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細江英公の写真:暗箱のなかの劇場

The Photographs of Eikoh Hosoe: The Theatre Within the Dark Box

 

会期:2021年7月17日(土)~12月5日(日)

休館日:毎週火曜日(7/17~8/31は無休)

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

 

細江英公の回顧展「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」を7月17日(土)~12月5日(日)まで開催
半世紀余にわたり、独自の美学を展開し、国際的に高い評価を得て来た細江英公の代表作およびデビュー作から近作、映像作品まで約160点を展示

清里フォトアートミュージアム(K・MoPA/ケイモパ、山梨県北杜市)は、7月17日(土)から12月5日(日)まで「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」展を開催します。
当館・館長である写真家の細江英公(88)は、戦後日本の写真を切り拓く中心的な存在として、長年にわたり活躍し、世界的にも高い評価を受けている写真家です。戦後、記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、写真家は被写体との関係性によって表現をつくり出していくもの、との認識に立ち、エロスと肉体のテーマに挑んだ『おとこと女』(1961年)、三島由紀夫を被写体とした『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽と幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。本展では、これらの代表作を発表時のヴィンテージ・プリントにてご覧いただきます。また、初のデジタル撮影による立体作品〈人間ロダン〉(2008年)、1960年制作の映像作品《へそと原爆》、知られざる写真絵本など約160点を展示します。
「暗箱(あんばこ)」とは大きな箱型のカメラのことをいいます。一人の表現者が暗箱を通して繰り広げてきた半世紀にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。

細江英公の歩み
■写真家を目指すきっかけ

《ポーディちゃん》1950年

細江英公は1933年、山形県米沢市に生まれ、すぐに東京へ移ります。写真家を目指すきっかけとなったのは、18歳の時、「富士フォトコンテスト」学生の部最高賞(1951)を受賞したことでした。その受賞作が《ポーディちゃん》。細江は当時、英語を学ぶことに興味を抱き、知人の紹介で米軍居住地を訪れていました。そこで遊ぶ子どもたちを、父親から譲られた英・ソルントン・ピッカード社の中型カメラで撮影したのです。手ブレしないように蛇腹付きの重いカメラを芝生の上に置き、自分も腹這いになり、少女と同じ目線で撮影した写真が、学生の部の一位となったのです。その受賞がきっかけとなり、東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ進学します。

■時代を切り開くアーティストたちとの出会い
東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ入学と同時に、当時の既成の美術団体や権威主義を否定し、自由と独立の精神による制作を目指すデモクラート美術家協会を主催していた前衛美術家・瑛九(えいきゅう、1911-1960)と出会います。また、幅広いジャンルの美術家と交流したことは、細江の作家活動に決定的な影響を与え、原点となりました。記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、細江は自己の内面的な意識を写真として表現することを模索し続けました。

■暗箱のなかの劇場
暗箱(あんばこ)とは、大きな「箱型のカメラ」を指し、また「カメラ」はラテン語で“部屋”を意味する言葉です。18歳の細江のデビュー作となった《ポーディちゃん》を撮影したのは、上から覗き込んで撮るタイプの“暗箱”カメラでした。その世界に魅了された細江は、やがて芸術家の肖像や舞台空間などを捉え始めます。

■20代より次々に話題作を発表

《薔薇刑 作品5》1961年︎

写真家が表現すべきものは、被写体の側にすでにあるものではなく、写真家と被写体との関係性においてつくり出していくものとの認識に立ち、安保闘争に揺れる1961年に発表した『おとこと女』では、肉体を裸体のオブジェにまで解放し、二つの性が対等に拮抗するドラマを鮮烈に描きました。そして、三島由紀夫を被写体にバロック的な耽美空間を構築した『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽を被写体に東北地方の霊気と狂気の幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。

■日本から世界へ
1969年にはアメリカで初めて細江の個展が開催されました。日本では未だ写真が印刷原稿の一部と考えられていた時代に、アメリカのギャラリーでは既に作品が販売され、美術館で収蔵されていました。細江は、その事実をきっかけに、写真家自身が製作する“オリジナル・プリント”の重要性に目覚めます。以後、アメリカを中心として海外にも発表の場を広げ、ワークショップを始めとする写真教育、写真のパブリック・コレクションの形成など、社会的な活動にも注力するようになりました。1974年には、肉体を高度に抽象化して生命のエッセンスを抽出した『抱擁』を発表。また、スペインの建築家ガウディに魅せられ、細江が「魂を持つ巨大な肉体」と表現するその建築を撮影し、新たな世界を開示します。1992年からは、世紀末を迎える時代への危機感を背景とし〈ルナ・ロッサ〉を手がけ、また、2010年には初めてデジタルカメラで撮影した〈人間ロダン〉を発表しました。
本展では、1950年撮影の《ポーディちゃん》のヴィンテージ・プリントをはじめ、代表作の数々、また、知られざる写真絵本の世界など約160点を展示し、一人の表現者が繰り広げてきた半世紀以上にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。展示作品は一部を除き当館の所蔵作品です。

■清里フォトアートミュージアム館長として
清里フォトアートミュージアムは、1995年に開館し、昨年25周年を迎えました。開館25周年を記念し、初代館長である細江英公の個展を予定しておりましたが、コロナ禍のため、本年の開催となりました。
開館にあたり、細江は、清里フォトアートミュージアムの基本理念のひとつである「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」を発案しました。ヤング・ポートフォリオとは、35歳までの世界の写真家の作品を公募・選考の後に購入し、永久コレクションすることによって若手写真家を支援・育成する活動です。世界でもユニークなこの活動により写真文化に寄与して来たことが高く評価され、2004年公益社団法人日本写真協会より文化振興賞を受賞いたしました。

細江 英公・略歴
1933年、山形県米沢市に生まれ、東京で育つ。1951年、富士フォトコンテスト・学生の部最高賞受賞をきっかけに、写真家を目指す。1956年「東京のアメリカ娘」で初個展。1959年、東松照明、奈良原一高、川田喜久治らとともに写真家によるセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成、戦後写真の転換期における中心的な存在となる。海外でも数多くの展覧会が開催される一方で、国内外でワークショップをはじめとする写真教育やパブリック・コレクションの形成等、社会的な活動にも力を注いだ。2003年「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として、英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章。2007年、写真界のアカデミー賞といわれるルーシー・アワード(米)のビジョナリー賞を日本人として初受賞。2007年、旭日小綬章、2008年、毎日芸術賞を受賞。2010年にはナショナル・アーツ・クラブ(米)より、写真部門の生涯にわたる業績賞を日本人で初めて受賞。同年、文化功労者として顕彰された。2017年、旭日重光章を受章。東京工芸大学名誉教授。1995年より清里フォトアートミュージアム初代館長。

展示作品・シリーズ(制作年順)
《ポーディちゃん》他初期作品 1950-54年
〈おとこと女〉1959-60年
《へそと原爆》(映像作品 脚本・監督・撮影・編集)1960年
〈たかちゃんとぼく〉(写真絵本)1960年
〈おかあさんのばか〉(写真絵本)1964年
〈抱擁〉1960-70年
〈大野一雄〉1960-1997年
〈薔薇刑〉1961-62年
〈鎌鼬〉1965-68年
〈知人の肖像〉1965-72年
〈シモン・私風景〉1970-71年
〈ガウディの宇宙〉1977-84年
〈ルナ・ロッサ〉1992-96年
〈人間ロダン〉2008-10年
特別展示横尾忠則《土方巽と日本人 - 肉体の叛乱》ポスター 1968年
英・ソルントン・ピッカード社カメラ「ジュニア・スペシャル」(1950年、細江が《ポーディちゃん》を撮影したカメラと同型)

