となったのです。その受賞がきっかけとなり、東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ進学します。

■時代を切り開くアーティストたちとの出会い
東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ入学と同時に、当時の既成の美術団体や権威主義を否定し、自由と独立の精神による制作を目指すデモクラート美術家協会を主催していた前衛美術家・瑛九(えいきゅう、1911-1960)と出会います。また、幅広いジャンルの美術家と交流したことは、細江の作家活動に決定的な影響を与え、原点となりました。記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、細江は自己の内面的な意識を写真として表現することを模索し続けました。

■暗箱のなかの劇場
暗箱(あんばこ)とは、大きな「箱型のカメラ」を指し、また「カメラ」はラテン語で“部屋”を意味する言葉です。18歳の細江のデビュー作となった《ポーディちゃん》を撮影したのは、上から覗き込んで撮るタイプの“暗箱”カメラでした。その世界に魅了された細江は、やがて芸術家の肖像や舞台空間などを捉え始めます。

■20代より次々に話題作を発表

《薔薇刑 作品5》1961年︎

写真家が表現すべきものは、被写体の側にすでにあるものではなく、写真家と被写体との関係性においてつくり出していくものとの認識に立ち、安保闘争に揺れる1961年に発表した『おとこと女』では、肉体を裸体のオブジェにまで解放し、二つの性が対等に拮抗するドラマを鮮烈に描きました。そして、三島由紀夫を被写体にバロック的な耽美空間を構築した『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽を被写体に東北地方の霊気と狂気の幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。

■日本から世界へ
1969年にはアメリカで初めて細江の個展が開催されました。日本では未だ写真が印刷原稿の一部と考えられていた時代に、アメリカのギャラリーでは既に作品が販売され、美術館で収蔵されていました。細江は、その事実をきっかけに、写真家自身が製作する“オリジナル・プリント”の重要性に目覚めます。以後、アメリカを中心として海外にも発表の場を広げ、ワークショップを始めとする写真教育、写真のパブリック・コレクションの形成など、社会的な活動にも注力するようになりました。1974年には、肉体を高度に抽象化して生命のエッセンスを抽出した『抱擁』を発表。また、スペインの建築家ガウディに魅せられ、細江が「魂を持つ巨大な肉体」と表現するその建築を撮影し、新たな世界を開示します。1992年からは、世紀末を迎える時代への危機感を背景とし〈ルナ・ロッサ〉を手がけ、また、2010年には初めてデジタルカメラで撮影した〈人間ロダン〉を発表しました。
本展では、1950年撮影の《ポーディちゃん》のヴィンテージ・プリントをはじめ、代表作の数々、また、知られざる写真絵本の世界など約160点を展示し、一人の表現者が繰り広げてきた半世紀以上にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。展示作品は一部を除き当館の所蔵作品です。

■清里フォトアートミュージアム館長として
清里フォトアートミュージアムは、1995年に開館し、昨年25周年を迎えました。開館25周年を記念し、初代館長である細江英公の個展を予定しておりましたが、コロナ禍のため、本年の開催となりました。
開館にあたり、細江は、清里フォトアートミュージアムの基本理念のひとつである「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」を発案しました。ヤング・ポートフォリオとは、35歳までの世界の写真家の作品を公募・選考の後に購入し、永久コレクションすることによって若手写真家を支援・育成する活動です。世界でもユニークなこの活動により写真文化に寄与して来たことが高く評価され、2004年公益社団法人日本写真協会より文化振興賞を受賞いたしました。

細江 英公・略歴
1933年、山形県米沢市に生まれ、東京で育つ。1951年、富士フォトコンテスト・学生の部最高賞受賞をきっかけに、写真家を目指す。1956年「東京のアメリカ娘」で初個展。1959年、東松照明、奈良原一高、川田喜久治らとともに写真家によるセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成、戦後写真の転換期における中心的な存在となる。海外でも数多くの展覧会が開催される一方で、国内外でワークショップをはじめとする写真教育やパブリック・コレクションの形成等、社会的な活動にも力を注いだ。2003年「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として、英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章。2007年、写真界のアカデミー賞といわれるルーシー・アワード(米)のビジョナリー賞を日本人として初受賞。2007年、旭日小綬章、2008年、毎日芸術賞を受賞。2010年にはナショナル・アーツ・クラブ(米)より、写真部門の生涯にわたる業績賞を日本人で初めて受賞。同年、文化功労者として顕彰された。2017年、旭日重光章を受章。東京工芸大学名誉教授。1995年より清里フォトアートミュージアム初代館長。

展示作品・シリーズ(制作年順)
《ポーディちゃん》他初期作品 1950-54年
〈おとこと女〉1959-60年
《へそと原爆》(映像作品 脚本・監督・撮影・編集)1960年
〈たかちゃんとぼく〉(写真絵本)1960年
〈おかあさんのばか〉(写真絵本)1964年
〈抱擁〉1960-70年
〈大野一雄〉1960-1997年
〈薔薇刑〉1961-62年
〈鎌鼬〉1965-68年
〈知人の肖像〉1965-72年
〈シモン・私風景〉1970-71年
〈ガウディの宇宙〉1977-84年
〈ルナ・ロッサ〉1992-96年
〈人間ロダン〉2008-10年
特別展示横尾忠則《土方巽と日本人 - 肉体の叛乱》ポスター 1968年
英・ソルントン・ピッカード社カメラ「ジュニア・スペシャル」(1950年、細江が《ポーディちゃん》を撮影したカメラと同型)

 
会期中の入館無料デー(どなたでも無料でご入館いただけます)●11月8日(月)八ヶ岳の日
●11月20日(土)山梨県民の日
 

1. 《おとこと女 作品1》1960年

 

2. 《おとこと女 作品20》1960年

 

3. 《鎌鼬 作品8》1965年

 

4. 《鎌鼬 作品17》1965年

 

5. 《抱擁 作品52》1970年

 

6. 《薔薇刑 作品32》1961年

 

7. 《薔薇刑 作品5》1961年

 

8. 《薔薇刑 作品2》1962年

 

9. 〈ガウディの宇宙〉より《サグラダ・ファミリア I》1977年

 

10. 〈シモン・私風景〉より《隅田川吾妻橋》1971年

 

11. 〈知人の肖像〉より《澁澤龍彦》1965年

 

12. 〈ルナ・ロッサ〉より《ひまわりの歌》1992年

 

13. 《ポーディちゃん》1950年

 

14. 写真絵本『たかちゃんとぼく』より 1960年

 

15. 写真画帖「人間ロダン」より 1998年

 

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