 
会期中の入館無料デー(どなたでも無料でご入館いただけます)●11月8日(月)八ヶ岳の日
●11月20日(土)山梨県民の日
 

1. 《おとこと女 作品1》1960年

 

2. 《おとこと女 作品20》1960年

 

3. 《鎌鼬 作品8》1965年

 

4. 《鎌鼬 作品17》1965年

 

5. 《抱擁 作品52》1970年

 

6. 《薔薇刑 作品32》1961年

 

7. 《薔薇刑 作品5》1961年

 

8. 《薔薇刑 作品2》1962年

 

9. 〈ガウディの宇宙〉より《サグラダ・ファミリア I》1977年

 

10. 〈シモン・私風景〉より《隅田川吾妻橋》1971年

 

11. 〈知人の肖像〉より《澁澤龍彦》1965年

 

12. 〈ルナ・ロッサ〉より《ひまわりの歌》1992年

 

13. 《ポーディちゃん》1950年

 

14. 写真絵本『たかちゃんとぼく』より 1960年

 

15. 写真画帖「人間ロダン」より 1998年

 

2020年度ヤング・ポートフォリオ展

Young Portfolio Acquisitions 2020

会期:2021年3月20日(土)〜6月13日(日)

休館日:毎週火曜日、但し5月4日は開館、3月19日(金)までは冬季休館

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

■2020年度ヤング・ポートフォリオ(第26回)データ
選考委員:都築響一、金村 修、細江英公(館長)
作品募集期間:2020年4月15日~5月31日
応募者数:161人(世界16カ国より) 応募点数:3,876点
購入者数:18人(国内6人・海外12人 /6カ国)
     日本/マレーシア/中国/韓国/台湾/ポーランド/ロシア
購入点数:143点(全作品を展示いたします)
●1995年度から2020年度までに作品を収蔵した作家の総数:816人(46カ国)

 
 

「2020年度ヤング・ポートフォリオ」を年3月20日(土) ~ 6月13日(日)まで開催
東欧からアジア、日本まで、2020年度収蔵作品143点を一堂に展示
コロナ禍を越えて青年の情熱が結集

ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、当館の理念の一つであり、「写真を通して世界の若者を支援する」ことを目的とする文化貢献活動です。毎年、世界の35歳までの若手写真家の作品を公募し、第一線の写真家による厳正な選考を経て、 若手写真家の「原点」となる貴重な初期作品を購入・収蔵し、後世に残す活動です。 選考された作品を、美術館が永久保存するという、コンテストと異なる性格を持つ本活動は、世界でも他に類をみないものです。(2004年、公益社団法人・日本写真協会より文化振興賞を受賞)
YPは、当館開館の1995年度より継続して行っており、2020年度は第26回となります。これまで世界77カ国からのべ10,681人より約14万点の作品が応募され、そのなかから、46カ国816人による6,000点を超える作品を購入いたしました。

■なぜ35歳なのか ー 芸術における青年期の意義を問う
芸術家は、青年期に強い意志と情熱をもって試行錯誤を重ねることにより、才能・資質が高められ、作品のクオリティが磨かれます。研鑽を積んだ作家の多くは、おのずと30代には自己のスタイルを確立し、代表作となる作品を生みだしています。青年の原点とも言うべき作品が、表現の領域を開拓し、歴史を築いてきました。そこには永遠の輝きがあります。

■YPとコンテストの違いは?
作家の世界観や芸術性を表現するポートフォリオ(作品集)となるように、 1枚だけでなく、複数の作品を収蔵することが特徴です。また、通常コンテストの入賞は1度限りですが、YPは、35歳まで何度でも応募することができます。20代から35歳まで何度も収蔵することができれば、作家の成長を見守り、応援することが可能となるからです。

■写真家の成長とともに世界へ伸展するYP
これまで作品を収蔵してきた写真家のなかには、めざましい成長をとげ、土門拳賞や林忠彦賞、木村伊兵衛賞など内外の様々な賞を受賞する写真家が誕生し、また東京造形大学、大阪芸術大学、九州産業大学などで、後進の育成にあたるなど、多くの優秀な写真家が誕生しています。また、当館の開館20周年を迎えた2014年以降、積極的に巡回展を開催しています。
2014年:東京都写真美術館にて開館20周年記念展「原点を、永遠に。」展を開催。世界34カ国の197人(YPのみ)の作品を展示し、世界を俯瞰しながら、写真表現の多様さを展望する展覧会(約500点)を行いました。
2018年:芸術における青年期の意義を問うという理念を明確に表現するべく、再び東京都写真美術館において、「原点を、永遠に。ー2018ー」を開催いたしました。同展は、当館が収蔵する全写真家の青年期(35歳まで)の写真のみを展示したものです。ヤング・ポートフォリオの作品だけでなく、写真史における重要な作品を多数含むこの展覧会は、一部再構成のうえ、2018年6月、国立台湾美術館に巡回。同館の開館30周年記念特別展「起始・永遠」として開催され、成功裏に終了いたしました。
2021年:2021年4月~11月、米・カリフォルニア州、サンディエゴの写真美術館Museum of Photographic Artsに巡回します。「Beginnings, Forever」と題し、19世紀末の作品から21世紀のYP作品まで153点を展示いたします。

■現役写真家が作品を選考
作品選考は、当館館長のほか、YPの理念にご賛同いただいた現役写真家2名が行います。それぞれの写真家が手がける写真のジャンルは多様ですが、表現意欲の強さ、視点の明確さなどが基準となるため、担当する選考委員によって何らかの“傾向”が生まれるということはありません。若い才能に未来を託す思いで選考し、3名の選考委員全員が合意した作品を収蔵します。特に近年応募の多いロシア、ポーランドなど東欧の国々、アジアでは中国、韓国、台湾などです。世界のさまざまな地域の特徴、多様な芸術性、そして、世界の若者が捉えた<いま>を俯瞰して見ることができます。

 
 

■2020年度ヤング・ポートフォリオ(以下YP2020)の見どころ
YP2020の作品群が制作されたのは、コロナ禍以前ですが、 ヴァーチャルなモノや世界への距離感や向き合い方が、これまでとは明らかに異なる作品が多く見られます。 私たちは日々、AIによるヴァーチャル技術や、大量の写真や映像を情報源として生活しています。その一方で、目に見えない社会的なプレッシャーのなかに生きる個々の人間の心の拠り所を考察しようとする視点が多く見られます。写真家の身体感覚を通して<いま>を考える機会となれば幸いです。

 

●“ヴァーチャル”と生きる:苅部太郎、アガタ・ヴィオチョレック(ポーランド)

苅部太郎《Saori》
“Saori“がシリコン製のラブドールであることを除けば、被写体の男性は、人間の男女と全く変わらない生活を送っています。男性には家庭がありますが、10年前からSaoriとの生活を始め、今ではSaoriが「人生を豊かにしてくれる理想の女性」となっているとのこと。
「ヴァーチャル」とは「仮想」と思われる場合が多いのですが、本来は「事実上の」「実質的な」という意味を持つ言葉です。被写体の男性は、Saoriから「生きた心」を感じる生活を送っており、Saoriの存在は、男性が生きるうえにおいて、不可欠なものとなっているのです。写真家は、Saoriとのヴァーチャルな関係に“生きる”男性の日々をあくまでも優しく捉えています。

アガタ・ヴィオチョレック《模擬妊娠実験》他
ジェンダーと性的マイノリティに関する変化をテーマとするヴィオチョレク。本シリーズは、近年の医学とハイテク産業の交差を見据えようとするものです。ヴィオチョレクが注目したのは、「人工知能、拡張現実、ハイテク科学を採用することにより、医学の研究や学びは、仮想化され、シュミレーションや仮想経験に依拠して行くのではないか。」という現状です。ヴァーチャルから知識を得ようとする傾向はむしろ強まっているのかもしれません。
人間と非人間の“境界”とは、生命の神秘や真の幸福とは何か?二人の写真家は、いくつもの根源的な問いを投げかけています。

苅部太郎《Saori》2016年(全9点)

アガタ・ヴィオチョレック《模擬妊娠実験》2019年(全7点)

 

●進化する色彩の世界:大竹彩子(日本)

大竹彩子《MITAKA6537 MURAKAMI5572》2019年

2020年度の購入者は1985年から1994年に生まれ、デジタルカメラで育ち、フォトジェニックなモノを捉える感覚が自然に培われた世代です。なかでも高いヴィジュアルセンスと美意識が充満した作品が大竹彩子の《 MITAKA6537 / MURAKAMI5572》などのシリーズでしょう。ZINEの見開きを想定して2枚のイメージをレイアウトした作品10点を収蔵いたしました。
作家の好奇心が触れた色と断片を組み合わせ、軽やかで大胆な表現領域を提示しています。
(ZINE/ジンとは、 リトルプレスとも呼ばれ、小部数で発行する自主制作の出版物。Magazineが語源)

 

●無名の路上芸術 ”ヤードアート“:前川光平(日本)

前川光平《Yard》2019年(全14点)

ピザの配達をしながら、民家の“庭”に関心を抱いた前川光平。東京・埼玉郊外の近隣の人だけが通る裏道で、また庭や畑などの私有地で、住人の独自の趣向で様々な日用品や装飾品をディスプレイした光景を、3年あまり観察して撮影しています。装飾の目的は近隣の子供に喜んでもらうことなど、あくまでも自分の趣味という人が多いとのこと。前川は一見雑然と見えるけれど、実はかなり緻密に造り上げられたこの趣向の庭(ヤード)を“ヤードアート”呼びます。日本人には馴染みの光景でありながら、これまで作品化されることのなかったヤードアートの世界。この背景には日本人の自然観やモノへの観念との関わりがあるのかもしれません。本シリーズは、本展が初公開となります。

 

●社会的意味合いから見る“女性”や“母性”をテーマに:ルー・ユーファン(中国)、アリョーナ・ランダーロワ(ロシア)

中国ではこれまで二千万人が美容整形手術を受けており、その数は増え続けています。ルー・ユーファンは、美容整形外科で「美顔デザイナー」から提案された手術プランを作品化したシリーズ〈美容外科手術診断〉の他に、手術を受けた一般女性の顔写真を、整形前の顔にパソコン内で写真家が復元し、その顔にナイフで写真に切り傷を入れた作品〈ビフォー&アフター〉を制作しています。写真家は、彼女たちへの“思い”を、その“切り傷”によって表現し、ポートレイト化した作品です。

アリョーナ・ランダーロワは、過去のYPにおいて、セルフポートレイトのシリーズを収蔵してきたロシアの作家です。多くは顔を見せないセルフポートレイトでしたが、本展では新シリーズ〈秘められた母性〉を展示いたします。
ランダーロワは、母親の役割について特に教わらず、産後うつになる女性が多いのは、「子供を産んだ途端に女性は情報と感情の真空状態に置かれるため」と言います。
多くの女性が幸せな母親という理想像と現実との間には大きな隔たりがあると感じているのでしょう。写真黎明期の19世紀ヴィクトリア時代には、顔を隠した母親と赤ん坊の写真が多く残されています。長い撮影の間、子供がじっと座っているように、母親の顔はヴェールに隠されているのです。現代においてもなお閉塞感に苦しむ女性たちへ向けたランダーロワの眼差しが、柔らかな空気感とユーモラスな表現によって描かれています。

ルー・ユーファン 《ビフォー&アフター4(わたしを綺麗にして)》2020年

《カーチャ》〈秘められた母性〉シリーズより、2019年

 
 

■YP2020作品購入作家
★は過去にもヤング・ポートフォリオで作品を収蔵した作家

Photographers whose work was acquired for the YP2019 (in alphabetical order)

1. 淵上裕太 FUCHIKAMI Yuta(Japan、1987)

《【池袋・プチ】と検索し出会った、りあさん 池袋2020》2020
‘Ria, who ‘Ikebukuro Puchi’ met through a computer search. Ikebukuro 2020

 

2. 井上麻由美 INOUE Mayumi(Japan、1988)

《癌と髪 -Guy #1》2019
Cancer and Hair -Guy #1, 2019

 

3. 苅部太郎 KARIBE Taro(Japan、1988)

《Saori》2016
Saori, 2016

 

4. キム・ギュンユン KIM Kyoung Yoon(Korea、1989)

《タルドンネ》2017
DALDONGNE, 2017

 

5. キム・ネーヨン KIM Nayoen(Korea、1994)

《肉体の地形図_#09》2019
body topographic map_#09, 2019

 

6. クウォン・ロックァン KWON Rokhwan(Korea、1993)

《サミット、#018、2018》
The Summit, #018, 2018

 

7. リー・イーチェン LEE Yi-Chen(Taiwan、1988)

《拡大》2020
Magnified, 2020

 

8. リ・ユーチー LI Yu-Chi(Taiwan、1986)

Raw #02, 2019

 

9. ルー・イーシン LU Lixing(China、1993)

《外出#3》2020
Outing #3, 2020

 

10. ルー・ユーファン LU Yufan(China、1991)

《ビフォー&アフター4(わたしを綺麗にして)》2020
Before & After 4 (Make Me Beautiful), 2020

 

11. 前川光平 MAEKAWA Kohei(Japan、1993)

《Yard》2019

 

12. 七海 愛 NANAMI Chica(Japan、1986)

《おやすみうた from yellow》2013
Lullaby, 2013

 

13. 大竹彩子 OTAKE Saiko(Japan、1988)

《MITAKA6494 / BASEL8375》2019

 

14. ポン・イーハン PENG Yi-Hang(Taiwan、1992)

Picnic, 2018

 

15. ミハル・シャレク Michal SIAREK(Poland、1991)

《マケドニア闘争博物館に雇われた若者
マケドニア闘争博物館は国家としてのマケドニアが世界史から忘れられている現状を正すことを目的とする。毎年の夏、博物館は若者を雇い、マケドニア史上の様々な時代衣裳を着けさせる。青年たちに少し話を聞いてみたところ、自分の扮装がローマ時代の第五マケドニア軍団の兵士か、ピリッポス 2世の時代の歩兵か、あるいは両者のいりまじる人気の兵隊かはどうでもよく、つまるところ、夏の間のアルバイトにすぎないのだった。スコピエにて》 
〈アレクサンドロス〉シリーズより、2013
A boy hired by The Museum of the Macedonian Struggle: The Museum of the Macedonian Struggle was an institution that sought to redress the historical neglect of the Macedonian nation. Every summer, it hired youngsters who dressed in costumes from different periods of Macedonian history. A brief conversation concludes that the teenagers have no interest in whether they are role- playing the Roman V Legio Macedonica, soldiers in a Macedonian phalanx or a popular mixture of both — after all, it’s a summer job. Skopje, 2013
From series “Alexander”

 

16. アガタ・ヴィオチョレック Agata WIECZOREK(Poland、1992)

《自動人形》2019
Automaton, 2019

 

17.  ピョートル・ズビエルスキ Piotr ZBIERSKI(ポーランド、1987)

《無題》〈木霊・翳〉シリーズより、2018
Untitled from Echoes Shades series, 2018

 

18. アリョーナ・ランダーロワ Alena ZHANDAROVA(Russia、1988)

《小球体のついたセルフ・ポートレート》 〈三角味のピュレー〉シリーズより、2013
“Self-portrait with globules” from the series “Puree with a taste of Triangles”, 2013

 
 
 

【同時展示】3人の選考委員の初期作品

3人の選考委員の初期作品、すなわち“選考委員のヤング・ポートフォリオ”作品(全14点)を同時に展示いたします。

選考風景。左から2020年度YP選考委員・金村 修氏、都築響一氏、細江英公館長

 

都築響一(日本、1956-)
本展出品作品《TOKYO STYLE》1993年
「POPEYE」「BRUTUS」誌などで雑誌編集者として活躍後、1993年、東京の人々の生活空間捉えた『TOKYO STYLE』を発表。写真家としての活動を始める。日本各地に点在する秘宝館や奇妙な新興名所を撮影した『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛賞受賞。暴走族、デコトラ、パワフルな高齢者など無名の人々への取材を通して、現代の日本を描く。2012年からは、他のメディアとは全く異なる視点から、好奇心の赴くままに取材し、発信する有料メールマガジン『ROADSIDERS’ Weekly』を刊行中。

 


金村 修(日本、1964-)
本展出品作品《Today’s Japan/本日の日本》1995年
東京綜合写真専門学校在学中、新聞配達のアルバイトをしながら都市の風景を撮り始める。在学中に招待されたロッテルダム写真ビエンナーレを皮切りに内外にて発表活動を行う。1996年、世界の注目される6人の写真家のひとりに選ばれ、ニューヨーク近代美術館の「New Photography 12」に出品。日本写真協会新人賞、土門拳賞など受賞多数。近年は、カラー作品やインスタレーション、映像作品など幅広い展開を見せている。

 


細江英公(日本、1933-)
本展出品作品《おとこと女》1960年
舞踏家・土方巽を被写体とした「鎌鼬」や、三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」(1963)など、特異な被写体との関係性から紡ぎ出された物語性の高い作品により戦後写真の転換期における中心的な存在となる。東京工芸大学名誉教授。1995年より当館初代館長。2003年、「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章したほか、2010年、文化功労者。2017年、写真家として初めて生前に旭日重光章を受章した。

 
 
 
 

2021年度ヤング・ポートフォリオ(第27回)

2021年度選考委員:瀬戸正人、アントワン・ダガタ、金村 修、細江英公(館長)

【重要なお知らせ】応募方法が大きく変わります!
★一次はデータ選考、二次はプリント選考
★応募時期が例年より早まります。2月15日から3月15日必着

①一次選考「画像データ・エントリー」:2月15日~3月15日必着

②一次選考の結果発表:4月10日頃
・一次選考通過者名の作品1点と作家名を、当館ウエブサイト内YPサイトにて公開します。

③二次選考「プリント・エントリー」:5月31日必着
●Web登録受付期間 & 応募作品受付期間:2021年2月15日~3月15日

応募要項の概要
・応募資格は35歳までを上限とします。(1986年1月1日以降に生まれた方)
・既発表・未発表を問いません。他のコンテストへの応募作品・受賞作品も応募可能です。
・作品の表現、技法は問いませんが、永久コレクションのため、長期保存が可能な技法であること。
・ご応募は最大50点まで受け付けます。
・選考された作品は、1点につき3万円以上で購入します。

*詳細および募集要項は www.kmopa.com/yp_entry

 

【2021年度選考委員】 金村 修氏、細江英公(館長) の略歴は【同時展示】をご覧ください


瀬戸正人(タイ/日本、1953-)
1953年、タイ国ウドーンタニ市に生まれ、1961年、父の故郷、福島県に移り住む。1975年、東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。在学中、森山大道氏に大きな影響を受ける。森山氏の紹介で岡田正洋事務所に勤務し、コマーシャル撮影を学ぶ。深瀬昌久氏の助手を務めたのち独立。1983年、「Bangkok 1983」にて初個展。1987年、自らの発表の場としてギャラリー「PLACE M」を開設し、現在も運営中。「夜のワークショップ」を開催し、後進の指導にあたっている。『《バンコク、ハノイ》1982-1987』で日本写真協会新人賞、〈Silent Mode〉と〈Living Room Tokyo 1989-1994〉で第21回木村伊兵衛写真賞受賞。自伝エッセイ『トオイと正人』で第12回新潮学芸賞受賞。近作に『binran』、『Cesium/Cs-137』などがある。

 

ⒸGilles Pandel

アントワン・ダガタ(Antoine d’Agata, フランス、1961-)
1961年、フランス・マルセイユに生まれる。1980年頃から10年間、ヨーロッパ、中米、アメリカなど世界各地を放浪。1990年、ニューヨークの国際写真センター(ICP)にて写真を学び、ラリー・クラークやナン・ゴールディンのワークショップに参加。1991年、マグナムのニューヨークオフィスにて久保田博二らのアシスタントを務める。1993年、フランスに帰国後、家庭を持ち、生活のため4年程写真を離れるが、その後活動を再開し、展覧会、写真集の出版など活発に作家活動を行っている。2001年、ニエプス賞受賞。2004年、『Insomnia (不眠症)』で第20回東川賞・海外作家賞を受賞。2004年マグナムに参画、2008年より正会員。現在は、コロナ禍の現状をフランス、スペイン、メキシコ、トルコ、オーストリアなどで撮影中。

 
当館ウエブサイト内「動画のページ」にてダガタ氏がYP応募を呼びかける動画がご覧いただけます。
https://www.kmopa.com/?cat=23

 
 
 
 

【関連印刷物&YPデータベース】

❶YP2020小冊子(A5サイズ、32ページ)
各作家の作品数点、選考委員による対談や作品へのコメントを掲載。来館者には無料で配布いたします。

❷YPデータベースには、過去20年余にわたる世界の若手写真家による収蔵作品画像のほか、作家略歴、アーティスト・ ステートメントを掲載しています。作家名、収蔵年、国籍などで検索することができます。 様々な調査・研究の対象としてもご利用いただければ幸いです。
https://kmopa-yp.com

 

【会期中のイベント】

YP2019+YP2020公開レセプション &  アーティスト・トーク
講評:川田喜久治、都築響一、金村 修、細江英公(館長)

YP2018(一昨年)の公開レセプションでの集合写真

自作についてスピーチするトミモとあきな(日本)

 
日程・詳細は当館ウエブサイトにて発表いたします。
参加料:入館料のみ / 定員なし / 要予約 / どなたでもご参加いただけます
会場:清里フォトアートミュージアム・エントランスホール

 

【2021年の展示】

「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」
会期:2021年7月17日(土)〜12月5日(日)(予定)

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

入館料:一般800円 学生600円
高校生以下無料 障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
友の会会員は無料

9月2日よりロバート・フランク作品11点を特別展示

 
K・MoPAは、25年に渡り、写真家の「原点」となる初期作品を収蔵し、青年期の作品の意義と素晴らしさを世に問う活動をしてまいりました。

今回は、当館がもっとも力を注ぐ「ヤング・ポートフォリオ」展に併せて、9月2日(水)~10月5日(月)まで、ロバート・フランクの初期作品(当館蔵)を特別展示いたします。

ロバート・フランクは、世界で最も重要な写真家の一人として、多くの同世代および後進の写真家に影響を与え、世代を問わず熱烈に支持されている写真家です。1947年、フランクは、23歳でスイスからアメリカ・ニューヨークへ移住し、写真家としてのキャリアをスタートさせます。その後、約15年間集中的に写真を撮影しました。そして生地スイスからニューヨークへ渡り、南米やヨーロッパへの撮影旅行を重ねた後、1958年に写真集『アメリカ人(The Americans)』を発表。『アメリカ人』は、かつてない衝撃をもたらし、20世紀の写真を大きく変貌させるきっかけとなりました。本展では、ニューヨークでファッション誌の仕事をしながら撮影していた当時の作品、そして『アメリカ人』掲載の作品など11点を展示いたします。

昨年9月9日に94歳で世を去ったフランクの若き日の作品(当館蔵)を、ぜひご覧ください。

 

2019年度ヤング・ポートフォリオ展/会期:11月8日(日)まで
特別展示:ロバート・フランク初期作品(11点)/会期:9月2日(水)~10月5日(月)

休館日:火曜日
★9/22(火・祝)と11/3日(火・祝)は開館

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)

 
 
 

2019年度ヤング・ポートフォリオ / Young Portfolio Acquisitions 2019

 
会期:2020年7月1日(水)〜11月8日(日

休館日:8月は無休 / 7、9、10、11月は毎週火曜
★9/22(火・祝)と11/3日(火・祝)は開館

開館時間: 10:00~17:00(入館は16:30まで)
但し8月は10:00~18:00(入館は17:30まで)

※細江英公展は来年に延期いたします。

 
清里フォトアートミュージアムでは、2020年7月1日(水)より11月8日(日)まで「2019年度ヤング・ポートフォリオ」展を開催いたします。
ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、当館の理念の一つであり、「写真を通して世界の若者を支援する」ことを目的とする文化貢献活動です。毎年、世界の35歳までの若手写真家の作品を公募し、第一線の写真家による厳正な選考を経て、 若手写真家の「原点」となる貴重な初期作品を購入・収蔵し、後世に残す活動です。 選考された作品を、美術館が永久保存するという、コンテストと異なる性格を持つ本活動は、世界でも他に類をみないものです。(2004年、公益社団法人・日本写真協会より文化振興賞を受賞)
YPは、当館開館の1995年度より継続して行っており、2019年度は第25回となります。これまで世界77カ国から10,508人、137,252点の作品が応募され、そのなかから、46カ国の802人による6,241点の作品を購入いたしました。

■なぜ35歳なのか ー 芸術における青年期の意義を問う
芸術家は、青年期に強い意志と情熱をもって試行錯誤を重ねることにより、才能・資質が高められ、作品のクオリティが磨かれます。研鑽を積んだ作家の多くは、おのずと30代には自己のスタイルを確立し、代表作となる作品を生みだしています。青年の原点とも言うべき作品が、表現の領域を開拓し、歴史を築いてきました。そこには永遠の輝きがあります。

■YPとコンテストの違いは?
作家の世界観や芸術性を表現するポートフォリオ(作品集)となるように、 1枚だけでなく、複数の作品を収蔵することが特徴です。また、通常コンテストの入賞は1度限りですが、YPは、35歳まで何度でも応募することができます。20代から35歳まで何度も収蔵することができれば、作家の成長を見守り、応援することが可能となるからです。

■写真家の成長とともに世界へ伸展するYP
これまで作品を収蔵してきた写真家のなかには、めざましい成長をとげ、土門拳賞や林忠彦賞、木村伊兵衛賞など内外の様々な賞を受賞する写真家が誕生し、また東京造形大学、大阪芸術大学、九州産業大学などで、後進の育成にあたるなど、多くの優秀な写真家が誕生しています。
2014年には、東京都写真美術館にて清里フォトアートミュージアム開館20周年記念展「原点を、永遠に。」展を開催。世界34カ国の197人(YPのみ)による約500点を展示し、世界を俯瞰しながら、写真表現の多様さを展望する展覧会を行いました。さらに、芸術における青年期の意義を問うという理念を明確に表現するべく、2018年、再び東京都写真美術館において、「原点を、永遠に。ー2018ー」を開催いたしました。同展は、当館が収蔵する全写真家の青年期(35歳まで)の写真のみを展示したもので、会期前半は<歴史篇>として撮影年代順(1898年〜2017年)に展示、後半は<作家篇>として、作家名をABC順に展示しました。ヤング・ポートフォリオの作品だけでなく、写真史における重要な作品を多数含むこの展覧会は、一部再構成のうえ、2018年6月、国立台湾美術館に巡回。同館の開館30周年記念特別展「起始・永遠」として開催され、成功裏に終了いたしました。今後も海外への巡回展を企画してまいります。

■YPの見どころ
作品選考は、当館館長のほか、YPの理念にご賛同いただいた現役写真家2名が行います。それぞれの写真家が手がける写真のジャンルは多様ですが、表現意欲の強さ、視点の明確さなどが基準となるため、担当する選考委員によって何らかの“傾向”が生まれるということはありません。若い才能に未来を託す思いで選考し、3名の選考委員全員が合意した作品を収蔵します。特に近年応募の多いロシア、ポーランドなど東欧の国々、アジアでは中国、韓国、台湾、バングラデシュなどです。世界のさまざまな地域の特徴、多様な芸術性、そして、世界の若者が捉えた<いま>を俯瞰して見ることができます。

 

■2019年度ヤング・ポートフォリオ(第25回)データ 
選考委員:川田喜久治、都築響一、細江英公(館長)
作品募集期間:2019年4月15日〜5月15日        
応募者数:152人(世界22カ国より) 応募点数:3,848点        
購入者数:22人(国内10人・海外12人 / 8カ国・二重国籍を含む)
     日本/マレーシア/ベラルーシ/中国/韓国/台湾/ポーランド/ロシア
購入点数:136点(全作品を展示いたします)
●1995年度から2019年度までに作品を収蔵した作家の総数:802人(46カ国)6,241点

 

■2019年度ヤング・ポートフォリオ(以下YP2019)の見どころ
●ヴァーチャルな世界を日常と感じている世代は、現実をどのように捉えているのか
2019年度購入者は1985年から1993年生まれ。物心ついた時からデジタルカメラや携帯で写真を撮って来た世代で、フォトジェニックなモノを捉える感覚が自然に培われ、ヴィジュアルセンスが充満していると3人の選考委員も共通した印象を語りました。
ヴァーチャルな世界が日常に溢れるなか、上野公園で撮影した淵上裕太の〈UENO PARK〉シリーズなど、カメラを介して“キャラクター”ではない生身の人間と対話し、自身の存在を確かめ、世界と向き合った作品が多く見られます。一方で、YPにて4回作品を購入している高島空太は、複数のイメージを組み合わせてスケールの大きな“物語”を生み出し、デジタルでなければできない豊かな創造性とイメージの抽象性が高く評価されました。

淵上裕太《上野公園(いつもは、もっぱら歌舞伎町だ!!)》 2017

高島空太《untitled》2018

 

●自然への異なるアプローチ /  表現の可能性に挑む
井上拓海は、 バイオテクノロジーやヒトゲノム計画が進行する一方で、昆虫が世界で毎年2.5%ずつ減っており、しかも3分の1が絶滅の危機にあることに着目しました。「生物とは何か、生命とは何かを再定義するために何ができるのか」井上は、食物連鎖の底辺にあって、落ち葉や動物の死骸を分解する役割を持つことから、昆虫を生物のシンボル的存在と考え、シリーズ〈Life-e-motion〉を制作。ドライフルーツなどを組み合わせて撮影し、個々の種をみごとに“再生”させています。 本展では、全25枚を展示いたします。
一方、桑迫伽奈の〈arteria〉シリーズからの作品《after the rain》は、インクジェット・プリントに直接刺繍が施されています。刺繍を重ねることによって、作家は、記憶の中の自然の色合い、光や風の表現にたどり着くことができたと言います。本展では、プリントの表裏両面を展示し、繊細な手技をご覧いただきます。
彼らをはじめ多くの作家たちが、自由な発想によりアナログとデジタル両者の特徴を駆使して、作家の記憶や想像上の「目に見えないもの」をどのように写真で表現するか、その可能性に挑んでいます。

井上拓海《Life-e-motion「モモブトオオルリハムシ(Sagra buqueti)」》2018

桑迫伽奈〈arteria〉シリーズより《after the rain》2017

 

●日本へ留学中の作家の活躍
日本国内の美術大学、写真専門学校では、古くから台湾や韓国などから多くの留学生が写真を学んできました。近年では、中国やロシアなどにもその範囲が広がっています。YP2019では、中国出身で、日本国内の美術大学で写真を学ぶRyu Ika(リュウ・イカ)、魏子涵(ギ・シカン)、許力静(キョ・リキセイ)らの作品が購入されました。彼らの持つ独特の色彩感覚や、直観的な視線は、日本の若手にも大きな影響を与えることでしょう。

魏子涵(中国、1994)《異なる世界への入り口》2018

許力静(中国、1986)《Rat》 2010-15

Ryu Ika(中国、1994)《Big Brother is Watching you》2018

 
 

YP2019にて作品を収蔵した作家(ABC順)
Photographers whose work was acquired for the YP2019 (in alphabetical order)

1. ライオネル・ベナン・チャイ・テック・シオン(マレーシア、1992)
Lionel Benang CHAI Teck Siong (Malaysia, 1992)

Serenity, 2017  (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

2. 淵上裕太(日本、1987)
FUCHIKAMI Yuta (Japan, 1987)

上野公園(不忍池のほとり、スイカバー溶けてしまった) UENO PARK (My watermelon ice melted by the side of Shinobazu Pond) 2018      (全8点収蔵/Total of 8works acquired.)

 

3. 波多野祐貴(日本、1985)
HATANO Yuki (Japan, 1985)

Call, 2016-18   (全6点収蔵/Total of 6 works acquired.)

 

4. エリザベス・ハウスト(ロシア、1992)★
Elizabeth HAUST (Russia, 1992)

We are, 2018    (全6点収蔵/Total of 6 works acquired.)

 

5. シェリー・ホアン(台湾、1986)
Sherry HUANG (Taiwan, 1986)

Last Seen (Public Lavatory), 2019  (全2点収蔵/Total of 2 works acquired.)

 

6. イ・ユズ(韓国、1995)
Il Yuzu (Korea, 1995)

語る身 Kataru mi, 2019   (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

7. イイダユキ(日本、1991)
IIDAYUKI (Japan, 1991)

fig FLOWERS, 2016-18   (全7点収蔵/Total of 7 works acquired.)

 

8. 井上拓海(日本、1992)
INOUE Takumi (Japan, 1992)

イシガキフサヒゲカッコウ オス・メス Male and Female of Diplopherusa kitamurai Nakane, 2018  (全25点収蔵/Total of 25 works acquired.)

 

9. アリョーナ・カハノヴィチ(ポーランド/ベラルーシ、1985)★
Alena KAKHANOVICH (Poland/Belarus, 1985)

Plastic World, 2018   (全10点収蔵/Total of 10 works acquired.)

 

10. 桑迫伽奈(日本、1990)
KUWASAKO Kana (Japan, 1990)

シリーズarteriaより after the rain, 2017 (全2点収蔵/Total of 2 works acquired.)(インクジェット・プリントに刺繍)

 

11. ツナ・リー(韓国、1993)
Tuna LEE (Korea, 1993)

Quilting – A part of Memory: Pai Chai School East Building (1916), 2017 (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

12. 森本眞生(日本、1985)
MORIMOTO Maki (Japan, 1985)

わたしの森 My Forest, 2017-18  (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

13. 中間麻衣(日本、1987)
NAKAMA Mai (Japan, 1987)

港ONEWAY, 2017-18 (全7点収蔵/Total of 7 works acquired.)

 

14. Ryu Ika(中国、1994)★
Ryu Ika (China, 1994)

Untitled, 2018 (全6点収蔵/Total of 6 works acquired.)

 

15. 佐藤祐介(日本、1984)
SATO Yusuke (Japan, 1984)

祝福/SHUKUFUKU, 2018  (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

16. 高島空太(日本、1988)★
TAKASHIMA Kuta (Japan, 1988)

untitled, 2018 (全5点収蔵/Total of 5 works acquired.)

 

17. ワン・シンイ(台湾、1985)
WANG Hsin Yi (Taiwan, 1985)

Drag queens/kings in their rooms, 2017-18 (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

18. 魏子涵(中国、1994)
WEI Zihan (China, 1994)

情動の匂い The taste of emotion, 2018 (全4点収蔵/Total of 4 works acquired.)

 

19. 許力静(中国、1986)
XU Lijing (China, 1986)

Rat, 2010-15 (全5点収蔵/Total of 5 works acquired.)

 

20. 山下 裕(日本、1988)
YAMASHITA Yu (Japan, 1988)

代償の地 –七里村– The Land that Paid the Price – Qili Village, 2016-17 (全3点収蔵/Total of 3 works acquired.)

 

21. アガタ・ヴィオチョレック(ポーランド、1992)
Agata WIECZOREK (Poland, 1992)

アガタ・ヴィオチョレックAgata WIECZOREK (Poland, 1992)
Half-nude, 2018

 

22. ピョートル・ズビエルスキ(ポーランド、1987)★
Piotr ZBIERSKI (Poland, 1987)

ピョートル・ズビエルスキ Piotr ZBIERSKI (Poland, 1987)
Untitled from Echoes Shades series, 2017

 
★は過去のYPにおいても作品収蔵した作家を示します。
★indicates photographers whose work has been acquired in previous years.

 
 

【同時展示】過去のYPにて収蔵した作品+3人の選考委員の初期作品各5点

35歳まで何度でも継続して作品を収蔵するのが、YPの大きな特徴です。実際にYP2019にて収蔵した作家全18人のうち、5人が過去のYPでも作品を収蔵しています。彼らがどのようにシリーズを発展させ、視点を深めているのかをご覧いただくため、過去YPで収蔵した作品を同時に展示いたします。どうぞ最新作とあわせてご覧ください。また、3人の選考委員の初期作品、すなわち“選考委員のヤング・ポートフォリオ”作品全15点を同時に展示いたします。

左:選考風景。左から2019年度YP選考委員・川田喜久治氏、細江英公(館長)、都築響一氏

 
川田喜久治(日本、1933)本展出品作品《地図》1960-67年(5点)
1955年、新潮社に入社。1959年、フリーランスとなり、細江英公、東松照明らとともに写真家のセルフエージェンシー「VIVO」に参画(1961年解散)。1965年発表の写真集『地図』は、戦中戦後の日本人の記憶と未来を示唆する作品として、全頁が観音開きというデザインとともに大きな話題を呼び、世に衝撃を与えた。その後の作品ではカタストロフィな世界を展開。1990年代以降はいち早くデジタル技術を駆使し、新たなドキュメンタリー・ヴィジョンを構築している。代表作に『聖なる世界』『ラスト・コスモロジー』『世界劇場』などがある。

都築響一(日本、1956) 本展出品作品《TOKYO STYLE》1991年頃(5点)
「POPEYE」「BRUTUS」誌などで雑誌編集者として活躍後、1993年、東京の人々の生活空間捉えた『TOKYO STYLE』を発表。写真家としての活動を始める。日本各地に点在する秘宝館や奇妙な新興名所を撮影した『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛賞受賞。暴走族、デコトラ、パワフルな高齢者など無名の人々への取材を通して、現代の日本を描く。2012年からは、他のメディアとは全く異なる視点から、好奇心の赴くままに取材し、発信する個人雑誌有料メールマガジン『ROADSIDERS’ Weekly』を刊行中。

細江英公(日本、1933) 本展出品作品《おとこと女》1960年(5点)
舞踏家・土方巽を被写体とした「鎌鼬」や、三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」(1963)など、特異な被写体との関係性から紡ぎ出された物語性の高い作品により戦後写真の転換期における中心的な存在となる。東京工芸大学名誉教授。1995年より当館初代館長。2003年、「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章したほか、2010年、文化功労者。2017年、写真家として初めて生前に旭日重光章を受章した。

 
 

【特別展示】

本年は開館25周年を記念し、20世紀の写真に多大な影響を与えた偉大な写真家の青年期(YP=35歳まで)の作品を展示いたします。(下記はすべて当館蔵)

①7月1日(水)〜8月31日(月)ウィリアム・クライン 10点
②9月2日(水)〜10月5日(月) ロバート・フランク 10点
③10月7日(水)〜11月8日(日) アンドレ・ケルテス 10点

 

①ウイリアム・クライン(アメリカ、1928-)初期作品<東京>10点
1956年に発表した写真集『NEW YORK』は、写真表現の既成概念を覆すブレやボケ、荒れた画面で構成され、過激で挑戦的なその手法は、写真界に大きな衝撃を与えました。本展では、クラインが1961年に撮影した<東京>から、ヴィンテージ・プリント10点を特別に展示いたします。小型カメラを手に東京を自在に動き回り、雑然としながらも高度成長期に沸く街の生々しい表情を捉えています。

William Klein 1928年、米・ニューヨークに生まれる。1950年代初め、パリでフェルナン・レジェに油絵を学び、画家を目指していたが、この頃から写真も撮り始める。1954年、アメリカに一時帰国し、ニューヨークを撮影。1956年、写真集『NEW YORK』として発表した。写真表現の既成概念を覆すブレやボケ、荒れた画面で構成されたクラインの過激で 挑戦的な手法は、写真界に大きな衝撃を与え、森山大道や中藤毅彦など多くの日本人写真家にも強い影響を与えた。その後に発表された『ローマ』(1959年)、『モスクワ』(1964年)、『東京』(1964年)を含めた都市の一連の作品は、当時の写真の転換期を象徴すると同時に、現在も多くの写真家に影響を与えている。1965年以降は、映画作家としても活躍している。

 

②ロバート・フランク(スイス、アメリカ、1924-2019)初期作品10点
2019年夏、当館にて開催した個展「ロバート・フランク展 もう一度、写真の話をしないか。」が大きな話題となったロバート・フランク。同展では、当館の収蔵作品より多数のヴィンテージ・プリントと未発表作品を展示いたしました。折しも会期中の9月9日、94歳にて亡くなり、そのニュースは世界中を駆け巡りました。写真や映像を愛する若者のみならず、多くのクリエイターに影響を与えたフランク。最初期のヴィンテージ・プリントを10点展示いたします。

Robert Frank 1924年、スイス・チューリッヒ生まれ。1947年、23歳の時にアメリカ・ニューヨークに移住。雑誌「ハーパーズ・バザー」でファッション写真に従事する一方、南米やヨーロッパ各地への撮影旅行を重ねる。1953年にファッション誌の仕事を辞め、フリーランス写真家となる。1955年・56年に9ヶ月間アメリカ国内の30州を撮影しながら車で旅し、1958年にフランスで写真集『Les Americains』を、翌年アメリカ版『The Americans』を出版。移民者の目から見たアメリカの姿をありのままに写した一連の写真は反アメリカ的であると酷評されたが、フランクによって示された個人の視点に基づく主観的な写真表現は、リー・フリードランダー、ダイアン・アーバス、ゲイリー・ウィノグランドら後進の写真家に大きな影響を与えた。2019年9月、カナダのノバ・スコシア州にて逝去。享年94歳。

 

③アンドレ・ケルテス(ハンガリー、アメリカ、1894-1985)初期作品10点
優れた構図と計算された端正なイメージで知られるケルテス。パリのアーティストたちとの交流のなかで、シュルレアリスムや構成主義の影響を受け、日常の風景でありながら、異世界の佇まいを見せる作品が、多くの写真家に影響を与えました。代表作の多くが35歳までに制作されています。

André Kertész 1894年、ハンガリー・ブダペストに生まれる。幼い頃、グラビア雑誌を目にし、映像に魅せられるが、ブダペスト商業アカデミーを卒業する。写真は独学で学ぶ。第一次世界大戦中、小型カメラを持って従軍し、塹壕の生活を記録するが、戦後再び証券取引所の仕事に従事する。1925年、パリへ移住。多くの芸術家と親交を深めた。翌年より、ケルテスの写真がヨーロッパの主要な雑誌の紙面を飾りはじめ、フォトジャーナリズムの発展へ門戸が開かれた。1936年、ニューヨークに移住、市民権を得る。1963年以降、ニューヨーク近代美術館をはじめ、世界各地で展覧会が開催された。半世紀にわたるケルテスの作品からは、瞬間を凝縮させる鋭い感受性、斬新なデザイン、優しい眼差しが、世界中の人々を豊かな写真表現の世界に導いた。1984年、ネガや関係書類の一切をフランス文化省に寄贈することを決意し、翌年ニューヨークにて没す。

 
 

【関連印刷物&YPデータベース】

❶YP2019小冊子(A5サイズ、32ページ)★来館者には無料にて配布
各作家の作品数点、選考委員による対談や作品へのコメントを掲載。
❷YPデータベースには、過去20年余にわたる世界の若手写真家による収蔵作品画像のほか、作家略歴、アーティスト・ ステートメントを掲載しています。作家名、収蔵年、国籍などで検索することができます。 様々な調査・研究の対象としてもご利用いただければ幸いです。
https://kmopa-yp.com

 
 

【YP2019展示風景を動画配信】

本年4月の緊急事態宣言下、当館は、ホームページを通じて写真の世界に触れ、楽しんでいただけるよう、展覧会場の動画を作成いたしました。宣言が解除された現在も、多くの方々に“ヴァーチャル美術館”をご覧いただけるよう、引き続きホームページにて公開中です。
https://www.kmopa.com/?cat=23

 
 

【会期中のイベント】 

❶YP2019公開レセプション &  アーティスト・トーク *中止となりました*
5月23日(土) 14:00〜16:00 講評:川田喜久治、都築響一、細江英公(館長)
2019年度YPにより作品購入となった作家(YP作家)が出席します。 当日出席するYP作家には、館長・細江英公より作品永久保存証書が授与され、YP作家自身による1分間のトークと、3人の選考委員による講評、その後、交流を行います。若手写真家にとっては、第一線で活躍する選考委員から直接講評を受けられる貴重な機会となります。
公開ですので、ご予約いただければどなたでもご参加いただけます。YP作家にコンセプトや撮影について質問してみたい、という方もぜひどうぞ。海外作家には通訳も入ります。

参加料:入館料のみ / 定員なし / 要予約 / どなたでもご参加いただけます。

YP2018(昨年)の公開レセプションでの集合写真

自作についてスピーチするトミモとあきな(日本)

 

❷ポートフォリオ・レビュー *中止となりました*
3月21日(土)13:00〜16:00  レビュワー: 山本昌男(写真家)
2019年秋、当館にて国内の美術館で初となる個展「手中一滴」を開催した山本昌男。山本氏は、1990年代より欧米にて作品の発表を開始。15ものギャラリーで作品を販売し、アーティストを生業としている数少ない日本人写真家のひとりです。日本では、写真を買う習慣が未だ一般的とは言えない現状のなか、山本のキャリアに興味を持つ若い写真家が増えています。
そこで、K・MoPAでは、初めて写真家によるポートフォリオ・レビューを開催いたします。 作品の発表に向けて、作家としての視点を明確化していくためのアドバイスをはじめ、今後の活動に直結する貴重な示唆を頂けることでしょう。どうぞお気軽にご参加ください。見学のみも可能です。

山本昌男氏

 
対象:ヤング・ポートフォリオへの応募など作品の発表を目指している35歳以下の方
定員:5名 見学は15名まで 要予約
参加料:3,000円、高校生以下1,500円(入館料込み)
見学のみの方は入館料のみ 見学の方の年齢制限はありません。

・お申し込み開始日3月1日(日)午前10時から
・受付は先着順で、メールのみにて受付いたします。info@kmopa.com
・レビューを受ける方は、プリントをお持ちください。最大30枚までとさせていただきます。サイズは問いません。デジタルデータでは受けられませんのでご注意ください。
・作品に関するアーティスト・ステートメントをご用意ください。

●山本昌男
1957年愛知県に生まれ、2007年より山梨県北杜市在住。子どもの頃より、写真や絵画に取り組むが、20代半ばに写真を自身の表現活動に選ぶ。1993年<空の箱>がアメリカのギャラリーによって見出され、以後欧米を活動の拠点としている。 作品は、日本人ならではの精神性、美意識と高く評価され、ニューヨーク・タイムズ他、欧米のアート誌などのメディアへも多数掲載されている。 海外の出版社による写真集多数。2014年、作家活動の集大成となる写真集『小さきもの、沈黙の中で Small Things in Silence』を(青幻舎/Editorial RM共同出版)国内で初めて上梓した。海外のアート・コレクターに多くのファンを持っている。

 

❸フォトグラム・ワークショップ *中止となりました*
5月4日(月・祝)10:00〜15:00  講師: 西村陽一郎(写真家、YP購入作家)
フォトグラムとは、カメラを使わずに暗室内でイメージを作り出す技法です。この技法はカメラやネガを用いる写真よりも古く、1700年代より存在しており、フォトは「光」、グラムは「描かれたもの」を意味します。
実際の作り方ですが、暗室内で、印画紙の上に直接モノを置いて光を当てます。その印画紙を現像すると、上に置いたモノのシルエットが、白黒反転した状態で浮かび上がります。イメージを作りだすという点で言うと、自分がカメラの中に入るような感覚と言えるかもしれません。どんなイメージが浮かび上がるか、自由な発想で「光の画」を作ってみませんか。暗室での作業も体験することができます。

<フォトグラム作例>
ⒸYoichi Nishimura

 
定員:6名 小学校5年生以上 要予約
参加料:1,000円(入館料、材料費込み)

●西村陽一郎
1967年、東京都に生まれる。1997年度、2000年度、2001年度ヤング・ポートフォリオにて全11点の作品を購入している。美学校にて写真を学び、撮影助手を経て1990年にフリーランスとなる。フォトグラムやスキャングラムなどの技法で、植物や昆虫、羽、水、ヌードなどをモチーフとした作品を活発に発表している。写真集に『LIFE』や『青い花』などがある。

 
 

【YP2020作品募集】

2020年度ヤング・ポートフォリオ(第26回)
今できる限りのものを見せてほしい。
     今の挑戦が未来のあなたを強くする。

2020年度選考委員:都築響一、金村 修、細江英公(館長)
●Web登録受付期間 & 応募作品受付期間: 2020年4月15日〜5月31日
●応募要項の概要 ・応募資格は35歳までを上限とします。(1985年1月1日以降に生まれた方)
・既発表・未発表を問いません。他のコンテストへの応募作品・受賞作品も応募可能です。
・作品の表現、技法は問いませんが、永久コレクションのため、長期保存が可能な技法であること。
・選考された作品は、1点につき3万円以上で購入します。

●詳しい応募要項は:www.kmopa.com/yp_entry

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